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雄気堂々

 経済において近代日本の礎を築いた渋沢栄一の半生を描く城山三郎の小説。渋沢栄一は、埼玉の寒村に一農夫として生まれ、若き日は横浜焼き討ちなどを企てる尊皇攘夷の志士であった。やがて、幕末から明治維新という時代の動乱の中で多くの人々と出会い様々な経験を積み、経済人として最高の指導力を発揮するようになる。
 徳川慶喜、西郷隆盛、大久保利通、大隈重信など、国づくりに奔走する多くの人々との関わりが、実に興味深かった。そこには日本が新しく生まれ変わる混沌と初々しさがあり、わき上がる熱気が感じられる。
 渋沢の人間形成の過程と明治維新前後の近代日本の歴史を重ねることで、組織のあり方、組織を率いる人々のあり方を国づくりという大きな視野で示している。
 スケールの大きな、強力なリーダーシップを持つ人物が日本では一昔前に比べ、急激に減少していると言われている。どのような条件が本物のリーダーを育てるのかという視点からも示唆に富む、真に実のある作品。

雄気堂々〈上〉
雄気堂々〈下〉

森とオーケストラ

Mori_orch01  みどりの日、群馬の森で「第27回森とオーケストラ」が催された。群馬交響楽団による、野外無料コンサート。曇りではあったが、群馬の森の中心にある芝生広場に、多くの人々が集まった。

Mori_orch02  指揮は工藤俊幸氏。3部構成で、第1部は「世界音楽めぐり」として、タイケの「旧友」や、シュトラウス二世の「芸術家のカドリーユ」、グリーグの「朝」、アンダーソンの「フィドルファドル」、ヴェルディの「アイーダ」より凱旋行進曲、ビゼーの「アルルの女」よりファランドールなど、お馴染みの曲が演奏された。

Mori_orch03  第2部「あなたもメイ指揮者」は、会場から選ばれた人々がオーケストラを指揮するもので、人気のコーナー。今年は、4名のお子さんと1名の学生さん、1名のお母さんが選ばれ、ベートーヴェンの運命やカルメン、ハンガリー舞曲のいずれかを指揮した。藤尾久美子さんの軽妙な司会や指揮者工藤氏のコメントも効を奏し、楽しくもなかなか味があった。

Mori_orch04  第3部は、「手のひらに太陽を」「赤とんぼ」などを、みんなで歌うコーナー。大人も子供も和して、音楽を素直に楽しんでいた。カラオケではなく、フルオケで歌うのもよいものだ。
 会場には、大型スピーカーが設置され、4haの芝生広場いっぱいにオーケストラの音が鳴り響いた。お昼を食べながら演奏を聴くこともでき、肩肘はらずにクラシックなどの音楽に親しむことができ、有意義な催しだと思う。

Mori_orch05  群馬の森は、総面積26.2haに及ぶ広大な緑地公園で、遊具などもあり、子どもを遊ばせるには良い施設だ。
 群馬県近代美術館、歴史博物館が併設されており、様々な催しが行われている。この日は、風車を作る体験があり、子どもたちも自分の作った風車をもって広場を駆け回っていた。

Mori_orch06  天気は曇りがちであったが、最後までくずれることはなく、過ごしやすい日であった。新緑に映える花々も目にやさしく、みどりの日にふさわしい1日となった。

白馬幻想

 「緑響く」-鮮やかな緑の森に囲まれた湖のほとりを、一頭の白馬が歩む絵。この絵と初めて出会った感銘は、今でも色あせることはない。
 東山魁夷が64歳、1972年に描いた18枚の連作「白い馬の見える風景」。清澄な風景と白馬が詩情を奏で、深く心にしみ入る作品。

白馬幻想―心の風景より
東山 魁夷
4938249707

コンコルド広場の椅子

 美術館で初めて涙を流したのは、東山魁夷館で「コンコルド広場の椅子」の一連の絵を目にした時であった。なんて詩情あふれる絵なんだろうと。

コンコルド広場の椅子
東山 魁夷
4763006029

東山魁夷館

 長野市の善光寺から少し歩いたところに、長野県信濃美術館、東山魁夷館がある。
 東山魁夷 - その祈りにも似た風景画を直接目にしたとき、込み上げてくる感動があった。「静唱」をしばらく見入っていた覚えがある。気持ちが透明になってくるようであり、その絵の前にずっと佇んでいたいと思える絵であった。

長野県信濃美術館・東山魁夷館

100万回生きたねこ

 何度読んでも泣いてしまう絵本。

100万回生きたねこ
佐野 洋子
4061272748

嘉門達夫 Oh! My God

 「替え唄メドレー」「鼻から牛乳」など、数々のパロディやギャグでヒットをとばした嘉門達夫が、レコード会社移籍第1弾として世に出したCD。創作活動の煮詰まりの中で、1年4ヶ月ぶりに出したオリジナルということで、苦労がうかがえる。
 “Oh! My God”のオチでシメる「吹雪」を軸に、てんこもりのギャグが展開される。「国会議員体操」「諸行無常」のような、完成度の高いものもあり、なかなかに聴かせてくれる。

Oh!My God
嘉門達夫 林有三 中村雅都
B00005GQGU

ソニー・スティット ペン・オブ・クインシー

 ソニー・スティットの伸び伸びとしたアルトとクインシー・ジョーンズの絶妙のアレンジが生き、ジャズの魅力をたっぷりと味わえる名盤。

ペン・オブ・クインシー
ソニー・スティット ハンク・ジョーンズ ジョー・ニューマン
B00005RGWL

ブラームス ピアノ五重奏曲

 エリザベート・レオンスカヤのピアノとアルバン・ベルク四重奏団によるブラームスのピアノ五重奏曲を聴く。1987年にウィーンで行われた演奏のライヴ録音。微妙な移ろいを精妙に表現し、感興に富む演奏。
 アンコールで奏されたドヴォルザークのピアノ五重奏曲第2楽章も素晴らしい。次々とわき上がる美しいメロディーに魅せられた。

ブラームス:ピアノ五重奏曲
アルバン・ベルク四重奏団 レオンスカヤ(エリザベート)
B00005I02V

ウルトラQ マンモスフラワー

 「今、我々をとりまく自然界の一部が、不思議な身動きを始めようとしています。そうです、ここはすべてのバランスが崩れた、恐るべき世界なのです。これから30分、あなたの目はあなたの体を離れて、この不思議な時間の中に入っていくのです。」

 皇居のお堀の壁を突き破りのたうちまわる根。それは地下鉄構内の人々をも襲い始める。東京丸の内に突然花を咲かせるマンモスフラワー。日常に出現したアンバランス・ゾーンを見事に表現した本作は、「ウルトラQ」の第1回製作作品である。
 ウルトラマンのようなヒーローは登場しない。それゆえに、知恵を用いて脅威に立ち向かう人々に尊厳を感じるほど、濃密な人間ドラマが展開されている。

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