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西郷隆盛

 明治維新を成し遂げた西郷隆盛の生涯を息子の音読でたどる。NHKの大河ドラマで「篤姫」が放送されるので、今回はそれにちなんで鹿児島が生んだ偉人を選んだ。毎日一章ずつ読み、一ヶ月かからずに読み通せた。

 島津斉彬に見いだされ、藤田東湖、橋本左内など優れた人物と出会い、多くの人と交わり人望を高めていく。斉彬公亡き後、僧月照と入水自殺をはかる。島津久光にうとんぜられ、島流しとなり苦境の日々を送るが、その人望ゆえに京で薩摩藩の中心となり活躍する。戊辰戦争では、勝海舟との会談に応じて江戸を戦火から救う。維新後、請われて明治政府に入るが、征韓論で大久保利通と袂を分かち、鹿児島の野に下る。士族の反発を抑えきれず、やがて西南戦争に担ぎ出される。誠に私心を棄てて事に当たり、義を貫く生涯であった。

 幕末の動乱と維新直後の混乱を描くには、さすがにページ数が足りない。平易に記す努力はされているが、子どもには読んでいて意味の分からない語句が多かったようだ。それでも、「西郷さんの心根の強さがすごいと思いました。」と感想を書いていたので、人物の偉大さは伝わったようだ。
 勝海舟も「氷川清話」の中で、「至誠の人」として、西郷の人物の大きさを讃えている。
 「敬天愛人」、西郷隆盛の生き様は、生涯にわたり刺激を与え続ける。

西郷隆盛―明治維新の功労者 (講談社火の鳥伝記文庫 (26))
福田 清人
4061475266

高校数学で解く社会問題

 正社員とフリーターの収入格差は生涯を通すとどのくらいになるか。松枯れをどのようにして防ぐのか。地震のエネルギーはどのように計算されるのか。本書は、このような社会問題に関わる場面で、高校数学がどのように使われているかを記した書である。

「高校学校においては、目標について、高等学校における数学学習の意義や有用性を一層重視し改善する。」
 平成20年1月17日に示された中央教育審議会答申「学習指導要領等の改善について」において、高等学校数学の項では、このように記述されている。
 しかし、現在の高校数学の教科書では、なぜか社会で数学が応用される例はほとんどあげら れていない。 三角関数、微分積分、ベクトルと行列などは、社会科学でもごくあたりまえに使われている。その一端を示すだけで、数学への興味を持つ生徒の割合は増えると思う。しかし、現状では、教科書に応用面を書くと、まるで純血が汚されると恐れているかのように、極力記述を避けているように感じてしまう。

 「高校数学で解く社会問題」では、様々な立場の専門家が、高校数学の使われ方を記し「有用性」を示している 。ただ、もう少し数式を載せてもよいのではと感じた。専門的な話は興味深いのだが、数学が適用される数式の例はもっとあったほうが、本書の趣旨にあうのではないか。
 その点、第一章の「学歴社会の収入格差を考える 」では式を用いて的確な説明がなされていた。生涯賃金を計算するにあたり、具体的なデータから3次関数に補完し、積分で求め る説明はたいへん分かりやすい。しかも、EXCELを用いて実際に計算する方法が示 されている点がよい。このように、社会問題を自らの手で計算する様々な場面を設けることで、数学を理解する層が厚みを増すであろう。

 別の面から捉えると、社会問題で使われている数学を整理することで、高校数学に求められている内容がより明確になるのではないか。例えば、最小二乗法などは、どの分野でも用いられる手法であり、高校数学のひとつの到達点として位置づけることもできる。

 「数学が社会に生きている。」
生徒がそう実感できる高校数学になってほしいと切に願っている。

こんなに役立つ数学入門―高校数学で解く社会問題 (ちくま新書 653)
広田 照幸 川西 琢也
4480063587

ビゼー:「アルルの女」&「カルメン」

 美しい旋律に溢れたビゼーの名曲「アルルの女」組曲と「カルメン」組曲。一曲一曲は短いが、それだけに密度がたいへん濃い。
 クリュイタンス指揮、パリ音楽院管弦楽団の演奏録音は、格調高く優美さをたたえた珠玉の名盤。

ビゼー:「アルルの女」&「カルメン」
パリ音楽院管弦楽団 クリュイタンス(アンドレ) ビゼー クリュイタンス(アンドレ)
B000XAMEBK

紫のけむり~現代の弦楽四重奏曲/クロノス・クァルテット

 クロノス・カルテットによる、玄妙な現代音楽の世界。スカルソープ、サリネン、フィリップ・グラス、ナンカローなどの作品が繊細な響きで演奏される。
 最後のジミ・ヘンドリックス「紫のけむり」は、強烈に印象に残る。

紫のけむり~現代の弦楽四重奏曲/クロノス・クァルテット
クロノス・カルテット スカルソープ サリネン
B00005HIEM

池上彰 「伝える力」

 「週刊こどもニュース」のお父さん役だった池上彰が、「話す」「書く」「聞く」など、様々な場面での「伝え方」を綴った本。 伝え方の本としては、池上氏の前著『相手に「伝わる」話し方』も自身の体験に根ざしており良かったが、今回の書は、さらに方法や心得が全面に出ている。
 NHKのニュース・キャスターや、「こどもニュース」での体験なども盛り込まれ、さらりと読めるが内容はしっかり。ジャーナリズムの一線で活躍した著者により、洗練された「分かりやすさ」が示されている。

 「週刊こどもニュース」を制作するにあたって、「日銀のしくみ」や「インフレ」を説明するために教科書を見たが、ほとんど役に立たなかったという。「教科書や参考書は非常にわかりにくい」という指摘は考えさせられる。本書から、「分かりやすさ」を求めることの大切さを改めて実感できた。

 「根本的なことを、きちんとわかりやすく説明する。それがいかに難しいことか。多くの専門家が、その課題から逃げていたのです。」

伝える力 (PHPビジネス新書 28)
池上 彰
4569690815

篤姫 8

 NHK大河ドラマ「篤姫」第8回は、「お姫様教育」。島津斉彬の養女として登城した於一を待ち受ける大奥の面々、幕府を脅かすペリーの来航、ふさぎ込む於一を鼓舞することになる菊本の手紙、そして、篤姫の生涯に影響を与える幾島との対面など、密度が濃くたいへん見応えのある回であった。
 演出にも力が入り、スタッフの意気込みを感じる。

NHK大河ドラマ「篤姫」

夢みる人~世界の愛唱歌 ロバート・ショウ合唱団

 アメリカの古き良き時代を偲ばせる、ロバート・ショウ合唱団のCDを聴く。
 極貧の中、37歳の若さで世を去ったフォスターが最後に書き残した「夢見る人」の暖かい歌声に、胸が熱くなった。

夢みる人~世界の愛唱歌
ロバート・ショウ合唱団 フォスター
B000V2RWT4

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第2番

 ヤブロンスキーのピアノ、シャルル・デュトワ指揮、フィルハーモニア管弦楽団による、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番のCDを聴く。
 チャイコフスキーのピアノ協奏曲では第1番があまりにも有名なので、その影にかすんであまり顧みられることのない第2番だが、華やかさと伸びやかさを持った良い曲だ。
 第3番は、第1楽章で未完となっているが、モダンな明るさを放つ作品。

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第2番&第3番
ヤブロンスキー(ペーテル) フィルハーモニア管弦楽団 デュトワ(シャルル)
B000CSUWC6

孟嘗君 2

 宮城谷昌光の「孟嘗君」第2巻では、快男子、風洪が自らにふさわしい学問を求めて中国の大地を巡る。行く先々で出会う多くの人物が幾筋もの運命を紡ぎ始める。

孟嘗君(2) (講談社文庫)
宮城谷 昌光

クナッパーツブッシュ ブルックナー交響曲第8番

 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団によるブルックナー交響曲第8番を聴く。滔々と奏でられる第3楽章、美しさと雄渾さをたたえた第4楽章、どちらもゆったりと息長く、果て無き世界を思わせる。
ブルックナー:交響曲第8番
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 クナッパーツブッシュ(ハンス)
B00005GT8L

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