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機動警察パトレイバー2 the Movie

 近未来の首都圏を舞台に、増加するロボット犯罪に対処するために警察に設けられた特車部隊の活動を描くアニメ、パトレーバー。劇場版の2作目に至って、ロボットアニメとしての要素はわずかになり、公務員や東京の街そのものに描写の力点がおかれている。
 その表現の深みというのは、「エヴァンゲリオン」を凌ぐのではないか。日本を舞台にしたロボットアニメという点では同じだが、庵野監督と押井監督の描き方はまるで違っている。庵野監督が明るい色調をベースに、ネルフという組織の活動を基に描くエヴァンゲリオンは、その絵の色調とは裏腹に個のどろどろとした内面部分をロボットの形で表出しようとしている。そこで描かれているのはあくまで「個」なのである。それに対し、今回のパトレーバーでは、暗い色調をベースにしている。とにかく夜のシーンや地下のシーンが多い。しかし、描かれているのは、組織に拘束されながらも、信念で動く後藤であり、そのもとに集うかつての仲間である。そこには色調と逆の楽観的な姿を感じる。また、人々の集う首都そのものが、主役になっている。いわば、「組織」「街」といった、集団のエネルギーが描かれており、エヴァンゲリオンと対照をなしている。
 この映画の街の描写にかけるエネルギーはすざまじい。ベイブリッジ周辺の風景、自衛隊の戒厳令下におかれた新宿の街並みはリアルを極める。また、首都を縫う水路からの景色、新橋地下鉄での廃坑、空からの俯瞰など、様々な視点で首都を描いている。
 わけても圧巻なのは、自衛隊調査官の荒川が後藤隊長に東京湾の船上で戦争について語る時の、湾岸の情景だ。曇天のもとでの、煤けた工場群、うらぶれたトタンのシルエット、鳥のとまる海上の指標灯などの映像が延々と流れる。独特の造形と陰影に引き込まれる。
 街の存在感の前には、登場人物が逆に背景になるような映画であった。

機動警察パトレイバー2 the Movie [Blu-ray]
高田明美
B0018KKQB4

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