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赤塚不二夫生誕80周年CD! これでいいのだーっ!!

 「おそ松くん」「ひみつのアッコちゃん」「もーれつア太郎」「天才バカボン」
 赤塚不二夫原作の漫画は何度もテレビアニメシリーズになっている。それぞれ時代のテイストを加えながら、キャラクターも微妙に変化している。しかし、赤塚漫画の本質である、価値観やルールにしばられない主人公たちの自由な生き方はどれも根底にもっている。そのギャグの普遍性ゆえに、時代を超えて赤塚作品が映像化されているのであろう。
 テレビアニメの音楽も、実に明るく楽しい。1966年の「おそ松くん」のオープニングからして、新鮮な躍動感がある。作詞は赤塚不二夫、作曲は渡辺浦人。群馬県立中央高等学校、現在の中央中等教育学校の校歌の作曲者でもある。
 そのご長男、渡辺岳夫はドラマやアニメの音楽に多大な足跡を残しており、「天才バカボン」の音楽も手がけている。天才バカボンのテーマ曲、それに続く「元祖天才バカボン」の「タリラリランのコニャニャチワ」「パパはやっぱりすばらしい」「元祖天才バカボンの春」などは氏の作曲である。
 1969年に放送開始されたアニメ「ひみつのアッコちゃん」のオープニングテーマは、小林亜星が作曲している。名曲ゆえに、1988年の第2作、1998年の第3作でもオープニングに用いられている。
 2015年に発売された赤塚不二夫生誕80周年CDでは、赤塚アニメを彩る音楽が一堂に集められ、あらためて作品の魅力を感じさせてくれる。自由闊達な赤塚ギャグを彷彿させる音楽は全肯定、「これでいいのだ」

赤塚不二夫生誕80周年CD! これでいいのだーっ!!

七つの会議

 池井戸潤の小説「七つの会議」を原作とする映画。監督は、「半沢直樹」「ルーズヴェルト・ゲーム」「下町ロケット」など池井戸潤の作品のドラマに関わった福澤克雄。
 原作は構成感が見事な小説であったが、映画では換骨奪胎し、野村萬斎演じる万年係長の八角を主役とした半沢直樹風の群像劇に仕上げている。
 豪華俳優陣が火花を散らす、熱い企業エンターテイメント。

七つの会議

千と千尋の神隠し

 「千と千尋の神隠し」を見て、あらためてジブリ最盛期の作品と感じる。
 キャラクター造形の見事さ、計算し尽くされた色合い、シンプルでワクワク感のあるストーリー、徹底した取材と思索に裏打ちされた世界観など、どれも職人芸的な緻密さと大胆さで魅了させられる。
 なにより、日本の原風景を次々と提示する背景が素晴らしい。何度見てもいいと思うのは、美術的に優れているからに他ならない。
 このような深みのある真の大作を生み出す後継者が現れることを切に願う。

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ホーホケキョ となりの山田くん

 「ホーホケキョ となりの山田くん」は、高畑勲監督による1999年公開のスタジオジブリ長編映画。いしいひさいちの4コマ漫画が原作。
 ジブリはこの作品でセル画を用いないデジタル制作に切り替える。しかし、あわあわとした水彩画のようなこの作品の場合、何層も絵を重ねる行程が必要で、手間がかかり、進行は当初たいへんに遅れたようだ。
 およそデジタルに向いていなそうなこの作品からデジタルに移行するという感覚がすごい。また、音楽もシーンごとに変え、凝りに凝っている。
 歳時記風に、芭蕉や蕪村などの句を盛り込む文芸趣味も、高畑勲監督らしい。制作費が20億円と、「ルパン三世カリオストロの城」の4倍。ある意味ものすごい贅沢な作品。

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もののけ姫

 宮崎駿監督が最後のアニメ作品と制作当時宣言した『もののけ姫』。1997年の劇場公開時に見たのだが、そのときは正直なところ、ラストで素直な感動はわいてこなかった。いままで宮崎アニメを見てきて、これは意外な感じだった。実際他の作品から受けた印象とだいぶ違ったのである。

 『ルパン三世カリオストロの城』を見た後は、強烈な面白さと抒情が見事にかみ合って、本当にいい映画を見たとしみじみ思い余韻がずっと後を引いた。その後この映画は20回以上見ているが、いまだに新しい発見がある。
 『風の谷のナウシカ』では、心ならずもラストで泣いてしまった。「この村も腐海に沈んだか」という最初のシーンからうなった。あそこまで世界を作られると、もうそこに身をゆだねるだけでよかった。
 『天空の城ラピュタ』では、全編に飛翔感が満ちていて、心躍らせる体験ができた。雲がはれてラピュタ本体が明らかになっていくシークエンスは圧巻の出来。
 『となりのトトロ』は、そうそう、こういう映画を待っていたんだよと快哉を叫びたくなる作品だった。日本を舞台にこれほどファンタジックな世界が展開された例があるだろうか。さつきとメイがトトロの胸にぶら下がって飛ぶシーンは、何度見ても泣いてしまう。
 『魔女の宅急便』は、人物の設定に感動した。キキが届け物をした屋敷で出会うおばあさんの顔がアップになった瞬間にその人の人生が感じられて、これほどのキャラクターをつくるとは、真のアニメだとその時思った。
 『紅の豚』では、大人の雰囲気をたたえていて、しかも宮崎さんが暖かく作った思いが伝わってくる。  これら宮崎作品に共通して感じたのは、ラストの後味の良さであり、その暖かい余韻が長く残るところである。

 ところが、『もののけ姫』では、その暖かさがストレートに残らなかったのだ。何か釈然としないものが残ってしょうがなかった。
 ひとつには、その絵のボリュームに圧倒されすぎたためだろうか。美術は言うまでもなくあまりに素晴らしい。今回5人の美術監督を起用して練りに練った背景を見せてくれた。アシタカが村を出て町に着くまでのシーンにしても、自分が山裾や平原を歩いていると錯覚するほど画面に引き込まれた。
 だが、それら美術がすごすぎるために、感動する心のスキマを失ってしまったような気がする。例えば、「日展」などの絵の展覧会で所狭しと並んでいる部屋の絵を見渡す。確かによく書けている絵は多いが、ひとつひとつの絵から執念というか怨念というか強烈な気が放射され、それらを一身に受けると感動より苦しみが湧いてくる。そして次の部屋に行くとまた様々な絵が咆吼し苦悶し解放し苦しみ悲しみおそれおののき……ああ、気が狂いそうになる。更に次の部屋では!!……会場を出た後はくたくたになっている。
 『もののけ姫』は、トーンも統一されており、色彩設計も様々な配慮がなされていてる。しかし上に書いた程ひどくないにしても、作り手の執念は相当のものであり、正直疲れて感動するゆとりを失う過程は似ているかもしれない。東京に見に行くため朝早くから夜行列車に揺られた寝不足がたたったのかもしれないが。いずれにしても、体調のいいときに見るべき映画だ。

 もうひとつには、作り手にゆとりがなかったのではと感じるのだ。いつもより伸びやかなシーンは少ない。メッセージ性が強すぎる割に、ラストは予定調和的だったりと、ストーリーラインの練度はいまひとつの感があった。
 メッセージ性という点で言えば、やはり様々な要素がつめこまれていて、受け手が吸収するゆとりがあまりないこともあるかもしれない。最後の作品という焦りがあったのだろうか。

 黒澤明監督の『夢』という作品があった。「こんな夢を見た-」で始まる八話のオムニバス映画であったが、その中の、原発で放射線がもれるとひとびとが騒ぐ話と、放射能で植物が巨大化し、鬼と化したいかりや長介が寺尾聡に繰り言をいう話があった。それらメッセージ性が強いエピソードより、最後の水車のもとで笠智衆が淡々と自然に語る話の方がよっぽど印象的で説得力もあったような気がする。メッセージを出したい気持ちと、受け手が得る印象のバランスはむずかしいところだと思った。

 しかし、『もののけ姫』では、様々な問題をぽーんと観客に放り投げて、後は考えておくれと突き放しているのかもしれない。宮崎監督があえてそうしたのであれば、従来の作品よりひっかかりを残すという点で成功したともいえる。
 いずれにしても、これから何度も見ることになる映画であることには違いない。背景の素晴らしさ、集団のダイナミズム、人物造形の的確さという点では、彫り込まれた職人芸であり、名匠宮崎の技は一度見ただけでは味わいきれない。もっとも、この作品では「技」より「業」を多く見せられてしまうだろうが。(1997年9月4日に記す)

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耳をすませば

 中学3年生の迷いや焦りを、みずみずしく描いたスタジオ・ジブリの作品。脚本とプロデュースを宮崎駿、監督を近藤喜文が担当。
 多摩地区の町並みなど、実に緻密に描かれている。細部の描写も見事で、特に地球屋の内部はそれだけで一つの世界になっている。ヴァイオリンの工房で、主人公たちが「カントリーロード」を合奏するシーンは、感動すら覚える極上の職人芸的アニメーション。

 「やってみて分かったんです。好きなだけじゃダメだって、 だから勉強しないといけない。だから進学する事に決めました。」
 これほど真面目な台詞がストレートに胸に響くことが、この映画の真価を表わしている。

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本名陽子 高橋一生 露口茂 立花隆

平成狸合戦ぽんぽこ

 高畑勲監督の1994年公開映画「平成狸合戦ぽんぽこ」。多摩ニュータウン建設の環境破壊に対抗するため、狸が化けることを利用して抵抗運動を始める。
 落語家を始め豪華声優陣をそろえ祝祭的な趣がある。高畑監督らしいこだわりをもち、アニメーションのワザを駆使した映画。

平成狸合戦ぽんぽこ [DVD]

紅の豚

 「宮崎駿の雑想ノート」の中の「飛行艇時代」を原作とする、スタジオジブリのアニメ「紅の豚」。全編にわたり飛行機が登場し、飛翔感あふれる映画。宮崎駿のこだわりが随所にみられ、自らのロマンを体現した作品になっている。
 大人の雰囲気と理想の生き様を詰め込んだ、ファンタジックな冒険アニメ。

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おもひでぽろぽろ

 高畑勲監督のアニメーション映画「おもひでぽろぽろ」。27歳の女性が山形で体験する出来事と、小学校5年生時代の思い出が交互に描かれる。背景描写などに徹底したリアリズムが貫かれる。特に、雨上がりの空気感などは見事に伝わってくる。
 女性の思いを繊細な描画のうちに表現した温かみのある映画。

おもひでぽろぽろ [DVD]

魔女の宅急便

 角野栄子の児童文学を原作とするスタジオジブリ制作のアニメーション映画「魔女の宅急便」。1989年、平成元年の宮崎駿監督作品。  独り立ちのために故郷から都会へほうきに乗ってやってきた少女の物語。思春期の心のゆれを、魔女による宅配という仕事のうちに描いている。
 街の描写の素晴らしさが格別。繰り返し鑑賞に堪えるのは、この美術的なよさに寄るところが大きい。
 特に感銘をうけたのは、人物の描写。キキが届け物をした屋敷で出会うおばあさんの顔がアップになった瞬間にその人の人生が感じられて、これほどのキャラクターをつくるとは、真のアニメだとその時思った。
 家族で楽しめるジブリアニメの良作。  

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