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わが子に教える作文教室

 「蕎麦ときしめん」など、ユーモア溢れる小説を手がける清水義範が、子どもたちの作文を豊かなものにするためのヒントを記した作品。自ら行った小学生への作文教室での作品を示しながら、親がどのように声かけをしたら子どもたちが楽しく書くようになるか、表現が豊かになるのかを語っている。
 素直に気持ちの動きが感じられる作文は、読んでいて気持ちがいい。そんな自然な作文や、読む人へのちょっとした配慮など、書き手のその後に繋がるような文章にする工夫が暖かく述べられ、読後感も良い。
 また、運動会での心の動きがほとんど書けない子が、「タイタニック」など船の事故についての作文をし、調査報告などに優れた力を見いだした点にはたいへん興味をひかれた。文学的な作文のみでなく、論述的な作文に才能を発揮する子もいるなど、作文においても個性を見いだすことが教育の役割であることを感じさせられる。
 すらすらと楽しく読める本であるが、中身はしっかりとしている。子どもを寛やかに見てゆっくりと伸ばしていく姿勢には教えられるところがある。

わが子に教える作文教室 (講談社現代新書)

国語入試問題必勝法

 タイトルからは、受験参考書のようであるが、実はパロディ小説。
 丸谷才一の文章を模した「猿蟹合戦とは何か」、不思議な食堂の出来事を綴る「時代小説の特別料理」など、8編を収めた清水義範の短編集。
 なんと言っても、表題作「国語入試問題必勝法」は、国語受験の秘技をあかす抱腹絶倒の小説。あまりに面白くしかもそれらしく、真に受けてしまいそうなので受験生は読まないほうがいいかもしれない。
 解説をなんと丸谷才一が書いているが、こちらの文章も率直で、楽しめる。日本語の愉悦がつまった小説集。

国語入試問題必勝法 新装版 (講談社文庫)
清水 義範

蕎麦ときしめん

 日本人論のパロディで、名古屋人を語る「蕎麦ときしめん」、司馬遼太郎の文を彷彿とさせる「商道をゆく」「猿蟹の賦」、学術書「英語語源日本語説」の序文だけで構成された「序文」など、言葉の楽しさに満ちあふれた清水義範の作品集。あまりに面白すぎるので、人が大勢いる場所で読むのは避けた方がいいかも。

蕎麦ときしめん (講談社文庫)
清水 義範

柳家小三治 人形町末広の思い出

 柳家小三治の「あの人とっても困るのよ」の続きとなる「人形町末広の思い出」。全編マクラの、二枚組CD。
 自らが被った災難や、かつてあった人形町末広にまつわる人々の思い出を語る。
 飄々とした語り口で、世の憂さを軽妙にあしらう懐の深さに心地よさを感じる。
 いつまでも聴いていられるおかしみを持った口演。

柳家小三治6「朝日名人会」ライヴシリーズ136ま・く・ら「人形町末広の思い出」

柳家小三治 玉子かけ御飯

 柳家小三治の「マクラ」は、それひとつで新作落語のようである。「玉子かけ御飯」と「駐車場物語」の2編が収められている。玉子かけ御飯だけで、よく20分以上話せると感嘆する。「駐車場物語」は、人に対する温かい眼差しが感じられ、味わいがある。

柳家小三治トークショー 3 ~玉子かけ御飯
柳家小三治

春風亭昇太2 26周年記念落語会-オレまつり

 春風亭昇太が自らの代表作をトークでつなぐ、一人芝居的なCD。
 立川志の輔のライナーノーツ「オレオレ・スタイル」が昇太落語の本質をずばりと突いている。「あんなにカミカミなのに、あぁーーもう!」
 26周年だが、早口で聞き取りづらいところもある噺を、奇をてらわずに演じ続ける。その少年のようなピュアな語りが昇太落語の魅力なのかもしれない。

春風亭昇太2 26周年記念落語会-オレまつり

シネマティック・ピアノ・アドヴェンチャー

 ジェイコブ・コーラーによるピアノ・アルバム。「ラ・ラ・ランド」「ムーン・リヴァー」「花」など、自由闊達なアレンジで楽しませてくれる。
 「富士五湖」のようなオリジナルも日本への愛情を感じる良い曲。
 「ルパン三世のテーマ」「リベルタンゴ」など技巧を駆使したスリリングな演奏も素晴らしい。
 ピアノの魅力を存分に伝えるヴァラエティに富んだアルバム。 

シネマティック・ピアノ・アドヴェンチャー

リフレクション ジェイコブ・コーラー

 「枯葉」「スペイン」「マイ・フェイバリット・シングス 」「A列車で行こう」などのスタンダードを中心に、華麗なジャズ・アレンジが繰り広げられるジェイコブ・コーラーのピアノ作品集。
 「岩手」「福島」「猊鼻渓ワルツ」など、東北の地を表現したオリジナル曲も味わいがある。
 技巧と叙情が融和したピアノ・アルバム。

REFLECTION

cobacabada

 アコーディオン奏者、coba による初のカヴァーアルバム「cobacabada」。
 「Bittersweet Samba」に始まり、「亡き王女のためのパヴァーヌ」「ダッタン人の踊り」「Copacabana」などが大胆なアレンジでエネルギッシュに展開される。
 ソロで弾かれる「太陽がいっぱい」は何物にも代えがたい情感がある。
 アコーディオンの表現力を駆使し突き進む爽快さを感じるアルバム。

cobacabada

coba pure accordion

 アコーディオン奏者 coba による、ソロ・アルバム。火を噴くような「リベルタンゴ」に始まり、オリジナル曲も含めてアコーディオンの見事な演奏に圧倒される。
 アコーディオンへの愛とプレーヤーとしての矜持をこめた一途なアルバム。

coba pure accordion

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