「科学者の楽園」をつくった男

 世界でも最高水準の研究を行っている日本が誇る研究機関「理化学研究所」。その波乱の歴史を、多くの科学者たちの足跡や歴史的背景を含めて描く本。
 ロンドンでの、夏目漱石とグルタミン酸ナトリウムの発見で知られる池田菊苗との出会いから始まり、第三代所長、大河内正敏のもとで科学研究が多彩に花開く過程が圧巻の筆致で語られる。
 長岡半太郎、本多光太郎、仁科芳雄、寺田寅彦、湯川秀樹、朝永振一郎など、多くの科学者たちの生涯にもふれられており、日本の近代科学史を俯瞰する書としてもたいへん興味深い。
 科学と社会との接点、科学と文学との関わりをも示唆した、知的興奮をよびさます重層的な著作。 

自助論

 「天は自ら助くる者を助く」

 サミュエル・スマイルズの世界的ロングセラー「自助論」。努力・勤勉・忍耐・独立・誠実の重要性を、膨大な例で語る著作。1858年、イギリスが世界最強の国であった時に書かれた本であり、文章に勢いを感じる。
 日本では明治4年に中村正直の訳により「西国立志編」として出版され、100万部の超ベストセラーとなった。その独立と向上をうたった文章は明治の青年たちを奮い立たせ、近代化を推進する精神的な支柱のひとつとなった。
 自助論は、150年の時を経てなお多くの人に読まれている。この本を「古い」とか、「あたりまえ」と一蹴するのは簡単である。しかし、本気で向き合って初めて見えるものが世の中にはたくさんある。

アヴリルと奇妙な世界

 フランスの長編アニメーション「アヴリルと奇妙な世界」。
 科学者たちが次々と謎の失踪を遂げ、技術は1870年から停滞し、長らく蒸気機関のままの世界となっていた。連れ去られた科学者を父母に持つ孤児、アヴリルは科学の研究を続けるが、彼女自身も謎の組織に狙われることになる。
 フランスアニメ特有の繊細な色彩・造形を背景とし、物語はアイロニーをたたえつつジブリアニメばりの冒険活劇が展開される稀有の映画。  

アヴリルと奇妙な世界(字幕版)

トロン

 ディズニー最初のCG映画は1982年公開の「トロン(TRON)」である。公開当時、大学生であったが、CGに興味を持っていたので映画館へ見に行った記憶がある。ネットワークの世界に生きる悪の組織を倒すという話だったようだ。肝心のCGの部分は、当時でもそれほどインパクトを感じなかったように思う。バイクのような乗り物に変身して疾駆するCGが有名なシーンだったようだ。CGを画面全体で使うエポックメイキング的な作品なのだろうが、実写とCGがあまりに分離していたような印象が強い。ディズニーが表現の試行錯誤をした史跡的な作品か。でも、今見ると意外と興味深いかもしれない。

トロン
ジェフ・ブリッジズ スティーブン・リズバーガー ブルース・ボックスレイトナー

猫と月とサイコロ

「猫と月とサイコロ」は、量子論を豊富な例えと実験で紹介する科学クリップ。巧みな映像表現で、量子論の不思議を描いていく。アインシュタインとボーアの掛け合いも挟まれ、数多くの興味をひく工夫がなされている。
 量子力学の入り口としておすすめの作品。

猫と月とサイコロ - YouTube

天地明察 映画

「天理は、算術と観測、どちらが欠けても成り立たん。」
「私たちが小さいのではない、世が大きいのだ。天はさらに広大だ。」

 冲方丁の小説「天地明察」を原作とする岡田准一主演の映画。滝田洋二郎監督による2012年公開作品。
 江戸初期の天文、和算に関する小道具を緻密に配置し、丁寧に映像化されている。個性的な俳優が競演し、起伏に富む物語にまとめあげている。
 数理の重要さを示す、志をもった映画。

天地明察

天地明察

 江戸時代初期、暦の作成に精魂を傾けた渋川春海の生き様を描いた冲方丁の小説「天地明察」。江戸城で囲碁を指南する渋川春海は、神社の絵馬に数学の問題を掲げた「算額」から、和算に惹かれていく。
 関孝和、保科正之など魅力的な人物を配しながら、江戸初期の天文学、和算の動きをからめて和暦の成立をダイナミックに描く。時代小説であるが、ライトノベルのようにスラスラ読める。爽やかな歴史エンターテイメント。
 第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞受賞作品。

ヘレン・ケラーを支えた電話の父・ベル博士

 2歳の時に高熱で聴力、視力を失ったヘレン・ケラーと、電話の発明・普及を通じて、人類に多大な貢献をしたアレグザンダー・グレアム・ベルとの交流を描いた本。小学生でも読める易しい文章で書かれているが、中身は濃く、多くの写真と共に二人の生涯をたどることができる。
 ベルは、母親、妻共に聴覚障害者であった。ベルは、難聴であった母に声を伝える経験を通じ、発声や伝達の仕組みに関心をずっと抱いており、それが電話の発明への情熱に繋がったといわれる。
 ベルは若い頃、ボストン聾唖学校に勤め、その仕事に誇りを持ち、電話の発明家として大成した後も肩書きに「聴覚障害者の教師」を入れ続けたという。
 ヘレン・ケラーを生涯支え続けたアニー・サリバンは、ベルがヘレンに家庭教師をつけるために、盲学校の校長を通じて呼び寄せた人であった。アニー・サリバンは、ヘレンを明るい世界に導いた。
 技術と教育の双方に示唆を与えてくれる本。

ヘレン・ケラーを支えた電話の父・ベル博士

Dr.STONE シーズン2-11

 「70億人が支えきれねえなら、70億人支える手を、70億人で探しまくる。それが科学のやり口だ。」

 Dr.STONE 第2期11話は「PROLOGUE OF Dr.STONE」。重傷を負った司の命を救うために、千空は決断をする。
 科学の力を具体的に示し、巧みなストーリーテリングに落とし込む珠玉のエンターテイメント。その物語の希有壮大さにひたひたと感動が押し寄せる。
 第2期のエンディングにしてなおかつ次なる飛翔へのプロローグ。

第11話 PROLOGUE OF Dr.STONE

Dr.STONE シーズン2-10

 「勝つのは力か科学じゃねえ。力も科学なんだよ。」

 Dr.STONE 第2期10話は「人類最強のタッグ」。天空と司との戦後のエピソード。
 サイエンス・フィクションであり、サイエンス・ファンタジーであるこのSFアニメは、007映画ばりの仕掛けと布石、アクションに満ちている。

第10話 人類最強のタッグ

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