孟嘗君 5

 中国戦国時代、民から慕われた宰相として名高い孟嘗君を描く宮城谷昌光の小説は、文庫本5巻で完結する。
 この長大な小説で、孟嘗君が宰相として活躍する部分は意外に短い。しかし、その前の分量の多さが、この小説の真価でもある。名宰相が生まれるまでの、人々との出会い、様々な人物の生き様が、変化に富んだストーリーの中で見事に編み上げられているからである。
 特に、孟嘗君の育ての親、白圭の行動は、「義人」という現代では忘れ去られた感のある生き方を示している。それも、爽やかな風にふれるような心持ちで読ませてくれる。
 国同士が互いに知力と武力を駆使してせめぎ合う戦乱の世に、凛とした生き方を貫いた孟嘗君の生涯は、一つの理想像と言える。
 国を統べる人格を、波瀾に満ちた物語の中に練達の筆で活写した歴史ロマン。

孟嘗君(5) (講談社文庫)
宮城谷 昌光

道は開ける

 「悩み」を克服する方法を具体的に述べたロング・セラー。たいへん分かりやすく書かれているが、背景には豊富な経験と人脈があり、哲学や科学の知見に裏打ちされている。
 その説得力のある文章にふれるだけでも価値があるだろう。悩みを抱く人だけでなく、より良く生きることを見据えたい人にもすすめられる名著。

道は開ける

わかるPython

 2021年、学校教育においてプログラミングの学習をどう進めるか、問われる年になるだろう。
 文部科学省のGIGAスクール構想の一環として、一人一台のノートパソコンやタブレット端末が配備された。これをどう生かすか、その活用の方向を見定めていく年にもなる。
 手元にパソコンがあるため、プログラミングを学ぶことで児童・生徒自身も活用の幅が広がってくるはずである。プログラミング教育の意味合いはより大きくなっていくであろう。

 現在、デスクトップパソコンで初学者はスクラッチなど「ヴィジュアル系」の言語で学ぶケースが増えている。しかし、本来は「言語」であるため、テキストベースのプログラミングをどこかで学ぶ必要があるだろう。どの言語で何を学ぶか、選択肢はあまりに多い。

 Python は、多くの言語の中でも書法がシンプルで、科学技術計算との親和性もよく、学習に適した言語のひとつと思われる。人工知能の開発に使われることもあり、応用にもつながる言語である。
 数学・理科との連携を見据えた点においても、たいへん優れた学習用プログラミング言語である。今後、教育における活用の幅が広がっていくと思われる。

 Python に関する書籍は様々あるが、「わかるPython」は、初心者にとって学びやすい本のひとつである。まず、レイアウトが工夫されており、見やすい。シンプルな例題をもとに文法が丁寧に説明されている。
 オブジェクト指向、ライブラリの活用までふれられ、実践の方向が見えてくる構成になっている。教育的配慮のよくなされた良書と感じた。

 ソフトウェアやネットワークの重要性が増していく現在、日本が国際社会に伍していくためにも、理数教育の充実は急務である。プログラミング学習は、その鍵を握っている。
 一人一台が実現するとき、いかに質の高い教育につなげていくか。本年はその可能性を追究し、教育の充実を図る正念場になるであろう。

わかるPython[決定版]

スーパーカミオカンデ

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 2020年、多くの逝去された著名な方々がおられたが、とりわけ感慨深かったのは11月12日に亡くなられた小柴昌俊氏の訃報である。氏はニュートリノ天文学を開拓し、2002年にはノーベル物理学賞を受賞された。
 実際にお会いしたのは、大学の研究室における先輩の結婚式で仲人としていらしたときである。帝国ホテルでの式に参加し、良き時を過ごすことができた。

 その先輩とのご縁もあって、2009年3月、スーパーカミオカンデの内部を家族で見学することができた。
 岐阜県の山中にある施設の入口が最初わからず、ガードレールもない急峻な崖沿いの狭い道をどんどん上っていった。遥か下に川が見える崖から転落する恐怖におびえながら車を運転し、頂上に近い所で行き止まりになってようやく行き過ぎたことに気付き引き返した。
 施設の入口は、シャッターがひとつあるだけの何の変哲もない寂しい場所であった。ほどなくシャッターが開き、東大の先生が運転する専用車両が出てきてホッとした。
 子どもたちは宇宙線研究所で借りたヘルメットをかぶり、懐中電灯を手にして冒険気分で楽しそうであった。
 錆びたバンで鉱山跡の奥深くまで乗っていき、ようやく施設にたどり着く。内部には狭い部屋があり、壁を大きく占めるモニターには色とりどりの点が明滅していた。地下の巨大な水槽に据え付けらている光電管で捉えた素粒子を示すものであった。宇宙の真理を解明する試み、純粋に知的な営みが静かになされていることに感銘をおぼえた。基礎科学の重みを実感した体験であった。

 2020年はコロナ禍でイレギュラーなことが多い1年であった。それだけに、普遍的な科学への関心を高めることの重要性を痛感する年であった。

 「ミクロとマクロは繋がっている」
 小柴氏の言葉は、今も大切な視座を与え続けてくれる。

 2009年3月21日 スーパーカミオカンデ

水滸伝 六 風塵の章

 北方謙三の「水滸伝」第六巻、風塵の章。冒頭から極めて面白い。宋江一行は旅先であるときは盗賊に出くわし、あるときは持て成しを受ける。その過程で仲間が増える様はRPGのようである。
 見どころが多く、宋江と王進との会話、宋の将軍泰明と梁山泊の魯達との会見などは深みをたたえた名場面。
 心にしみいる場面と緊迫の状況が交錯する巻。

水滸伝 6 風塵の章 (集英社文庫)

達磨寺 鼻高展望花の丘

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 今年は家族で遠出をしなかったので、年賀状用の写真を撮るために近くの少林山に行く。
 少林山達磨寺は群馬県高崎市の古刹であり、縁起物の生産地に近く多くのだるまが奉納されている。
 晩秋であり、人もあまりいないであろうと思っていたが、意外なことに寺の駐車場には多くの車が停まっていた。しかも県外のナンバーが多く、紅葉のシーズンでもあり人気のスポットだったのかもしれない。

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 境内からは榛名山などが望まれ、紅葉に彩られた風景が見られる。

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 達磨寺からほど近い、鼻高展望花の丘に行く。四季折々の花が植えられているスポットである。コスモスの季節が有名であるが、晩秋にもかかわらず鮮やかな色合いの花が植えられていた。
 花畑の向こうに、高崎市街や榛名山などが遠望できる。広やかな景色に心も自然とおだやかな気分になる。

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 近くの長坂牧場からの眺望も素晴らしく、新鮮なミルクで作られたソフトクリームを食べながら景色を満喫した。Hanadaka06_2
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 鼻高の高地からは、浅間山、妙義山など群馬を囲む霊峰が一望できる。
 これら峨々たる山塊が、群馬県人の心の襞を四季折々の情景と共に耕し、情感豊かな人々を育てているのではないかと感じさせられた。

少林山 達磨寺

長坂牧場 みるく工房タンポポ

MAGI 天正遣欧少年使節 10

 「あなたがたは、なぜ簡単に答えをだすのです」

 「MAGI 天正遣欧少年使節」最終話は「終わりなき旅へ」。ローマ法王への謁見を果たし、少年たちは帰国の途に就く。しかし、日本は秀吉の命により、キリスト教徒への苛烈な迫害が始まっていた。
 歴史に翻弄される少年たちを通し、信仰のありよう、文化のせめぎ合いを描き、ダイナミックに16世紀の日欧を活写した意欲作。鎌田敏夫の優れた脚本、長崎俊一監督による映像美により、極めて見応えのあるドラマになっていた。
 とりわけ少年たちの中でも信仰心の熱い中浦ジュリアン演じる森永悠希には、藤井道人監督の「青の帰り道」において職場での撮影現場でお会いしたこともあり、その繊細な演技に引き込まれた。
 優れたスタッフと俳優の演技により、時々の人々の苦悩と矜持を鋭く描く深みのあるドラマであった。
 歴史は人々の有り様を照射し、今なお問いかけを続けている。それをまざまざと伝える作品。

THE LAST EPISODE 終わりなき旅へ

MAGI 天正遣欧少年使節 9

 「MAGI 天正遣欧少年使節」第9話は「三人の賢者 -ヴァチカン篇-」。少年たちは、ついに法王に謁見することがかなう。一方、秀吉は諸国に伴天連追放令を掲げる。
 法王との謁見シーンでは、作り手の思い入れも感じられ、自然と涙が出てきた。そこには、人としての偽らざる発露があった。

EPISODE 9 三人の賢者 -ヴァチカン篇-

MAGI 天正遣欧少年使節 8

 「MAGI 天正遣欧少年使節」第8話は「物乞いの子 -ローマ篇-」。ヴァチカンを目前にするが、少年たちの身分に疑念が生じ木賃宿で足止めとなる。一方、利休を死罪にし、高山右近を放逐した秀吉は、宣教師に自らの胸の内を語り、キリシタンへの憤懣をあらわにする。
 常に冷徹に周囲を見る伊藤マンショが自らの過去を語る。愛と残酷さ。キリスト教のもつ二つの側面を多層的に描きだす回。

EPISODE 8 物乞いの子 -ローマ篇-

MAGI 天正遣欧少年使節 7

 「MAGI 天正遣欧少年使節」第7話は「ユダは誰だ -フィレンツェ篇-」。少年たちは、メディチ家のトスカーナ大公に謁見する。その後、ローマに向かうが、途中で足止めとなる。
 各地をめぐる少年たちを通し、当時のヨーロッパの文化を描いていく。伝統に裏打ちされた色彩美豊かな映像が見事。

EPISODE 7 ユダは誰だ -フィレンツェ篇-

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