素数に憑かれた人たち

 「ゼータ関数の自明でない零点の実数部はすべて1/2である。」

 「素数に憑かれた人たち」は、数学における最も重要な未解決問題「リーマン予想」について、その内容と、解決に挑んだ人々の姿を描いた書。奇数章には数学の解説が記され、偶数章には背景となる歴史や伝記的な話題が述べられている。
 現代数学においても難問であるリーマン予想を、平易に記述し、伝えようとする工夫が素晴しい。数学教育においても、参考になる点が多い。また、数学者が生きた時代背景やエピソードが興味深い。単なる数学の解説書ではない広がりがあり、読み物としても飽きさせない。近現代における数学者の列伝としての側面も持っている。
 歴史の縦糸のひとつとして数学が息づいている様を見事に描いた本。

素数に憑かれた人たち リーマン予想への挑戦【電子書籍】[ ジョン・ダービーシャー ]

モクモク村のけんちゃん

九ちゃん 「『ごめんなさい』って言われたら、けんちゃんなんて言う?」
けんちゃん 「『いいですよ』って言うな。」
九ちゃん 「それそれ、それが "That's all right." さ。」

 「モクモク村のけんちゃん」は、1970年代当時のTBSブリタニカの英語教材として製作された紙芝居。カセット5巻に収められた物語で、当時小学生だった自分は何度聴いても飽きなかった。美しかった村が遠くからの煙によって汚い空気と川になってしまい、元の村に戻すためにけんちゃんが冒険をする物語。暖かみのある絵と、明瞭なストーリーにより、自然と英語の世界に引き込まれていく。環境問題を予見した内容でもあった。
 けんちゃんが冒険をする国が、英語で話されているという設定が秀逸で、聴き手は、けんちゃんが言葉を覚えていく過程で自然と英語に馴染んでいく。案内役の九官鳥の九ちゃんを通じて、英語の意味がわかるようになっており、実に見事な脚本。小学校英語活動においても参考になる要素がある。
 永らく入手困難な幻の教材であったが、ブリタニカ・ジャパンよりパソコン用のデジタル紙芝居として復刻された。
 子ども用英会話教材の金字塔ともいえる優れた作品。

自助論

 「天は自ら助くる者を助く」

 サミュエル・スマイルズの世界的ロングセラー「自助論」。努力・勤勉・忍耐・独立・誠実の重要性を、膨大な例で語る著作。1858年、イギリスが世界最強の国であった時に書かれた本であり、文章に勢いを感じる。
 日本では明治4年に中村正直の訳により「西国立志編」として出版され、100万部の超ベストセラーとなった。その独立と向上をうたった文章は明治の青年たちを奮い立たせ、近代化を推進する精神的な支柱のひとつとなった。
 自助論は、150年の時を経てなお多くの人に読まれている。この本を「古い」とか、「あたりまえ」と一蹴するのは簡単である。しかし、本気で向き合って初めて見えるものが世の中にはたくさんある。

評伝 大村はま

 「そうだ、やさしいことばでこそ、人の心のなかに入っていけるのだ、むずかしい理論、高い思想、深い感動を、みんなにわかるやさしい、平らな、なめらかなことばで伝えていかなければ、文化はみんなのものにならないのだ」

 98歳になるまで、国語教育に渾身で取り組み、多くの生徒たちを育てた大村はま。その教え子であり、晩年はまの仕事を支えた苅谷夏子氏が著した「評伝 大村はま」。
 大村はまの人格が形成され、国語教師として実践を重ね、多くの生徒の生涯に影響を与える授業を創り上げる過程を丁寧に描いている。
 日露戦争、関東大震災、太平洋戦争、戦後の混乱など、日本の近現代史を背景にしながら、大村はまの関わる人々や当時の学校の様子が生き生きと綴られ、物語としても惹き付けられ、飽くことがない。
 はまの学びや実践から、教育に対する様々な考え方が具体的に記され、極めて示唆に富む。
 平易な言葉で、するすると読むことができるが、実に多角的な視点で大村はまの人物と実践が語られ、内容はたいへんに深い。心にすんなりと言葉がはいってくる。この本そのものが、大村はまによる国語教育の成果とも言える。
 多くの感動と真の敬愛に満ちた、優れた教育書。

評伝 大村はま ことばを育て 人を育て (単行本)
苅谷 夏子

教えるということ 大村 はま

 「私は、子どもがかわいいのであれば、子どもをとにかく少しでもよくしていける、教師という職業人としての技術、専門職としての実力をもつことだ、子どもをほんとうにかわいがる、幸せにする方法は、そのほかにはないと思います。」

 大村はまが、富山県新規採用小学校教員にむけて行った講演「教えるということ」を始め、「教師の仕事」「教室に魅力を」「若いときにしておいてよかったと思うこと」の4編の講演を収めた書。優しい言葉で語られるが、そこには強烈なプロ意識と、教える者としての使命感に溢れている。教育の原点を改めて思い起こさせてくれる凛然とした書。

猫と月とサイコロ

「猫と月とサイコロ」は、量子論を豊富な例えと実験で紹介する科学クリップ。巧みな映像表現で、量子論の不思議を描いていく。アインシュタインとボーアの掛け合いも挟まれ、数多くの興味をひく工夫がなされている。
 量子力学の入り口としておすすめの作品。

猫と月とサイコロ - YouTube

天地明察 映画

「天理は、算術と観測、どちらが欠けても成り立たん。」
「私たちが小さいのではない、世が大きいのだ。天はさらに広大だ。」

 冲方丁の小説「天地明察」を原作とする岡田准一主演の映画。滝田洋二郎監督による2012年公開作品。
 江戸初期の天文、和算に関する小道具を緻密に配置し、丁寧に映像化されている。個性的な俳優が競演し、起伏に富む物語にまとめあげている。
 数理の重要さを示す、志をもった映画。

天地明察

道は開ける

 「悩み」を克服する方法を具体的に述べたロング・セラー。たいへん分かりやすく書かれているが、背景には豊富な経験と人脈があり、哲学や科学の知見に裏打ちされている。
 その説得力のある文章にふれるだけでも価値があるだろう。悩みを抱く人だけでなく、より良く生きることを見据えたい人にもすすめられる名著。

道は開ける

ヘレン・ケラーを支えた電話の父・ベル博士

 2歳の時に高熱で聴力、視力を失ったヘレン・ケラーと、電話の発明・普及を通じて、人類に多大な貢献をしたアレグザンダー・グレアム・ベルとの交流を描いた本。小学生でも読める易しい文章で書かれているが、中身は濃く、多くの写真と共に二人の生涯をたどることができる。
 ベルは、母親、妻共に聴覚障害者であった。ベルは、難聴であった母に声を伝える経験を通じ、発声や伝達の仕組みに関心をずっと抱いており、それが電話の発明への情熱に繋がったといわれる。
 ベルは若い頃、ボストン聾唖学校に勤め、その仕事に誇りを持ち、電話の発明家として大成した後も肩書きに「聴覚障害者の教師」を入れ続けたという。
 ヘレン・ケラーを生涯支え続けたアニー・サリバンは、ベルがヘレンに家庭教師をつけるために、盲学校の校長を通じて呼び寄せた人であった。アニー・サリバンは、ヘレンを明るい世界に導いた。
 技術と教育の双方に示唆を与えてくれる本。

ヘレン・ケラーを支えた電話の父・ベル博士

Dr.STONE シーズン2-11

 「70億人が支えきれねえなら、70億人支える手を、70億人で探しまくる。それが科学のやり口だ。」

 Dr.STONE 第2期11話は「PROLOGUE OF Dr.STONE」。重傷を負った司の命を救うために、千空は決断をする。
 科学の力を具体的に示し、巧みなストーリーテリングに落とし込む珠玉のエンターテイメント。その物語の希有壮大さにひたひたと感動が押し寄せる。
 第2期のエンディングにしてなおかつ次なる飛翔へのプロローグ。

第11話 PROLOGUE OF Dr.STONE

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