海賊とよばれた男(下)

 敗戦後、全ての資産を失いながらも、石油の商いを復活させ会社の再生を果たす国岡鐵造。しかし、世界の石油は「メジャー」と呼ばれる巨大企業が牛耳っており、戦いは避けられなかった。
 国や国際社会を相手に、自らの信念と矜持をもって対峙する男の姿が感動を与える。特に、石油タンカー「日章丸」の実話に基づく物語には、胸を熱くさせられた。
 幾多の困難を乗り越えた真のリーダーたちの姿を描き、圧倒的存在感を放つ経済小説。

海賊とよばれた男(上)

 「ただちに建設にかかれ」

 太平洋戦争の敗戦直後、焼け野原のなった東京に辛うじて残った本社屋で、国岡商店の店主は、仕事が全くないにもかかわらず、一人の社員もクビにすることなく、あらゆる手段を尽くして活路を見出す。それは、日本の石油産業を発展させた男の、還暦になってからの第一歩であった。

 「海賊とよばれた男」は、出光興産の出光佐三をモデルにした百田尚樹の歴史経済小説。20世紀の産業を発展させると同時に、紛争の火種ともなった巨大エネルギー「石油」を扱う男のドラマである。
 油の小売りから身をおこし、国や世界を相手に堂々とわたりあう人々を描いた、入魂の作品。

雄気堂々

 経済において近代日本の礎を築いた渋沢栄一の半生を描く城山三郎の小説。渋沢栄一は、埼玉の寒村に一農夫として生まれ、若き日は横浜焼き討ちなどを企てる尊皇攘夷の志士であった。やがて、幕末から明治維新という時代の動乱の中で多くの人々と出会い様々な経験を積み、経済人として最高の指導力を発揮するようになる。
 徳川慶喜、西郷隆盛、大久保利通、大隈重信など、国づくりに奔走する多くの人々との関わりが、実に興味深かった。そこには日本が新しく生まれ変わる混沌と初々しさがあり、わき上がる熱気が感じられる。
 渋沢の人間形成の過程と明治維新前後の近代日本の歴史を重ねることで、組織のあり方、組織を率いる人々のあり方を国づくりという大きな視野で示している。
 スケールの大きな、強力なリーダーシップを持つ人物が日本では一昔前に比べ、急激に減少していると言われている。どのような条件が本物のリーダーを育てるのかという視点からも示唆に富む、真に実のある作品。

雄気堂々〈上〉
雄気堂々〈下〉

落日燃ゆ

 広田弘毅-東京裁判で死刑判決を受けたA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元総理、外務大臣。その生き様を、戦争に突入する世相の中で描く城山三郎の小説。

 広田は軍部の台頭による戦争の拡大を阻止しようと外務大臣として努めたが、結果は、その首謀者たる軍人たちと共に絞首刑となった。

 広田の実直な生き様には、自然と襟を正す思いであった。吉田茂、幣原喜重郎、松岡洋右など、他の外相の姿勢も興味深い。

 何より巣鴨拘置所での広田の様子と東京裁判の進行が交互に描かれる終盤は、胸に迫るものがあった。史実を積み重ねる淡々とした筆致だが、それゆえにこそ、作者の思いがじっくりと伝わってくる。静かな感銘が、読後も長く続いている。

落日燃ゆ (新潮文庫)
城山 三郎

もう、きみには頼まない

 財界総理と呼ばれ、日本の高度経済成長期に経団連会長をつとめた石坂泰三の生涯を描く小説。石坂泰三は、第一生命、東芝などの社長を歴任し、経済界に多大な影響を与えた。現職の大蔵大臣や総理にすら、「もう、きみには頼まない」と啖呵を切るほどの気骨を持っていた。

 最も感銘を受けたのは、80歳近くなってから大阪万博の会長を引きうけるエピソードだ。
 「万博は深い意味を持っている。見本市とか何とかとちがって、人類が文化に貢献したものを、一堂に展示するのだから」-即興で英国の詩を原文で諳んじるほど、深い教養をもった人物であったからこそ、「人類の進歩と調和」というテーマが生まれたのであろう。
 万博について、四つの方針「予定の開催日に間に合わせること。事故防止。汚職の根絶。赤字を出さぬ。」を定めた。言うは易く、これだけの国家事業を進めるには相当苦労があったろうが、方針を貫き見事に成功に導いたことは凄いと思った。

 多くの経済人を描いてきた城山三郎が、石坂泰三を描く小説を持ち込まれてから、二十余年もの歳月を経てようやく執筆にいたる経緯を描く「あとがき」にも感動した。

 数多くの重責を担った人物の生涯であるが、読後には清々しさをおぼえた。真に志のある生き方だったからであろうか。

もう、きみには頼まない
城山三郎

辛酸

 足尾鉱毒事件で国家と対峙した田中正造、その晩年と、死後その遺志を継いだ人々を描く、城山三郎の小説「辛酸」。
 この小説では、衆議院議員として華々しく活躍した田中正造ではなく、晩年、全ての財産や名誉を投げ打って鉱毒被害民と共に訴訟を続ける正造の姿を描いている。
 この作品が発表されたのは、昭和36年、まだ公害という言葉が耳慣れない時代であった。その当時、若干34歳で日本初の公害問題を取り上げ鮮やかに活写した城山三郎に感嘆を禁じ得ない。田中正造と苦労を共にする被害民の若者の視点から描くことにより、田中を客観的に捉えると同時に、被害の悲惨さも浮き彫りにされている。
 逆境の渦中にありながら、「辛酸入佳境」と書く田中正造のすさまじい生き様、そしてそれを受け継ぐ人々の苛酷な現実。淡々とした筆運びにもかかわらず、ずしっと重みのある本であった。

辛酸―田中正造と足尾鉱毒事件
城山 三郎

臨3311に乗れ

 「臨3311に乗れ」は、野武士的な勢いで、幾多の困難を乗り越え旅行業の道を切り開いていった人々を描く城山三郎の小説。
 スピード感のある展開で、あっという間に読み進んだ。会社を広げる主人公馬場たちのバイタリティに、終始圧倒された。続々とわき起こる課題を剛胆さ、粘りで克服し、その自信が次の夢と企画を生む。そのダイナミズムと熱き心根に、読んでいて火照る思いであった。
 読後は、城山氏の懐の深さと暖かみを感じた。 

臨3311に乗れ
城山 三郎

百戦百勝

 「相場の神様」といわれた山崎種二をモデルにした小説。相場の世界というと、ギラギラした思惑渦巻く場という感じがあるが、この主人公はひたむきで憎めない。取り巻く人々にも愛着を覚え、読後感もたいへん良かった。
 関東大震災、226事件などの歴史的事件や、数々の仕手戦が描かれ、起伏に富んだ痛快な作品。城山三郎の暖かい眼差しを感じる。

百戦百勝―働き一両・考え五両
城山 三郎

黄金の日日

 戦国時代の堺の商人たちが、財力をもって為政者たちと対峙した姿を描く城山三郎の小説。
 経済という切り口から信長・秀吉の時代をとらえ、気概にあふれる堺の姿が活き活きと描かれている。舞台はフィリピンにまで及び、その雄大な物語にしばし時を忘れて読みふける。
 経済が人の心で動いていることをまざまざと感じさせてくれる。

黄金の日日
城山 三郎

ヴェデルニコフ リスト、ラヴェル&フランク

 ヴェデルニコフのピアノによるリストの「ローレライ」「メフィスト・ワルツ第1幕」「エステ荘の噴水」、ラヴェルの「水の戯れ」「クープランの墓」、フランクの「前奏曲、フーガと変奏曲 ロ短調」が収められたCDを聴く。
 水面に無数の水滴が落ち、波紋が広がり重なり合うような、自然な響き。完璧なタッチできらめきに溢れた音楽が広がる。
 リストは歯切れのよさが光る。ラヴェルの「水の戯れ」は、ピアノが奏でられていることすら忘れさせてくれた。「クープランの墓」は輝きに満ちた絶品。フランクは、惻々と胸に迫る名演。

ロシア・ピアニズム名盤選26 ヴェデルニコフ/リスト、ラヴェル&フランク
ベデルニコフ ベデルニコフ(アナトリー) フランク

ヴェデルニコフ テンペスト

 ヴェデルニコフの弾く、ベートーヴェンの「自作の主題による32の変奏曲 ハ短調」は、そのピアノの素晴らしさがストレートに伝わってくる。どんなに速くとも乱れることなく、完璧なコントロールと多彩な技巧で自在に音楽を紡いでゆく。推進力と強固な意志、内なる情熱、ベートーヴェンの魅力があますところなく表現されている。
 「月光」の透徹した深み、「テンペスト」のスケールの大きさ、真の芸術に触れたと実感できるアルバムであった。

ロシア・ピアニズム名盤選-3 ベートーヴェン:月光/テンペスト、他
ヴェデルニコフ(アナトリー) ベートーヴェン

ヴェデルニコフ ハンマークラヴィーア

 1993年、日本での公演が予定されていながら、その直前に亡くなったロシアのピアニスト、アナトリー・ヴェデルニコフ。政府により永らく旧ソ連以外での活動が認められていなかったが、ゴルバチョフのペレストロイカにより、他国での活動が許され、広く知られるようになった。
 しかし、ヴェデルニコフは1935年、若干15歳のとき、東京に来てコンサートを行っている。その後、ロシアに戻ったときから悲劇が始まった。両親はスパイ容疑を受けて逮捕され、父親は銃殺される。母親は強制収容所に送られる。ヴェデルニコフ自身も活動を制限され、抑圧の中で自己を磨いていく。
 ヴェデルニコフの弾くベートーヴェンの真摯な演奏は、技巧を越えて訴える力を持っている。

ロシア・ピアニズム名盤選-2 ベートーヴェン:ハンマークラヴィーア/ピアノ・ソナタ第1番
ヴェデルニコフ(アナトリー) ベートーヴェン

ヴェデルニコフ バッハ

 ヴェデルニコフの、奇をてらわず真摯に弾くバッハは、しみじみと良い。
 「イギリス組曲第6番」に現れる、瞑想的な美しさと可憐な響きにはどちらにも惹かれる。
 ヴェデルニコフ自身が編曲した「7つのコラール前奏曲」は、慈しみをもって弾いていることが伝わってくる名演。
 「イタリア協奏曲」では、一転、明るく快活なピアノに魅了される。これほどバッハを聴く喜びを味わったのは、パブロ・カザルス指揮、マールボロ音楽祭管弦楽団によるブランデンブルグ協奏曲以来だ。
 磨きぬかれた技と、確固とした精神により表現された、比類無きバッハ。

メルー

 ヒマラヤ山脈メルー峰に挑んだ人々の山岳ドキュメンタリー「メルー」。実際に登頂したジミー・チンが監督している。
 メルー峰へのダイレクト・ルートには、「シャークスフィン」と呼ばれる垂直な岩盤が立ち塞がる。2008年、コンラッド・アンカー、ジミー・チン、レナン・オズタークの3名が挑むが、あとわずかのところで失敗に終わる。映画は、その後の3名の心境とクライミングに向き合う様を描いている。
 単なる登山のドキュメンタリーにとどまらず、クライマーの内面にまで掘り下げた語り口が素晴らしい。山々のあまりに美しい映像が向き合う人の心境に説得力をもたらす。
 壮大な映像美で登山家の冒険心を余すところなく描く優れたドキュメンタリー映画。

MERU/メルー (字幕版)

戦雲の夢

 長宗我部盛親を描いた司馬遼太郎の小説「戦雲の夢」。
 土佐の領主、長宗我部盛親は関ヶ原の戦いで西軍に属するが、敗走する。領国を没収され、浪人に身を落とすが…。
 四国に版図を広げた長宗我部元親を描いた「夏草の賦」の続編にあたる作品。元親の四男にあたる盛親の命運が他勢力との関わりを含めて丁寧に綴られている。
 合戦シーンよりも、女性との関わりにページが割かれている。特に、関ヶ原後の蟄居の描写が濃密であり、心理小説としての趣も強い。
 英雄とは言いがたい主人公の生き様であるが、自らの人生に重ねて胸に迫る部分も多かった。  乱世に翻弄された武将の生涯を、円熟の筆で活写する歴史小説。

司馬遼太郎 戦雲の夢

夏草の賦 下

 司馬遼太郎の「夏草の賦」下巻では、織田信長、豊臣秀吉と、権力者と対峙する長曾我部元親の姿を描く。
 土佐から四国全土、天下を伺った男の生涯を通し、人の情熱と進退の妙を、清爽とした筆運びで綴った歴史小説。

夏草の賦 [新装版] 下 (文春文庫)
司馬 遼太郎

夏草の賦 上

 司馬遼太郎の「夏草の賦」は、四国の長曾我部元親を描いた小説。
 斉藤利光の娘、奈々が嫁ぐいきさつから語り初め、ユーモラスな雰囲気を漂わせながら知謀の将、元親の実像に迫る。
 四国を席巻した風雲児の活躍を小気味よく描く歴史ロマン。

夏草の賦 [新装版] 上 (文春文庫)
司馬 遼太郎

ブレンダンとケルズの秘密

 9世紀、アイルランドの修道院で暮らす少年ブレンダンを主人公とする長編アニメーション「ブレンダンとケルズの秘密」。
 修道院はヴァインキングからの襲撃を守るために砦が築かれつつあった。伯父である院長からは砦より外に出ることを禁じられていたが、ブレンダンは本を書くためのインクの実を採取しに、森へと出かける。そこで、不思議な少女アシュリンと出会い、運命の歯車が回り始める。
 中世絵画風の背景の中で、少年が生き生きとした動きを見せる。どのシーンも一幅の絵画のような趣があるが、とりわけ「ケルズの書」の描写はあまりに見事。複雑に交錯したケルト文様が一斉に動く様は圧巻。
 緻密な様式美に彩られた鮮やかなアニメーション。  

苦役列車

 日雇い青年の日常を独特の文体で描いた西村賢太の小説「苦役列車」。
 港湾での荷役労働に従事し、一人暮らしをする北町貫多は、無為の日々を送っていた。ある日、爽やかな風貌の専門学校生と出会い、貫多の日常にわずかな変化が生じていく。
 先の見えない日常におかれた若者がリアルに描かれ、自らが苦境にあるときには逆に励まされる思いがあった。苦役の中、一点の拠り所が心にしみる。
 2010年下半期芥川龍之介賞受賞作品。

カラスの親指

 道尾秀介の小説「カラスの親指」を原作とする映画。阿部寛主演、伊藤匡史監督による2012年公開映画。
 サラリーマンから転落したベテランの詐欺師タケは、さえない男テツとコンビを組んで仕事をしていた。ある日スリの少女を見逃すが、それがきっかけとなり奇妙な共同生活が始まる。
 トリッキーであるが、コメディとサスペンスがほどよく同居し心地よい映画。

カラスの親指 by rule of CROW's thumb

パラサイト 半地下の家族

 半地下の薄暗いアパートに住む家族と、高台の高級邸宅の住人との接点を描いた映画「パラサイト 半地下の家族」。ポン・ジュノ監督による2019年公開作品。
 薄汚い半地下のアパートに住む若者ギウは、名門大学に通う青年ミニョクが海外留学する間、家庭教師を代わりに行う依頼を受ける。大学生になりすまし、高台の高級住宅を訪れたギウは、夫人の信頼を得る。半地下の4人家族は、それをきっかけとして徐々に邸宅と関わっていく。
 韓国社会の垂直分断を力業で描いた意欲作。
 第72回カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞、2020年アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞など数多くの受賞歴をもつ作品。

パラサイト 半地下の家族(字幕版)

歌姫~バラード・ベスト~

「M」プリンセス プリンセス、「瑠璃色の地球」松田聖子、「時代」薬師丸ひろ子、「恋におちて-Fall in love-」小林明子、「Believe」岡村孝子、「シルエット・ロマンス」大橋純子、「聖母たちのララバイ」岩崎宏美、「ラヴ・イズ・オーヴァー」欧陽菲菲、「フィーリング」ハイ・ファイ・セット、「かもめはかもめ」研ナオコ、「君と歩いた青春」太田裕美 など、女性ヴォーカルのラヴ・ソングを集めた2枚組CD。
 時代を超えて歌い継がれる名曲、繊細な歌唱に心癒やされる。

マーラー交響曲第7番

 「夜の歌」とよばれる、マーラー交響曲第7番は、ベルリオーズの「幻想交響曲」よりも幻想的な雰囲気に満ちている。5楽章構成で、真ん中の「影のように」と記された奇妙なスケルツォをはさみ、第2楽章と第4楽章に「夜曲」が配置されている。この2つの夜曲の独特な雰囲気には、なんとも言えない魅力がある。
 第2楽章は、夜のとばりが降り、暗くなった森に鳥たちがさえずり、動物たちが行動をはじめるような情景がうかぶ。シンガポールに行ったときのナイト・サファリを思い出した。
 第4楽章は、月夜のもとで奏でられる愛のセレナーデ。ギター、マンドリンも加わり、様々な管弦楽法に彩られながらも、かわいらしい情緒をもった曲である。この楽章だけ聴くのもいいのではと思う。
 終楽章は、音と音とのぶつかり合いで、最初にこの楽章を聴いたときには、なんだこりゃと思った。ジャングルでゴリラたちが暴れるような、めまぐるしく出し物が変わるサーカスのような、キングコングがやってくるかのような、ウッハ、ウハウハウッハッハーなやぶれかぶれの感じがたまらない。

 マイケル・ティルソン・トーマス指揮、ロンドン交響楽団による演奏は、このあまりに多くの要素が詰め込まれた交響曲を、自在なテンポと完璧なコントロールではっきりと形を示してくれる。そのため、安心してこの多様な音響の世界に浸ることができた。

 それにしても、マーラーの音楽は、本当にいろいろな楽しみ方ができるものだ。

マーラー:交響曲第7番
ロンドン交響楽団 トーマス(マイケル・ティルソン)

トルコ行進曲~アファナシエフ・プレイズ・モーツァルト

 アファナシエフによるモーツァルト ピアノソナタ第9番、第10番、第11番のCD。悠然としたテンポでありながら、決然とした推進力を持っている。一音一音が研ぎ澄まされた演奏。

トルコ行進曲~アファナシエフ・プレイズ・モーツァルト
ヴァレリー・アファナシエフ

ベートーヴェンピアノ協奏曲第3番

 「アファナシエフ・プレイズ・エンペラー!」のCDは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番の演奏も収められている。第3番は、その曲調が様々な思索を巡らすアファナシエフの演奏スタイルに合っているようで、変化に富んだ楽しめる演奏だった。

プレイズ・エンペラー!
アファナシエフ(ヴァレリー) スダーン(ユベール)

アファナシエフ プレイズ・エンペラー

 アファナシエフのピアノによる、ベートーヴェンピアノ協奏曲第5番のCDを聴く。ユベール・スダーン指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団演奏。
 まさしく、エンペラーと呼ぶにふさわしい絢爛豪華な曲だが、この演奏は、ちょっと様相が違った。第1楽章で最初の和音が鳴ったときは、おおっベートーヴェン!ピアノの音も良い!と期待した。しばらくはゴキゲンで聴けたのだが、しばらくしてテンポがどうもいつもと違う感じ。早くなったり遅くなったりと、ブレがあるのだ。かといって、それが不快というのではなく、ピアノは強靱なタッチで一音一音が明瞭、何か強力な意思を感じる。
 第2楽章はいよいよ思索的になり、クリアでよく響くピアノなのだが、どこか孤独な雰囲気を漂わせている。
 第3楽章のピアノの奔放さは、奏者と作曲家との間の談論風発なのだろうか。少なくとも、聴衆との対話ではないと感じた。
 孤高の芸術家と絢爛たる協奏曲との組合せは、聴いている自分のアンビバレンスを映すようであり、不思議な後味を残す演奏だった。

プレイズ・エンペラー!
アファナシエフ(ヴァレリー) スダーン(ユベール)

HOTEI ALL TIME SUPER BEST

 布袋寅泰の才能にあらためてしびれる。

ALL TIME SUPER BEST

てつどうの歌 ~鉄道唱歌/銀河鉄道999~

 「鉄道唱歌」「汽車ぽっぽ」「僕は特急の機関士で」「修学旅行」「寝台列車」「新幹線でゴー!ゴ・ゴー!」など、鉄道に関わる歌を集めたCD。
 ゴダイゴの銀河鉄道999(THE GALAXY EXPRESS 999)が最後に収められているが、この歌の前向きさは、列車の高揚感と無縁でないことを改めて感じさせてくれた。

ディズニー・ジャパニーズ・アーティスト・ベスト

「Sugar Rush」AKB48、「小さな世界」倖田來未&Heartsdales、「シー・オブ・ドリームス」MISIA、「好きにならずにいられない」三浦大知、「星に願いを」矢沢永吉など、日本人アーティストが歌うディズニーの曲を集めたCD。
 どの曲もクオリティが高く、独特の感興がある。

トロン

 ディズニー最初のCG映画は1982年公開の「トロン(TRON)」である。公開当時、大学生であったが、CGに興味を持っていたので映画館へ見に行った記憶がある。ネットワークの世界に生きる悪の組織を倒すという話だったようだ。肝心のCGの部分は、当時でもそれほどインパクトを感じなかったように思う。バイクのような乗り物に変身して疾駆するCGが有名なシーンだったようだ。CGを画面全体で使うエポックメイキング的な作品なのだろうが、実写とCGがあまりに分離していたような印象が強い。ディズニーが表現の試行錯誤をした史跡的な作品か。でも、今見ると意外と興味深いかもしれない。

トロン
ジェフ・ブリッジズ スティーブン・リズバーガー ブルース・ボックスレイトナー

少年と犬

 馳星周の小説「少年と犬」は、一匹の犬をめぐる人々を描く連作短編小説。
 「不夜城」などのアンダーグラウンドな舞台を多く手がけていた著者の新作が、あまりにストレートなタイトルで意外に感じる。しかし、本作も苦みを持ち味とした作品であった。
 苦悩する人々に寄り添いつつ、自らの意思を明確にもち凜然と佇む犬の姿に感銘をうける。第163回 直木賞受賞作品。

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