「笑わせるもんじゃない つい笑ってしまうもの これが芸だと思うんですね」
プロフェッショナル「仕事の流儀」第100回は、落語家、柳家小三治の仕事ぶりが描かれる。
その悠揚たる話しぶりからは想像もつかないが、普段は苦虫をかみつぶしたような顔で、ほとんど笑わないようだ。
かつて、師匠の五代目小さんから、お前の噺(はなし)は面白くないと言われ、深く悩んだ。「面白い」とはなにかを常に考える。求道する人生である。
「一番下からものを見るということができないと落語はできないなということも知った」
笑わせない芸を目指し、「小さく小さく」演じる。小三治の落語は、無駄をそぎ落とす。そこから、落語そのものの面白さ、人の営みの豊かさが自然にじみでる。魅力の真髄はそこにある。
柳家小三治による、「子別れ」上・中・下の通し口演のCDを聴く。
「子別れ」は、「下」が名作の誉れ高い。しかし、「上」の葬式帰りに吉原に寄る熊五郎の酔態、「中」の熊五郎と奥さんとのやりとりをじっくりと聴いた後、「下」に接すると、熊五郎の変わりようが鮮烈に感じられ、登場人物によりいっそう心を寄せられた。
2時間に渡る長丁場の落語だが、小三治の気迫のこもった語りにぐっと引き込まれた。真っ向勝負で人物の心のひだを表現した「下」の人情噺には、さすがに泣かされた。
ひとりが複数の人を演じる落語の凄みを実感させられる記念碑的口演。
柳家小三治の「あの人とっても困るのよ」の続きとなる「人形町末広の思い出」。全編マクラの、二枚組CD。
自らが被った災難や、かつてあった人形町末広にまつわる人々の思い出を語る。
飄々とした語り口で、世の憂さを軽妙にあしらう懐の深さに心地よさを感じる。
いつまでも聴いていられるおかしみを持った口演。
柳家小三治が、まくらだけを語るCD。2002年7月14日の口演を収録。とりとめもない話が延々と続くのだが、その語り口にひかれずっと聴き入ってしまう。
初恋の人に別れを告げられたところで突然終わってしまい、なんでこんな中途半端なと思ったが、2枚目のCDがあることに初めて気づいた。2枚組で85分に及ぶオンリーまくらであるが、まったく飽きない。境地に達した至芸であろう。
柳家小三治の「マクラ」は、それひとつで新作落語のようである。「玉子かけ御飯」と「駐車場物語」の2編が収められている。玉子かけ御飯だけで、よく20分以上話せると感嘆する。「駐車場物語」は、人に対する温かい眼差しが感じられ、味わいがある。
柳家小三治が、単身ニューヨークにわたった体験を語る。英語をマスターするには、一人旅をしなくてはと出かけた先での失敗談の数々。大まじめで取り組んでいる様が、逆に面白さを引き立てる。
柳家小三治のマクラは、本題以上におもしろい。ドリアンにまつわるマクラがあまりに楽しいのであるが、「備前徳利」に入る際の呼吸があまりに見事。一転場の空気が変化する。まさしく名人芸。
柳家小三治の落語「らくだ」のCDを聴く。
小三治は弱者の描写が実にうまいが、この落語でらくだの兄貴分にこき使われるクズ屋も絶妙の味わいがある。
70分に及ぶ大ネタであるが、徐々に熱気が高まっていき、どんどん引き込まれていく。一期一会の名口演。
柳家小三治の落語「文七元結」のCDを聴く。人情噺の代表作であるが、笑わせどころと泣かせどころのバランスの見事さが、小三治の語りで浮き彫りになる。小三治がそれぞれの人物に寄り添い演じる様に感じ入る。
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