プロジェクト・ヘイル・メアリー

 この小説を何の予備知識もなしに読めたのは幸いだった。主人公はなぜか未知の空間におり、徐々に過去を思い出していく。やがて、自らが人類の救出に深く関わることを自覚していく。現在と過去をいきつ戻りつしながら、壮大なストーリーが展開されていく。

 主人公は多くの科学者と出会い、話し合う。個性的な科学者たちのキャラクターも良いが、そこで交わされる話がまさしくサイエンスで、その内容は実に興味深い。SFの醍醐味をじっくりと堪能できる。

 映画では描かれていなかったが、小説のちょうど真ん中あたりにある気象学者のエピソードは胸にしみた。この物語は、良質なエピソードの積み重ねで読者を飽きさせない。

 中盤以降の怒濤の展開は、未知のものに対するワクワク感と科学で難題を乗り切ることの連続で進んでいく。まさしく科学が推進力になっている作品である。
 そして、終盤の叙情も胸に迫る。読み終えた後に、「しあわせ」を3度叫んでいることだろう。

 サイエンスが横溢する上に、温かみに満ちた稀有な本格SF。

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

プロジェクト・ヘイル・メアリー 下

アニパ

 上松美香がアルパによって自らが好きなアニメーション音楽を演奏したCD「アニパ」。
 とにかく音色と旋律が素晴らしい。特に、「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」などの久石譲の音楽は、ストリングスの調べにより旋律美がいっそう引き立つ。
 「フランダースの犬」「キャンディ・キャンディ」「キューティーハニー」などの渡辺岳夫の音楽も、そのたおやかで叙情豊かな特質をよく伝えている。
 変化に富んだ薫風に身をゆだねているような、ひたすらに心地よいアルバム。

アニパ 上松美香

たそがれ酒場

 スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーがナンバーワンと讃えた映画「たそがれ酒場」。若き日の丹波哲郎が圧巻の存在感を放つ、内田叶夢監督の傑作。

たそがれ酒場

素数に憑かれた人たち

 「ゼータ関数の自明でない零点の実数部はすべて1/2である。」

 「素数に憑かれた人たち」は、数学における最も重要な未解決問題「リーマン予想」について、その内容と、解決に挑んだ人々の姿を描いた書。奇数章には数学の解説が記され、偶数章には背景となる歴史や伝記的な話題が述べられている。
 現代数学においても難問であるリーマン予想を、平易に記述し、伝えようとする工夫が素晴しい。数学教育においても、参考になる点が多い。また、数学者が生きた時代背景やエピソードが興味深い。単なる数学の解説書ではない広がりがあり、読み物としても飽きさせない。近現代における数学者の列伝としての側面も持っている。
 歴史の縦糸のひとつとして数学が息づいている様を見事に描いた本。

素数に憑かれた人たち リーマン予想への挑戦【電子書籍】[ ジョン・ダービーシャー ]

夜と霧

 アウシュビッツの強制収容所という、死と隣り合わせの極限状況の中で、「夜と霧」の著者フランクルは人々の心理を冷静に見つめる。その真摯さが、人間に対する敬意と希望を与えてくれる。
 何度読んでも感銘を受け、自らの生きる意味を考えさせてくれる。
 人類の重き遺産ともいうべき、名著中の名著。

レミーのおいしいレストラン

 「誰にでも料理はできる」

 料理好きのネズミが活躍するディズニー・アニメ「レミーのおいしいレストラン」。ブルーレイで見ると、ネズミの毛並み一本一本まではっきりとわかり、CGの表現力に感嘆する。ことに、料理や厨房の精緻な表現と、パリの街の美しさが素晴しい。
 前向きなメッセージをベースにした、友情、恋愛、陰謀、成長、奇跡、笑いあり涙あり、フルコースのアニメーション。

WALL・E/ウォーリー

 人類がいなくなった地球で、ゴミを収集する作業を一人続けるロボット、WALL・E(ウォーリー)の冒険を描く長編アニメーション”WALL・E/ウォーリー”。ピクサーとディズニーによる作品であり、個性豊かなキャラクターとよく練られたストーリーにより、素直に楽しめる。
 ゴミの緻密な表現と、荒廃した都市のスケールの大きなCGに圧倒される。また、ロボット同士の交流では、最初は台詞がなく、仕草のみで表現しているところに、ピクサーCGの職人的なこだわりと確かな技術を感じる。
 情感が静かに伝わるいい雰囲気の前半から、後半、一気にスピード感が増すストーリー展開も高揚感があって良い。
 第81回アカデミー賞長編アニメ映画賞の他、数々の賞に輝く快作。

白雪姫

 1937年に公開された、世界初のカラー長編アニメーション「白雪姫」。今見ても実に素晴らしい。太平洋戦争前の時代にこの作品が作られたことには、驚嘆を禁じ得ない。
 動物やこびとの動きのなめらかさが、名曲に完全に同期して動く様は何度みても引き込まれる。
 夢の世界に誘う永遠の名作。

「科学者の楽園」をつくった男

 世界でも最高水準の研究を行っている日本が誇る研究機関「理化学研究所」。その波乱の歴史を、多くの科学者たちの足跡や歴史的背景を含めて描く本。
 ロンドンでの、夏目漱石とグルタミン酸ナトリウムの発見で知られる池田菊苗との出会いから始まり、第三代所長、大河内正敏のもとで科学研究が多彩に花開く過程が圧巻の筆致で語られる。
 長岡半太郎、本多光太郎、仁科芳雄、寺田寅彦、湯川秀樹、朝永振一郎など、多くの科学者たちの生涯にもふれられており、日本の近代科学史を俯瞰する書としてもたいへん興味深い。
 科学と社会との接点、科学と文学との関わりをも示唆した、知的興奮をよびさます重層的な著作。 

自助論

 「天は自ら助くる者を助く」

 サミュエル・スマイルズの世界的ロングセラー「自助論」。努力・勤勉・忍耐・独立・誠実の重要性を、膨大な例で語る著作。1858年、イギリスが世界最強の国であった時に書かれた本であり、文章に勢いを感じる。
 日本では明治4年に中村正直の訳により「西国立志編」として出版され、100万部の超ベストセラーとなった。その独立と向上をうたった文章は明治の青年たちを奮い立たせ、近代化を推進する精神的な支柱のひとつとなった。
 自助論は、150年の時を経てなお多くの人に読まれている。この本を「古い」とか、「あたりまえ」と一蹴するのは簡単である。しかし、本気で向き合って初めて見えるものが世の中にはたくさんある。

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