柳家小三治が、単身ニューヨークにわたった体験を語る。英語をマスターするには、一人旅をしなくてはと出かけた先での失敗談の数々。大まじめで取り組んでいる様が、逆に面白さを引き立てる。
「新婚旅行ハリケーン」は、クレヨンしんちゃん映画の27作目。オーストラリアを舞台にした冒険活劇。
母みさえが主役となって活躍する。みさえのためのストーリーともいえる。
「マッド・マックス」のパロディなど、遊び心も満載。
どんな状況でもひまわりは家族に守られている。楽しくも心温まる作品となっている。
2020年、多くの逝去された著名な方々がおられたが、とりわけ感慨深かったのは11月12日に亡くなられた小柴昌俊氏の訃報である。氏はニュートリノ天文学を開拓し、2002年にはノーベル物理学賞を受賞された。
実際にお会いしたのは、大学の研究室における先輩の結婚式で仲人としていらしたときである。帝国ホテルでの式に参加し、良き時を過ごすことができた。
その先輩とのご縁もあって、2009年3月、スーパーカミオカンデの内部を家族で見学することができた。
岐阜県の山中にある施設の入口が最初わからず、ガードレールもない急峻な崖沿いの狭い道をどんどん上っていった。遥か下に川が見える崖から転落する恐怖におびえながら車を運転し、頂上に近い所で行き止まりになってようやく行き過ぎたことに気付き引き返した。
施設の入口は、シャッターがひとつあるだけの何の変哲もない寂しい場所であった。ほどなくシャッターが開き、東大の先生が運転する専用車両が出てきてホッとした。
子どもたちは宇宙線研究所で借りたヘルメットをかぶり、懐中電灯を手にして冒険気分で楽しそうであった。
錆びたバンで鉱山跡の奥深くまで乗っていき、ようやく施設にたどり着く。内部には狭い部屋があり、壁を大きく占めるモニターには色とりどりの点が明滅していた。地下の巨大な水槽に据え付けらている光電管で捉えた素粒子を示すものであった。宇宙の真理を解明する試み、純粋に知的な営みが静かになされていることに感銘をおぼえた。基礎科学の重みを実感した体験であった。
2020年はコロナ禍でイレギュラーなことが多い1年であった。それだけに、普遍的な科学への関心を高めることの重要性を痛感する年であった。
「ミクロとマクロは繋がっている」
小柴氏の言葉は、今も大切な視座を与え続けてくれる。
「世界の中心で愛をさけぶ」の著者、片山恭一が、アメリカ西海岸を旅しながら綴ったエッセイ「世界の中心でAIをさけぶ」。
人工知能などのデジタルテクノロジーが支配する人間社会は、どこに向かうのか。テクノロジーの中心であるシアトルを出発し、マウント・レーニアなどの自然豊かな地をめぐり、人類の未来に思いをはせる。そこでは、現在広がりつつあるテクノロジー中心社会の様相と、人々の営みに対する考察が該博な知識をもとに展開される。
テクノロジー論と気楽な旅が織りなす、奥行きのあるエッセイ。
鉄道ファンである若者の友情と恋を描いた映画「僕達急行 A列車で行こう」。森田芳光監督の遺作となった。
森田監督は、「家族ゲーム」で大きく注目を集めた。「の・ようなもの」「そろばんずく」「失楽園」「キッチン」と様々な作品を手がけていた。実験的な作品も多く、好き嫌いが分かれるかもしれない。個人的には、宮部みゆき原作を読んだ後に劇場で見た「模倣犯」があまりにひどい感じたので、それ以来ほとんど鑑賞することはなかった。 しかし、この「僕達急行」は、鉄道への思いが伝わり、素直に楽しめる作品になっていた。
瑛太と松山ケンイチ主演の映画で、さりげない友情が爽やかであった。ピエール瀧の役も印象的。
本編に登場する列車の車両数は20路線、80モデルと言われている。本州、九州各地での撮影もたいへんであったろうが、内心は嬉々としてこなしているような雰囲気が伝わる。
公開は、森田芳光監督が逝去して3ヶ月後であった。監督のオリジナル脚本であり、思いが結実した作品。
芸能レポーターを通して、世相を描いた内田裕也主演、脚本の映画「コミック雑誌なんかいらない!」。滝田洋二郎監督による1986年公開作品。
ロス疑惑、豊田商事事件など、当時の事件をはさみながら芸能レポーターの実際が生々しくもシニカルに描かれている。本物のレポーター、実際に事件に関わった人々も登場し、スキャンダラスなキャスティングと展開で独特の存在感を放つ。
1980年代の熱気と混沌を伝える異色作。
2018年2月11日に行われた群馬県高等学校ギター・マンドリンコンクールを聴きに大泉町文化むらに行く。県内7校が参加し、全国大会出場を競った。
どれもレベルが高い演奏であったが、前橋女子高校が交響組曲「日本スケッチ」第4楽章で最優秀賞に輝いた。抒情的な部分がよく表現され、最後は炎のような演奏で締めくくり納得の1位であった。
第2位は久保田孝作曲の舞踏風組曲第3番を演奏した高崎高校。厳しい練習の積み重ねで実力を高めていることがうかがえた。力強い演奏で、トリを飾るにふさわしい音楽であった。
館林女子高校と高崎女子高校が共に久保田田孝作曲の舞踏風組曲第2番を演奏。結果的には館林女子高校が3位となったが、個人的には高崎女子高校の演奏が気に入っていた。天女の羽衣がふわりとかかるような繊細な表現もあり、微妙なニュアンスが良く表出されていた。館林女子高校の演奏はやや荒削りで必死な感じが伝わってきたのだが、それを洗練した形にしたのが高崎女子高校の演奏という印象を受けた。しかし、審査員の評価では高崎女子高校が館林女子高校を越えなかったのは、久保田孝の曲の特質や実相に館林女子高校の演奏がより迫っていたからであろうか。
結果発表までの間に Marionetto による賛助演奏が行われた。湯淺隆、吉田剛士両氏によるアコースティック・ユニット。ポルトガルギターを弦楽器と打楽器両方の役割をもたせて自在に奏する様がかっこよかった。ギリシャの小さい弦楽器で演奏する「日曜はダメよ」が高校生にもたいへんうけていた。やはりプロの演奏は素晴らしい。高校生にも良い刺激になったことであろう。
帰り道の車の中で、長男が会場で買ったMarionetto のCDを聴く。群馬の山並みをオレンジ色に染める夕景に音楽がよく合っていた。
ぽるとがる幻想
マリオネット
2017年10月13日、高崎駅前に、ファッションビル「高崎オーパ」が開業した。それにちなみ、超オススメの本を紹介したい。
「何事であれ、
ブラジルでは驚ろいたり
感嘆したりするとき、
「オーパ!」という。
開高健の名エッセイ「オーパ!」の巻頭言である。
大魚を釣るため、アマゾン河をさまよった一大紀行。そこには、ピラーニャ、ドラド、ピラルクーなど怪魚・巨魚との闘いが、迫真の写真と共に熱く刻まれている。
アマゾン河流域の人々、風土、自然があますところなく綴られ、胸躍る紀行文であると同時に、透徹した眼で書かれた文明論でもある。
大河16,000km、60日間のフィッシィングの旅を濃密な文で鮮やかに描く驚嘆のエッセイ。「オーパ!」
オーパ! (集英社文庫 122-A)
開高 健 高橋 昇
TBSラジオで1991年4月から2015年9月まで土曜日の朝に放送された生放送番組「土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界」。その中から「旅」をテーマにした永六輔のトークを厳選した2枚組のCD。
旅先の出来事が軽妙に語られ、楽しく聴ける。永六輔とアナウンサーの何気ないやりとりなのだが、幅広い知識と経験に基づいた知的なトークには、思わず引き込まれる。
放送初回の所信表明ともいえる語りは圧巻である。その後のトラックはおおらかさと優しさに満ちており心地良い。大橋巨泉の懐の深さを感じる饒舌もいい。
人生の豊かさを感じさせてくれるCD。
土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界 特選ベスト~泣いて笑って旅物語篇~
ラジオ・サントラ 永六輔
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