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モーツァルトのレクィエム

 夕暮れが深まる中、田圃の中の一本道を走る車中で久しぶりに合唱曲を聴く。リッカルド・ムーティ指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏するモーツァルトのレクィエム。

 次々とあふれ出る豊かな曲想に久々にふれ、これほどドラマチックだったのかと新鮮な思いがした。レクイエム-死者を安んじる鎮魂の曲であるはずだが、前半はオペラのような激情と迫力を感じる。

 涙の日-Lacrimosa は、静かな感動を覚える。この曲は特に感慨深い。最初に歌ったのは、上越新幹線が上野駅から東京駅まで延びたことを記念しての、東京駅でのコンサートであったと思う。なぜそのシチュエーションで曲がLacrimosaだったのか、覚えていない。

 なにより忘れがたいのは、群馬交響楽団を質の高いオーケストラに育てた丸山勝広さんの楽団葬の時に歌ったLacrimosa だ。リハーサルのときに、小澤征爾さんが、「みんなで丸山さんに、僕たちの曲を聴かせてあげましょう」と言った言葉がずっと印象に残っている。本番では、山本直純さんの指揮で、思いを込めたLacrimosaが会場をふるわせた。小澤征爾さんも横で共に歌ってくださったようだ。

 ムーティの指揮による清冽な演奏は、夏の夕暮れ雲へ溶け入るように澄んだ気持ちにさせてくれた。

モーツァルト:レクイエム
ムーティ(リッカルド) モーツァルト ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 スウェーデン放送合唱団
B000066ABM

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