中坊公平・私の事件簿
「森永ヒ素ミルク中毒事件」「豊田商事事件」など、社会を揺るがした事件の顧問弁護士となり、住専不良債権の整理回収機構社長を務めた中坊公平。彼が担当した事件の中から、節目となった14のケースを取り上げ、「事件の概要」と「教訓と思い出」を語った書。
あるときは使命感に燃え、あるときは義憤にかられ、熱意と誠意をもってそれぞれの事件に取り組んできたことが伝わってくる。
「事件を繙(ひもと)く本質は法律にあるのではなく現場にあります。現場の中に小宇宙があり、現場に神宿る-私はそんなふうに考え、今日に至るまで「現場主義」を貫いています。」
現場に何度も足を運び、そこから本質をつかみ取り、粘りとひたむきさで問題の打開を図ろうとする姿が具体的に記されている。淡々とした記述だが、どの言葉も現実に立脚した深みと力がある。
特に、「森永ヒ素ミルク中毒事件」の冒頭陳述には心を揺さぶられた。
真摯に社会問題に向かう弁護士という仕事の尊さと難しさを感じさせられた書であった。
中坊公平・私の事件簿
中坊 公平
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