井上靖 闘牛
井上靖の芥川賞受賞作品「闘牛」を日下武史が朗読するCDを聴く。戦後間もない大阪の新聞社が社運を賭けて企画した「闘牛」に関わる人々を描いた作品。
企画を立ち上げた編集長を中心に、利権に群がる人々や主人公を見つめる女性の心理を、透徹したタッチで巧みに描写する。孤独と叙情が独特のゆれを持った言葉で綴られており、日下武史が心憎いまでにうまいアクセントと間で表現している。緻密に構成されたストーリーと名人芸ともいえる語りで、3時間を越える朗読であるにもかかわらず、飽くことなく聴き入った。昔の芥川賞作品の凄みを伝える名編。
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