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作曲家・渡辺岳夫の肖像

 「アルプスの少女ハイジ」「白い巨塔」など、テレビの黄金時代に数々の音楽を作曲しアニメやドラマに華やかな彩りを与えた渡辺岳夫。「作曲家・渡辺岳夫の肖像」は、その人物像を、親しく仕事をした人々や本人のエッセイから浮かび上がらせた本。

 「キャンディ・キャンディ」など渡辺のヒット曲を数多く歌った堀江美都子は、音楽の魅力について本書の中で様々に語っている。
 「人間の感情のひだにフッと触れるようなメロディーがあるんですよね。それを聴くといろんなことを想い出したりします。」
 「私の得意なところも苦手なところもご存知の上で、ここはきっと上手く歌う、ここはちょっと苦手っていう箇所の入った曲を作ってくださいました。得意なところだけで作ってくれないんですよ。
 歌っていうのは完璧に歌っちゃったら誰もいいって思ってくれないんだと。コンプレックスの部分があるから人間らしさがあって、みんなに愛される歌になるんだよ。完璧を求めるんじゃなくて人に感動を与えられる歌を歌うんだよと教わったんです。」

 また、キューティーハニーなど、艶のある曲を歌った前川陽子は、歌っている様子から本人の孤独感など、渡辺に全部見抜かれていたと記されている。

 渡辺はドラマの流れを大事にし、「白い巨塔」では「ここはあえて音楽を入れないようにしましょう」とプロデューサーの小林俊一によく話していたという。

 多忙を極め仕事に疲れ果てていたとき、大切な「作曲ごころ」を取り戻したのは、「アルプスの少女ハイジ」であったという本人のエッセイは心にしみた。あの素晴らしいオープニングの音楽は、渡辺自身の復活の讃歌でもあった。

 渡辺の仕事はテレビだけでなく、舞台の音楽や企業のイメージソングにまで及ぶ。その作曲数は優に一万を超える。本書の巻末に載っている渡辺が生み出した曲のリストは、一部であるにもかかわらずその膨大さに圧倒される。
 昭和の文化、日本のメディアを支えた巨匠の姿を伝えてくれる貴重な書。

作曲家・渡辺岳夫の肖像 ハイジ、ガンダムの音楽を作った男 (P-Vine Books)

渡辺岳夫の世界 ドラマ編

 渡辺岳夫が作曲したアニメ音楽は知名度が高いが、それは彼が生み出した曲の10%にも満たない。9割以上は、ドラマや舞台の音楽が占めている。

 「白い巨塔」「非情のライセンス」「愛と誠」「虹のエアポート」「新選組血風録」「俺ぁ三太だ」「赤かぶ検事奮戦記」などなど、数々のドラマの音楽を手がけ、どのメロディーも印象に残る。
 初期作品としては、「さぶ」の音楽にはモダンさと懐かしい響きが融和し、暖かさの中に高揚感がある。隠れた名曲である。

 ドラマの曲は、どれも音楽を聴くだけでふわりと映像の雰囲気が浮かび上がる。渡辺は、脚本を読みこなし、場面場面に応じた音楽を創り上げていった。そのため、登場人物の心情や舞台の空気を取り込んだ音楽になっているのだ。

 渡辺岳夫が生涯取り組んだ音楽は、アニメやドラマの進行に合わせて使われるため「劇判」とよばれ、コンサート用の曲とは一段格下の音楽と見られていた。しかし、その曲は、映像と切り離して演奏だけを聴いても実に立派で、繰り返し聴きたくなる。それは、人々の喜怒哀楽を内包した優しさと懐の深さを持った音楽だからであろう。

One Man's Music -作曲家 渡辺岳夫の世界-ドラマ編
渡辺岳夫
B003D8ZX1W

渡辺岳夫の世界 アニメ 特撮編

 「アルプスの少女ハイジ」「巨人の星」「アタックNo.1」「キャンディ・キャンディ」「キューティーハニー 」「フランダースの犬」「天才バカボン」「機動戦士ガンダム」

 アニメの名作をただ並べたように見えるが、どれも主題歌が素晴らしく、オープニングの映像が音楽と共に自然と浮かんでくる。これらの主題歌は全て同一の作曲家によって生み出された。
 渡辺岳夫、その人である。

 印象深いメロディーと一流のアレンジによる曲そのものが見事だが、渡辺岳夫は堀江美都子、前川陽子、大杉久美子などの歌手を自ら指導し、その能力を最大限に引き出した。曲と歌唱が互いに影響しあい、人々の記憶に残り歌い継がれる主題歌が生まれたのだ。

 一例をあげれば、「かぐや姫先生のうた」という菊容子主演のドラマ『好き!すき!!魔女先生』のオープニングテーマは、月明かりのような限りなく優しいメロディーと堀江美都子の伸びやかな歌声で、音楽の力をまざまざと感じさせてくれる。この曲を聴くたびに自然と涙が流れる。

 アルバム「渡辺岳夫の世界-アニメ 特撮編」は、36曲を収録した2枚組CDの他、「巨人の星」から「ハロー!サンディベル」まで19のオープニング映像を収録したDVDを含んでいる。渡辺岳夫のアニメ音楽の豊かさを堪能させてくれる、まさに愛蔵版。

One Man's Music -作曲家 渡辺岳夫の世界-アニメ 特撮編
渡辺岳夫
B003D8ZX1M

身近な”?”に答えます

 「チョコレートはどんな効果があるのか?」「なぜ乗り物に酔うのか?」「ホタルはなんのために光るのか?」など、身の回りの疑問を科学的に説明した本。科学雑誌Newtonの別冊であり、最近の知見も盛り込み、分かりやすく記述されている。
 子どもが図書館から借りてきたが、よい内容なので購入する。身近な事柄から科学に興味を持たせられる良書。

身近な”?”に答えます―「目からウロコ」が盛りだくさん (NEWTONムック)
4315518123

ミュンシュ チャイコフスキー:交響曲第4番&ヴァイオリン協奏曲

 シャルル・ミュンシュ指揮、ボストン交響楽団によるチャイコフスキー交響曲第4番とヴァイオリン協奏曲のCDを聴く。
 1955年、59年の演奏だが、驚くほど音が良い。 チャイコフスキー交響曲第4番では、感傷的で暗鬱な雰囲気は一掃され、明快で華麗な音楽になっている。
 ヴァイオリン協奏曲では、ヘンリク・シェリングのヴァイオリンの音色が暖かく、心地よい響きで冒頭から引き込まれる。ここでのミュンシュによる演奏は素晴らしく精彩を放っている。木管の優しい音色がヴァイオリンに和して快く、一転して輝かしい響きに変わるなど、繊細さと力強さを併せ持った熱演。

チャイコフスキー:交響曲第4番&ヴァイオリン協奏曲【Blu-spec CD】
ボストン交響楽団 ミュンシュ(シャルル)
B002EBDNHA

城山三郎講演

 城山三郎が1974年に行った講演を記録したCDを聴く。「鈴木商店」を率いた金子直吉、近代日本の礎を築いた渋沢栄一、清廉な姿勢を貫いた広田弘毅、3名の人間的魅力を語る。
 各人の生涯は、小説「鼠」「雄気堂々」「落日燃ゆ」に詳しいが、城山三郎自身の肉声で語られる生き様に改めて感銘を覚える。

城山三郎講演 第1集 (新潮CD 講演)
城山 三郎
410830201X

ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番

 マルタ・アルゲリッチのピアノ、イェルク・フェルバー指揮、ハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団によるショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番、ハイドン:ピアノ協奏曲ニ長調の演奏を聴く。 ショスタコーヴィチの協奏曲はピアノとトランペットによる変化に富んだ作品。ユーモアと批判精神が混在した曲を、アルゲリッチは生気溢れるピアノで華やぎを与えている。 
 ハイドンでは、一転して優美な雰囲気をたたえる。躍動感溢れるリズムときらめく音色で、これほど良い曲があったのかと驚かされる。

ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番
ショスタコーヴィチ フェルバー(イエルク)
B000EMH85E

アマルフィ 女神の報酬

 フシ゛テレヒ゛開局50周年記念作品「アマルフィ 女神の報酬」。オール・イタリアロケを敢行した美しい映像に加え、主題歌にはサラ・フ゛ライトマンを起用するなど、音楽にも力が入っている。さらに豪華な俳優陣とくれば面白くないはずはないのだろうが、やはりドラマは脚本が全てを決する。
 場当たり的な緻密さを欠いた犯行計画、貧弱な動機などが気になる。が、そういったことを無視して楽しむのがフジテレビ制作映画の見方なのだろう。織田裕二と佐藤浩市などの顔ぶれがそろい、映像と音楽がきれいならそれで文句あるかと言わんばかりの映画。

アマルフィ 女神の報酬 スタンダード・エディション [DVD]
B002PHBIRU

サラ・ブライトマン・クラシックス

 「アヴェ・マリア」「 ピエ・イエス」など、豪華なサウンドをバックに歌い上げるサラ・ブライトマンのアルバム。大ヒットナンバー「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」のソロ・ヴァージョンも収録された充実の1枚。

アヴェ・マリア~サラ・ブライトマン・クラシックス~
フェロー サラ・ブライトマン
B00005RGX8

パニック・ルーム

 ジョディ・フォスター主演のサスペンス映画。緊急避難用「パニック・ルーム」のある家に引っ越してきた母娘におこる悲劇を描く。冒頭のタイトルや前半のカメラワークが良い。思ったより気軽に見られる作品。

パニック・ルーム [DVD]
B0026R9HMW

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