火花
「漫才は面白いことを想像できる人のものではなく、偽りのない純正の人間の姿を晒すもんやねん。」
又吉直樹の小説「火花」。うだつの上がらない若い芸人が、天才肌の漫才師に出会い、価値観を揺さぶられてゆく。
漫才を素材とし、笑いを追究し言葉と向き合う求道の生活が綴られている。笑える場面より、全体が文学的な重みに覆われている。太宰治の小説のように、ユーモアをたたえつつも人生の晦渋にすりつぶされそうになる哀調に満ちている。
常識にとらわれない言動を希求するあまりに生じる切なさが横溢する芥川賞受賞作。
火花 (文春文庫)
又吉 直樹
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