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戦雲の夢

 長宗我部盛親を描いた司馬遼太郎の小説「戦雲の夢」。
 土佐の領主、長宗我部盛親は関ヶ原の戦いで西軍に属するが、敗走する。領国を没収され、浪人に身を落とすが…。
 四国に版図を広げた長宗我部元親を描いた「夏草の賦」の続編にあたる作品。元親の四男にあたる盛親の命運が他勢力との関わりを含めて丁寧に綴られている。
 合戦シーンよりも、女性との関わりにページが割かれている。特に、関ヶ原後の蟄居の描写が濃密であり、心理小説としての趣も強い。
 英雄とは言いがたい主人公の生き様であるが、自らの人生に重ねて胸に迫る部分も多かった。  乱世に翻弄された武将の生涯を、円熟の筆で活写する歴史小説。

司馬遼太郎 戦雲の夢

夏草の賦 下

 司馬遼太郎の「夏草の賦」下巻では、織田信長、豊臣秀吉と、権力者と対峙する長曾我部元親の姿を描く。
 土佐から四国全土、天下を伺った男の生涯を通し、人の情熱と進退の妙を、清爽とした筆運びで綴った歴史小説。

夏草の賦 [新装版] 下 (文春文庫)
司馬 遼太郎

夏草の賦 上

 司馬遼太郎の「夏草の賦」は、四国の長曾我部元親を描いた小説。
 斉藤利光の娘、奈々が嫁ぐいきさつから語り初め、ユーモラスな雰囲気を漂わせながら知謀の将、元親の実像に迫る。
 四国を席巻した風雲児の活躍を小気味よく描く歴史ロマン。

夏草の賦 [新装版] 上 (文春文庫)
司馬 遼太郎

ブレンダンとケルズの秘密

 9世紀、アイルランドの修道院で暮らす少年ブレンダンを主人公とする長編アニメーション「ブレンダンとケルズの秘密」。
 修道院はヴァインキングからの襲撃を守るために砦が築かれつつあった。伯父である院長からは砦より外に出ることを禁じられていたが、ブレンダンは本を書くためのインクの実を採取しに、森へと出かける。そこで、不思議な少女アシュリンと出会い、運命の歯車が回り始める。
 中世絵画風の背景の中で、少年が生き生きとした動きを見せる。どのシーンも一幅の絵画のような趣があるが、とりわけ「ケルズの書」の描写はあまりに見事。複雑に交錯したケルト文様が一斉に動く様は圧巻。
 緻密な様式美に彩られた鮮やかなアニメーション。  

苦役列車

 日雇い青年の日常を独特の文体で描いた西村賢太の小説「苦役列車」。
 港湾での荷役労働に従事し、一人暮らしをする北町貫多は、無為の日々を送っていた。ある日、爽やかな風貌の専門学校生と出会い、貫多の日常にわずかな変化が生じていく。
 先の見えない日常におかれた若者がリアルに描かれ、自らが苦境にあるときには逆に励まされる思いがあった。苦役の中、一点の拠り所が心にしみる。
 2010年下半期芥川龍之介賞受賞作品。

カラスの親指

 道尾秀介の小説「カラスの親指」を原作とする映画。阿部寛主演、伊藤匡史監督による2012年公開映画。
 サラリーマンから転落したベテランの詐欺師タケは、さえない男テツとコンビを組んで仕事をしていた。ある日スリの少女を見逃すが、それがきっかけとなり奇妙な共同生活が始まる。
 トリッキーであるが、コメディとサスペンスがほどよく同居し心地よい映画。

カラスの親指 by rule of CROW's thumb

パラサイト 半地下の家族

 半地下の薄暗いアパートに住む家族と、高台の高級邸宅の住人との接点を描いた映画「パラサイト 半地下の家族」。ポン・ジュノ監督による2019年公開作品。
 薄汚い半地下のアパートに住む若者ギウは、名門大学に通う青年ミニョクが海外留学する間、家庭教師を代わりに行う依頼を受ける。大学生になりすまし、高台の高級住宅を訪れたギウは、夫人の信頼を得る。半地下の4人家族は、それをきっかけとして徐々に邸宅と関わっていく。
 韓国社会の垂直分断を力業で描いた意欲作。
 第72回カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞、2020年アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞など数多くの受賞歴をもつ作品。

パラサイト 半地下の家族(字幕版)

歌姫~バラード・ベスト~

「M」プリンセス プリンセス、「瑠璃色の地球」松田聖子、「時代」薬師丸ひろ子、「恋におちて-Fall in love-」小林明子、「Believe」岡村孝子、「シルエット・ロマンス」大橋純子、「聖母たちのララバイ」岩崎宏美、「ラヴ・イズ・オーヴァー」欧陽菲菲、「フィーリング」ハイ・ファイ・セット、「かもめはかもめ」研ナオコ、「君と歩いた青春」太田裕美 など、女性ヴォーカルのラヴ・ソングを集めた2枚組CD。
 時代を超えて歌い継がれる名曲、繊細な歌唱に心癒やされる。

マーラー交響曲第7番

 「夜の歌」とよばれる、マーラー交響曲第7番は、ベルリオーズの「幻想交響曲」よりも幻想的な雰囲気に満ちている。5楽章構成で、真ん中の「影のように」と記された奇妙なスケルツォをはさみ、第2楽章と第4楽章に「夜曲」が配置されている。この2つの夜曲の独特な雰囲気には、なんとも言えない魅力がある。
 第2楽章は、夜のとばりが降り、暗くなった森に鳥たちがさえずり、動物たちが行動をはじめるような情景がうかぶ。シンガポールに行ったときのナイト・サファリを思い出した。
 第4楽章は、月夜のもとで奏でられる愛のセレナーデ。ギター、マンドリンも加わり、様々な管弦楽法に彩られながらも、かわいらしい情緒をもった曲である。この楽章だけ聴くのもいいのではと思う。
 終楽章は、音と音とのぶつかり合いで、最初にこの楽章を聴いたときには、なんだこりゃと思った。ジャングルでゴリラたちが暴れるような、めまぐるしく出し物が変わるサーカスのような、キングコングがやってくるかのような、ウッハ、ウハウハウッハッハーなやぶれかぶれの感じがたまらない。

 マイケル・ティルソン・トーマス指揮、ロンドン交響楽団による演奏は、このあまりに多くの要素が詰め込まれた交響曲を、自在なテンポと完璧なコントロールではっきりと形を示してくれる。そのため、安心してこの多様な音響の世界に浸ることができた。

 それにしても、マーラーの音楽は、本当にいろいろな楽しみ方ができるものだ。

マーラー:交響曲第7番
ロンドン交響楽団 トーマス(マイケル・ティルソン)

トルコ行進曲~アファナシエフ・プレイズ・モーツァルト

 アファナシエフによるモーツァルト ピアノソナタ第9番、第10番、第11番のCD。悠然としたテンポでありながら、決然とした推進力を持っている。一音一音が研ぎ澄まされた演奏。

トルコ行進曲~アファナシエフ・プレイズ・モーツァルト
ヴァレリー・アファナシエフ

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