フォン・ノイマンの哲学

 コンピュータ、量子力学、ゲーム理論、天気予報など、現代社会を支える理論を数多く構築した天才フォン・ノイマン。本書は、その生涯と関わった人々を描きながら、ノイマンの思想の根底に迫っている。
 ノイマンの圧巻の才能に驚かされるが、関わった数学者や物理学者の略歴も紹介され、実に興味深い。ノイマンは多くの分野に関わったため、現代数学や科学を概観する内容にもなっている。
 特に、第二次世界大戦と科学者たちとの関わりは、原子爆弾開発の史実とあいまって重みをもって読み手にせまってくる。
 1900年代にいかに科学が多様な広がりをもち、実社会への応用がなされた時代であるかを如実に伝えるとともに、私生活が絶妙のタイミングで記載され独特のユーモアをも放ち読み手を飽きさせない。
 真の天才の生涯を通し、現代科学の礎を俯瞰する密度の濃い良書。 
 

フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔 (講談社現代新書)

光媒の花

 道尾秀介の連作短編集「光媒の花」。花や虫をモチーフにした6編の物語。各話は、ゆるやかにつながりひとつの世界を形作っている。
 読み手に深い哀切と癒やしを与えてくれる珠玉の作品。

光媒の花 (集英社文庫)

メッセージ

 突如飛来した宇宙船をめぐるSF映画「メッセージ」。エイミー・アダムス主演、2016年公開のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。
 世界各地に宇宙船が現れ、上空に停止する。軍は様々な学者を集め、調査を依頼する。言語学者ルイーズは、地球外生命体の発する言語を必死に解明しようとするが…。
 幻想的な宇宙船と、それに対峙する人々の圧巻のリアリティによりぐいぐいと惹きつけられる。主人公が言語学者という設定のため、知的な雰囲気をもち、映画のクオリティを高めている。
 ハードな設定とヒューマンなストーリーが融合した、SF映画の傑作。

メッセージ [AmazonDVDコレクション]

バケモノの子

「あいつのは親も師匠もいない。あいつは自分一人で強くなった。強くなってしまったんだ。それがあいつの才能であり不幸だ。」
「意味は自分で見つけろってこと?」
「そう…。一理あると思ってな。」

 細田守監督長編アニメーション「バケモノの子」。身寄りをなくした少年蓮は、渋谷の裏通りを彷徨ううちにバケモノの世界「渋天街」に迷いこむ。そこで、乱暴な武術家、熊徹と出会い、成り行きでその弟子となる。
 テンポよく進むアニメーションと、美しい背景、明るさのある絵柄、そして、深みのあるキャラクター、含蓄のある台詞。どれもが愛おしく感じる。
 やはり日本のアニメーションは楽しい。
 

バケモノの子

おおかみこどもの雨と雪

 身寄りの無い女子学生花は、大学で男性と知り合い恋をする。相手がオオカミであると知りつつ二人の子をなす。男性を失った後、花は田舎の古民家で二人の子どもを育てるが…。
 花のけなげな姿に心うたれる。自然描写があまりに美しく、この作品を何度も見たいと思わせてくれる。
 細田守監督畢生の、魂のこもったアニメーション。

おおかみこどもの雨と雪

サマーウォーズ

 ネット上の仮想世界から引き起こされた混乱に、大家族が立ち向かう映画。細田守監督が、上田にある奥さんの親類の絆に感銘を受け、日本の原風景を描くことに力点が置かれている。そのため、バーチャルの緻密な描写と、家族の細やかな情感の描写がコントラストをなし、独特の感興がある。
 雲や風景など自然の描写に対する監督のこだわりが良い方に作用し、爽やかな作品に仕上がっている。

サマーウォーズ

国語入試問題必勝法

 タイトルからは、受験参考書のようであるが、実はパロディ小説。
 丸谷才一の文章を模した「猿蟹合戦とは何か」、不思議な食堂の出来事を綴る「時代小説の特別料理」など、8編を収めた清水義範の短編集。
 なんと言っても、表題作「国語入試問題必勝法」は、国語受験の秘技をあかす抱腹絶倒の小説。あまりに面白くしかもそれらしく、真に受けてしまいそうなので受験生は読まないほうがいいかもしれない。
 解説をなんと丸谷才一が書いているが、こちらの文章も率直で、楽しめる。日本語の愉悦がつまった小説集。

国語入試問題必勝法 新装版 (講談社文庫)
清水 義範

柳家小三治 玉子かけ御飯

 柳家小三治の「マクラ」は、それひとつで新作落語のようである。「玉子かけ御飯」と「駐車場物語」の2編が収められている。玉子かけ御飯だけで、よく20分以上話せると感嘆する。「駐車場物語」は、人に対する温かい眼差しが感じられ、味わいがある。

柳家小三治トークショー 3 ~玉子かけ御飯
柳家小三治

草原の風(下)

 後漢の始祖、光武帝を描く宮城谷昌光の小説「草原の風」。下巻では、天下統一のうねりが、真の叡智をもった人物によってなされる様が鮮やかに活写される。
 吹き抜ける風のように爽やかな気を与えてくれる歴史ロマン。

草原の風(下) (中公文庫)

草原の風(中)

 王莽の政治は混迷を極め、各地で反乱が勃発する。劉秀、後の光武帝は兄と共に決起し、戦いを重ねていく。
 後漢王朝の始祖、光武帝を描く宮城谷昌光の小説「草原の風」。中巻では、劉秀の叡智に惹かれて多くの人々が集まってくる様が、戦国のダイナミズムの中で情感豊に描写される。

草原の風(中) (中公文庫)
宮城谷 昌光

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