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アポロ13

 1970年4月11日、アポロ13号は、ジム・ラベルを船長とした3人の宇宙飛行士を乗せて月に向かって打ち上げられた。しかし、月を目前にして酸素タンクが爆発し、船内の燃料、電力、酸素はいずれもゼロに近いレベルに落ちていった…。

 ロン・ハワード監督の映画、「アポロ13」は、実際にNASAが遭遇した月面探査ロケットの事故と、幾多の難問を克服して3人の乗組員たちを地球に帰還させるまでの過程を極めてリアルに再現した。この映画に描かれているドラマはたいへん感動的であるが、それ以上にテクノロジーという点で、2つのことに感銘を受けた。

 ひとつは、事実を映像化するテクノロジーである。アポロ13号の発射シーンはたいへん美しいが、すべてコンピュータを駆使して作られた映像である。コンピュータといっても、手作業の部分が非常に多く、そちらの方が重要である。例えば、発射の際に飛び散る何千という氷の破片ひとつひとつをリアルに見えるよう丹念に描き、それが飛び散る軌跡はコンピュータで計算するという手順であり、本物に見えるかどうかは、氷の形と配置を決めるデザイナーの手腕によるところが大きい。

 もうひとつは、描かれているNASAのテクノロジーである。当時、ちょっとした技術計算をする時には、筆算か、計算尺を用いた。映画でも電卓は登場していない。コンピュータは部屋1つ分なければ設置できない。そんな時代に、月まで人が行ってしまうという技術力がすごい。また、不足している二酸化炭素のフィルターをつくるためにあり合わせの材料で組み立てるところが、テクノロジーの原点を見る思いであった。真のテクノロジーとは、困難や課題をいかに克服するかという挑戦の精神に基づいたものであり、NASAの人々の気概と臨機応変な姿勢は、骨太のテクノロジーをまざまざと見せてくれた。

 この実話を映画にするにあたっては、気の遠くなるような資料収集と検証作業があったことだろう。それらをひとつひとつ映像化していく過程は、まさに宇宙飛行士たちの帰還に全精力を注いだNASAのスタッフ達の苦労と重なるものがあったのではないか。NASAの人々や当時の宇宙飛行の技術に対して、同じくテクノロジーを扱う者としての思い入れが映画を製作したスタッフたちにあったからこそ、このような迫力のある映画が生まれたのではないだろうか。

アポロ13
トム・ハンクス ロン・ハワード ケビン・ベーコン
B00081U4L6

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