最後の相場師
日本の株式市場は、最近とみに活況を呈している。12月9日の東証1部の売買高は37億102万株、売買代金は4兆6494億円にのぼり、過去最高を更新した。1980年代のバブル期をも凌ぐ勢いである。
その一因として、オイルマネーを始めとした外国資本の流入があるが、国内個人投資家の急増も見逃せない。主婦や学生のにわか投資家も増えている。主婦の雑誌などに、「カリスマ投資家の必勝法」などといった記事をよく目にする。主人の給料以上の額をデイ・トレードなどで稼ぐ主婦もいるようだ。今は活況だから良いが、マーケットは甘くない。先日はみずほ証券によるジェイコム株の誤発注で、日経平均株価は300円を超す下落となった。不安定要因はつきもののマーケットには思わぬリスクもあるので、どうか家族を破滅に追い込むような投機はしないでほしいと願うばかりだ。
最後の相場師とうたわれた是川銀蔵は、16才で大陸にわたり、軍部と商売をして少年実業家になるが、倒産して日本に帰る。その後も様々な商売に手をつけ、浮沈を繰り返す。経済を徹底して勉強し、経済研究所も設立する。晩年、日本セメントなどの株で仕手戦を行い財を成し、その名を広めることになる。
その是川銀蔵ですら、欲に目がくらみ、同和鉱業の株で手痛い失敗をして巨額の損失を出す。「相場師一代」は、その是川銀蔵唯一の自伝である。にわかトレーダーには、自戒の書として読んでもらいたい。
また、津本陽が是川銀蔵をモデルに描く「最後の相場師」は、株の仕手戦の様子がリアルに描かれ、迫真の経済小説である。相場には、その人の生き様が反映されることが、如実に示されている。
相場師一代
是川 銀蔵
最後の相場師
津本 陽
コメント