免疫の意味論
世界的免疫学者、多田富雄氏が免疫現象を通して生命や「自己」の問題を語る本。
以前、ホームページの「そんなとき、こんな本」で、次のような紹介をした。
免疫とは、体の中に入った菌などを、自分と違うものと見なして攻撃し、無害なものにする生体の作用だよ。と、学生の頃に教えられたような気がします。でも、自分とそうでない物って、どうやって見分けるんでしょう。
隣の人が持っている鞄が、黒で形も同じで、間違えてしまうということがありますよね。でも、これが細胞だと、まちがえちゃった、ガハハではすまない。バイ菌だと思って攻撃したら、自分の細胞だった、で、その間違いに気づかず、ずっと攻撃し続けたら……
自己と非自己を見分ける作用、「免疫」は、アレルギー、臓器移植、エイズ、癌といった、現在の生命科学の大問題に、根本的な関わりをもっています。またそれにとどまらず、他を拒否しがちな現代社会とも無関係ではないようです。
この本は、「免疫」という最先端の生命科学を、各章ごとに興味ある切り口で語っています。それは自然に自己という哲学の命題にふれることにもなるのです。
知的興奮を与えてくれる、一般向け科学書の名著。
免疫の意味論
多田 富雄
コメント