ツィゴイネルワイゼン
20年ほど前、山懐に抱かれた町にある職場には有線放送が常時流れていた。電話機から放送される、文字通りの有線である。それは地域の貴重な情報源でもあった。突然鳴り響くツィゴイネルワイゼンの曲は、町の人が亡くなったことの知らせであった。
「美しい緑と澄んだ空気に包まれた○○町、その町を支えてこられた方のお一人、○○さんが亡くなられました…」
放送された次の日には、多くの場合、複数の生徒が忌引となった。
平成元年2月9日のことであった。夜中一人で職場で仕事をしていた時、有線放送でのニュースを聞き愕然とした。手塚治虫が亡くなったというのだ。町の人とはゆかりがないので、ツィゴイネルワイゼンは響かなかったが、自分の胸の内には、クラシック好きの手塚治虫を偲び、自然とツィゴイネルワイゼンが流れていた。
ツィゴイネルワイゼン~ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリン
ハイフェッツ(ヤッシャ) RCA交響楽団 サラサーテ
コメント