ある街角の物語
手塚治虫の生きている姿を、一度だけ直接目にしたことがある。自分が大学生の頃、池袋の文芸座で、手塚治虫のアニメーションがオールナイトで上映される際、挨拶された姿である。
上映されたのは、「ある街角の物語」「展覧会の絵」「千夜一夜物語」「クレオパトラ」「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」の5作品である。
手塚治虫は、それぞれの作品について、簡単なコメントをしていた。どれもあまり肯定的ではなく、失敗作だったというような話であった。
このオールナイトを見る前、東京工業大学の長津田にあるキャンパスに、研究室の公開があるというので出かけた。森の中にそびえ立つ研究棟に圧倒された。興味のあったコンピュータ・グラフィックスを研究している展示を見た。研究そのものの中身は忘れてしまったが、展示されていたフランスのコンピュータ・グラフィックスが印象深く、いまでも覚えている。飢餓や欲望をモチーフにした作品で、口がどんどん増殖していくアニメーションであった。今思うと、コンピュータで描く必然性は全くない気がするのだが、そのグロテスクな表現は強烈であった。
その後、手塚作品のオールナイトを見るわけだが、「ある街角の物語」には、ほっとさせられた。CGとは対極の、人肌のぬくもりを感じるアニメーションに、心底やすらぎを覚えたのだ。
学生時代、大学祭の講演者の手塚治虫さんを西千葉駅まで迎えに行き、大学内の講演会場まで案内したことがありました。
今考えると、すごい経験でした。
投稿: 齋藤 | 2006-02-15 18:21
手塚治虫氏と西千葉駅での邂逅ですか。青春の1ページという雰囲気がありますねえ。講演はどのような内容だったか、後で教えてください。
投稿: パストラーレ | 2006-02-15 21:13