喜界島昔話
ずっと気になっている話があった。それは何かの本で読み、喜界島という所の昔話であるとだけ覚えていた。十数年前に出会ったのだが、それ以来、時折記憶の底から浮かび上がってくる不思議な話であった。
インターネットで「喜界島」をキーワードに検索してみた。幸運にも、島に関する様々な書籍のリストを載せている奄美大島の書店のサイトを探し当てた。そのリストの中に、「喜界島昔話集」があった。すぐに電子メールで書店に注文した。
届いた本は表紙が薄緑色の古本で、時を経た匂いがした。編者は柳田國男である。喜界島で採録した話が107あり、気になっていた話も、やはりその中にあった。概略次のような話である。題名は「頭の木」
『ある男が蜜柑の種を飲んだら、その種が腹の中で芽を出して大きくなり、頭へ突き出てきた。それから枝が生えて実がなるようになったので、子供達が蜜柑をとりにおしかけてきて騒がしくてたまらない。
「こんなものがあるから騒がしいのだ」
と、男は蜜柑の木を引き抜いてしまった。ところが抜いた跡に大穴が出来て、雨が降る度に水がたまり、大きな池になった。こんどは子供達が魚釣りにやってきて、釣り針を男の耳に引っかけるやら目にひっかけるやらで始末におえない。これは死んだ方が楽だと言って、男は自分の頭にある池の中に飛び込んで死んでしまった。』
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