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マーラー 交響曲第8番

 声楽に重きをおいた、壮大な交響曲。大編成のオーケストラの他に、2組の混声合唱団、1組の児童合唱、ソプラノ3、アルト2,テノール、バリトン、バスの計8人のソリストを要する規模の大きさであり、「千人の交響曲」と呼ばれている。これはマーラー自身の命名ではなく、宣伝用のキャッチフレーズとして興行主がつけたもの。マーラーはこの副題を嫌っていたそうだが、初演の時には実際に千人以上の演奏者がいた。 
 曲は第1部と第2部に分かれる。第1部は、「来たれ、創造の主たる聖霊よ」というラテン語の讃歌であり、第2部はゲーテの「ファウスト」の最終場面がドイツ語で歌われる。第1部で地上から天へ呼びかけ、第2部で天へ昇り救われるファウストの霊魂により、地上と天との結びつきを表現している。
 この曲はマーラーの集大成とも言える作品で、あちこちにいままでの交響曲の片鱗が見え隠れする。更に、次に作曲される「大地の歌」の東洋的な雰囲気も、ところどころに現れている。第1部の詞の作者はマインツ大司教をつとめたマウルスという聖職者だとされており、宗教曲だが、マーラーが手がけると敬虔さはあまり見えず、大宇宙の賛美という感じだ。
 第2部は長大で、荘厳な自然描写に始まり、ゲーテの句をほぼなぞる形で進み、最後に「神秘の合唱」で、ピアニシモから徐々にクレッシェンドしていき、圧倒的な音響で終わる。この第8番の表現の多彩さと華麗さには、ハリウッドの大スペクタクル映画を見るような印象を受けた。 
 この宇宙が大伽藍に鳴り響く交響曲は、マーラーの曲の中でも唯一初演で大成功をおさめた作品。1910年ミュンヘンにおいて、作曲者自身の指揮による初演に立ち会った3000人の聴衆は熱狂し、演奏後指揮者に向かってなだれ込み、喝采は30分鳴り止まなかったようだ。マーラーの絶頂であった。
 これ以降の作品は、マーラーの生前、初演されることはなく、曲調も極度に内省的になってゆく。

マーラー:交響曲第8番
小澤征爾 ロビンソン(フェイ) ブレゲン(ジュディス)
B0009N2VTQ

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