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キュリー夫人

 息子がキュリー夫人の伝記を読み終える。いままでに同じシリーズで十冊の伝記を音読させたが、文章の豊かさという点で最も印象に残る本であった。
 ロシアの圧政に苦しむポーランドで過ごした少女時代、卒業後に遊び暮らした夢のような1年間、貧しく自由の少ない家庭教師として鬱々とする日々、パリへの旅立ちと最良のパートナー、ピエールとの出会い。それらが、ふくらみのある文体で実に丁寧に綴られ、小説のように楽しめた。
 家事や育児をこなしながらも、実験や物理化学と向き合い、ひたすら真理を追い求める毎日。苦難の末に、放射性元素ポロニウム、ラジウムを発見する。この20世紀科学のあけぼのを告げる偉業が、実直でひたむきな生活から生まれたことに清々しい感動を覚えた。
 美しいブルターニュでの描写でさりげなく幕を閉じ、余韻が残る。伝記の中でも、ひときわ文学的香気を放つ名著。

キュリー夫人―輝く二つのノーベル賞
ドーリー
4061475053

インドの衝撃 2・3

 NHKスペシャル「インドの衝撃」第2回「11億の消費パワー」では、経済発展により、新たな消費層が急拡大する様が取り上げられた。スーパーやショッピングモールが次々と建設され、インドの富裕層や中間層がこぞって買い物をし、ライフスタイルが変化していく。貧困層にもテレビが普及しはじめ、映像から購買意欲が刺激されていく。

 第3回「台頭する政治大国」では、アメリカや中国との外交戦略と内政問題を描く。インドは、各国の政財界との多様なネットワークを駆使し、大国を牽制しつつ巧みな交渉を繰り広げる。
 一方、内政面では農村の貧困という大きな問題を抱えている。経済発展により格差も急激に広がっている。農村では、不作によって生じた借金を返すことができず、自殺をする人々が後を絶たない。

 インドは多くの矛盾をかかえる国ではあるが、急拡大する経済と国際社会への発言力、次々と輩出される頭脳集団によるIT立国などパワフルな変貌を遂げている。その変化は今後、日本にも更なる影響を及ぼすであろう。

NHKスペシャル インドの衝撃 第2回
NHKスペシャル インドの衝撃 第3回

インドの衝撃

 NHKスペシャル「インドの衝撃 第1回 わき上がる頭脳パワー」を見る。インドの頭脳立国戦略を描くドキュメンタリー。
 インド工科大学”IIT”では、学生に徹底的に考えさせる教育方針を持っている。模範解答を与えるのではなく、常に答えにたどり着く方法を複数考えさせる。
 小学校での教育においても、いかに数学を楽しく学ぶか、どのように法則を見つけさせ、考える力を養うかに力点が置かれている。
 インドでは、長年、紙とペンだけで考えるしかない環境であったがために、数学や物理などを得意とする人材が多く輩出された。頭脳が最も大きな資源であり、その強みが最大限に生かされたソフトウェア開発は急速に発展を遂げた。

 インドのIT企業「インフォシス」は、世界500社と取引をする大企業で、人材戦略に大きな力を入れている。それを象徴するのが、5年前に360億円の費用をかけて建設した敷地面積70万平方メートルの研修センターだ。6000人が一度に研修できる施設で、優秀な頭脳集団にさらなる磨きをかけている。
 ちなみに、インフォシス・テクノロジーズは、2006年10―12月期連結純利益が前年同期比51.5%増の98億3000万ルピー(約265億円)、売上高は同44.4%増の365億5000万ルピー(約990億円)という驚異的な成長率を見せている。

 アメリカのジャーナリスト、トーマス・フリードマンは語る。
「すべては頭脳で決まるのです。もはや、地理的概念も距離も意味をなさなくなりました。テクノロジーもインフラも、どこでも誰でも同じようなものを持っています。では、違いは何かといえば、頭脳だけです。世界がフラットになったことで、インドの多くの頭脳が突然世界と繋がり、パワーが爆発したのです。」

 貧富の格差がすさまじいインド社会。しかし、頭脳を武器に世界に進出する人材は、自国の地位を高め、教育の機会を広げ、よりよい社会にしようという気概に溢れている。

 日本の教育水準は、献身的な教師に支えられ高い水準を保っている。しかし、インドのダイナミズムを見ると、現状に甘んじることなく真の学力を育む工夫や方策の必要性を強く感じる。

NHKスペシャル インドの衝撃

風林火山 第4回

 NHK大河ドラマ「風林火山」の第4回では、勘助と晴信、後の武田信玄が初めて向かい合う。晴信の父、信虎に、勘助の子を身ごもったミツが殺される。勘助は復讐心を抱きながら武田家への仕官を希望する。晴信は、勘助に復讐の念をもって仕官したことを知り、大望を持てと諭す。主役二人が出会う場面には、緊張感があり引き込まれた。
 心の支えをなくした喪失感、それが晴信との出会いに引き継がれていく。ドラマの構成の妙を感じる回であった。

ミケランジェリ ラヴェル・ピアノ協奏曲

 ミケランジェリのピアノによる、ラヴェルのピアノ協奏曲とラフマニノフのピアノ協奏曲第4番のCDを聴く。
 精妙でなおかつ確固たる造形をもった名演。

ラヴェル:ピアノ協奏曲&ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第4番
ミケランジェリ(アルトゥーロ・ベネデッティ) フィルハーモニア管弦楽団 グラチス(エットーレ)
B00005Y14J

チャングムの誓い オリジナル・サウンドトラック

 チャングムの誓いのオープニングテーマ「蒼龍」、エンディングテーマ「懐夫歌」や挿入歌を含むサウンドトラックを聴く。名シーンの数々を思い出す。

チャングムの誓い オリジナル・サウンドトラック
Alessandro Safina キム・ジヒョン
B000657QUG

ニューイヤー・コンサート2002

 小澤征爾が指揮をしたウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート2002。60年以上続くニューイヤー・コンサート史上、日本人が初めて指揮台に立った演奏。
 奏者も聴衆も実に楽しそうだ。シュトラウスの流麗な魅力がたっぷり味わえた。

小澤 & ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート 2002
小澤征爾 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
B00005YWVR

シャイニング

 スタンリー・キューブリック監督のホラー映画。心理的な恐怖はこの上ない。

シャイニング
スタンリー・キューブリック スティーヴン・キング ジャック・ニコルソン
B00005MINS

猫弾きのオルオラネ

 夢枕獏の初期のファンタジー「猫弾きのオルオラネ」。みずみずしい感性にふれ、読後感のよい作品だった。

猫弾きのオルオラネ
夢枕 獏
415030548X

屋根の下の巴里

 MASTERキートンの「屋根の下の巴里」は、考古学への情熱、師弟愛、父娘の愛がパリを舞台に描かれた珠玉の名編。アニメーションでは、パリの描写がことに素晴らしい。学問への情熱が伝わるアニメに、無二の感動をおぼえた。

MASTERキートン (3)
勝鹿 北星 浦沢 直樹
4091816932
MASTERキートン File3
小島正幸 桑島法子 島本須美
B00005H097

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