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上杉鷹山

 「たとえ財政再建のための改革であっても、その対象となる人々への愛といたわりを欠けば、その改革は決して成功しない」

 上杉治憲(鷹山)が17歳で藩主となった米沢藩は、商人も見限り誰も金を貸してくれないほど財政が逼迫していた。格式を重んじる上杉家では膨大な出費がかさみ、幾世代にも渡った借金は膨大な額にのぼった。
 藩主治憲は改革案をまとめ、米沢領に入るが、昔からの重臣の抵抗に会い、度重なる妨害工作を受ける。

 童門冬二の小説「上杉鷹山」は、改革派と守旧派との対立を軸に、鷹山が危機的な状況にあった米沢藩の改革を成し遂げるまでを説得力のある文章で描いている。
 アメリカ大統領ジョン・F・ケネディが、最も尊敬する日本人としてあげた上杉鷹山。質素倹約を藩士や領民に強いるも、率先垂範を行い、人々が希望の灯をともし続ける影響力。複眼的で柔軟な思考を持ち、甘言に終始することなく、時には苛烈な処断を行う気構えを持っていた。その政策は、殖産興業と将来への備えを的確に行うことにより、天明の大飢饉においても米沢領内でひとりの餓死者も出さなかったことに示されるように、根底には領民への慈しみがあった。
 年頭にあたり、自らの内に基軸を持つためにも、鷹山の生き様から受けた刺激を大事にしたい。

全一冊 小説 上杉鷹山
童門 冬二
4087485463

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