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桂枝雀 弁慶・代筆

 桂枝雀の落語は、過剰ともいえる大げさな表現が特徴で、これが古典?と思えるほどである。しかし、突き詰めた芸と溢れんばかりのエネルギーにより、会場は爆笑の渦となる。CDで聴いても、圧倒されるほどに、噺家と一体になった会場全体のうねりが伝わってくる。
 桂枝雀のライヴ録音の中でも、「船弁慶」は異色の作品。気の弱い旦那と強いかみさんの猛烈なやりとりで、話し手のヴォルテージがすざまじく上がり、会場が最高潮に達したところで、最後のオチまでいかずにストンと終わる。反則ワザのようだが、これはこれで一つのまとまりをもった噺と感じる。それゆえ、印象にずっと残っているのだ。芸の気迫のなせる業だろう。
  「代筆」は、枝雀がアレンジをした代表作のひとつ。履歴書を記す代筆屋とおかしな依頼主との対話が、絶妙の間合いで語られる。CDで聴いていても、瞬間に変わる表情が伝わってくる。「笑い」を作り出す力に、凄みすら感じた。

枝雀落語らいぶ(1)船弁慶・代筆
桂枝雀
B000064UK5

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