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自助論

 「天は自ら助くる者を助く」

 サミュエル・スマイルズの世界的ロングセラー「自助論」。努力・勤勉・忍耐・独立・誠実の重要性を、膨大な例で語る著作。1858年、イギリスが世界最強の国であった時に書かれた本であり、文章に勢いを感じる。
 日本では明治4年に中村正直の訳により「西国立志編」として出版され、100万部の超ベストセラーとなった。その独立と向上をうたった文章は明治の青年たちを奮い立たせ、近代化を推進する精神的な支柱のひとつとなった。
 2008年、アメリカではサブプライム・ローンの破綻を切っ掛けとして金融システムが混乱をきたし、経済は下落の一途を辿った。日本でも過度な外需依存の弊が現れ、企業はことごとく業績の下方修正をし、経営の見直しを余儀なくされた。金融至上主義のヴァーチャルな部分がはがれ落ちた1年であった。マネーゲームの一時的な成功者の陰で、努力・勤勉・忍耐という言葉は軽んぜられていた風潮も一部にあったが、今年は、地道な努力で経済の混乱を修復しなければならない。
 2009年は、真の実力が試される年になろう。日本においては、長い間地道に培ってきた高い技術力に、より目が向けられ評価される年になるのではないか。それはもとより、努力・勤勉・忍耐のたまものである。
 自助論は、150年の時を経てなお多くの人に読まれている。この本を「古い」とか、「あたりまえ」と一蹴するのは簡単である。しかし、本気で向き合って初めて見えるものが世の中にはたくさんある。
 年頭にあたり、古典的名著を掲げたい。

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