坂の上の雲 9
NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」第9回は、「広瀬、死す」。連合艦隊に日露開戦の命がくだされる。旅順港の閉塞作戦を、迫真の映像のうちに描き出す。濃密な戦争映画を見ているようで、あっという間の90分であった。
今年の4回のなんと短かったことか。それにしても、この作品に正岡子規を登場させた意義は大きいとつくづく感じる。文学の世界に新たな息吹を吹き込んだ子規と秋山真之の交流を描くことでぐっと深みが増した。これにより、単に戦争スペクタクルに終わることなく、個が確立していた明治の気風の中から戦争を見据えることに成功している。司馬遼太郎の凄さに改めて感じ入った。
それを具現化したスタッフの意気込みには敬服する。特に、子規の病牀六尺のシーンはあまりに見事で、レコーダーからのDVDにおとした映像を確認するため、病床の子規が真之と向き合うシーンをちらっと見ただけで涙が溢れてきた。映像の力、俳優の力を見せつけられた。
続きは、後1年待たなければならないが、来年も年末の楽しみができたと思うと、このような放送形態も悪くないと感じる。どうか、来年も視聴する側をうならせる練り上げた映像とドラマを見せてほしい。
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