カルロス・ゴーン経営を語る
倒産の危機に瀕していた日産を、見事なリーダーシップで立ち直らせたカルロス・ゴーン。1999年、日産リバイバル・プランとして掲げた「初年度黒字化、有利子負債の半減、営業利益率の向上」を驚異的なスピードで成し遂げ、確実に成長路線へ転換させる大きな功績を残した。2011年には、日産は電気自動車でリードをしようとしている。
カルロス・ゴーンへのインタビューを基に、自らの生い立ち、ミシュラン、ルノーの体験、日産の再建とその後のビジョンを記した本書は、企業経営について極めて示唆に富む。
レバノン系でブラジル生まれ、フランス式教育を受け、世界中でビジネスを手がけたゴーンのコスモポリタンとしての生い立ちは、文化の多様性を受け入れる素地を作った。その体験は、提携した日産とルノーが企業文化の違いを乗り越え、相乗効果を発揮していくことに繋がる。グローバル化とアイデンティティの尊重を両立させることが、本書に横たわるテーマのひとつでもある。
当時の日産の問題点を明確にし、解決の方向を示す記述には、その明快さゆえに心地よさすら覚えた。そして、クロス・ファンクショナル・チームを立ち上げ、部門の壁を取り払い、生産性の向上に組織全体で取り組むシステムを構築する様には、感銘を覚えた。事実から語られるゴーンの経営姿勢からは実に学ぶことが多い。
2011年、日本はまだ長引く景気低迷から脱し切れていない。しかし、企業の真摯な姿勢や、先端技術への果敢な挑戦が、より形になって表れる年になる予感がする。
カルロス・ゴーン経営を語る
カルロス・ゴーン フィリップ・リエス
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