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砂の器

 松本清張の初期の短編集「或る小倉日記伝」や「張込み」を読んでいたら、むしょうに映画「砂の器」が見たくなった。前に一度見て感激したので、またあらためて見直したくなったのだ。
 オープニングの砂丘をバックにした幻想的なタイトルから、惹きつけられる。秋田県の亀田を振り出しに、日本各地を執念で捜査する刑事を、丹波哲朗。その相棒の刑事が森田健作。この捜査の地道さが、実によい。「湯けむりなんたら殺人事件」とかのように、人がばたばた死なないのもよい。一つの殺人を丹念に追っていくその地味な様が、リアルに写る。かといって、決して飽きさせず、ぐいぐいひっぱってゆく魅力を持った展開をする。
 この映画では日本の美が至るところにちりばめられている。まず、自然の美。刑事が訪れる日本各地のたたずまいがいい。田舎のワン・シーンでも、わらぶき屋根の家や山を縫う田畑、濃い緑など日本の夏が広がり、その情景に素直にひたる楽しみがある。心が広がるようである。父子がめぐる日本各地の美も、この映画の魅力を支えている。
 また、人間の美。笠智衆の端然とした美、緒形拳演じる警察官の情厚き精神の美、そして父子の強き絆の美。
 それら日本の美を衒わず全面に出していることが、この作品のつきせぬ魅力の源泉だと思う。

砂の器 デジタルリマスター版 [DVD]
B009YDADLU

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