天才
石原慎太郎の「天才」は、田中角栄を一人称で描いた著作。
日本全体を高速道路の整備、新幹線の配備で結び、情報通信ネットワークをはりめぐらせて地方を活性化させる「日本列島改造論」。その提唱者であり総理として強力に社会基盤整備を推し進めた政治家の生涯を、本人の独白という形で巧みに描写している。
文章での一人称の効果は抜群で、明瞭簡潔でリズムをもちつつ、さながら前進する蒸気機関車のような力強さを持っている。
日中国交正常化で中国要人と会見した際の含みと深みのある邂逅、多様な政治家との力関係、ロッキード疑惑など、興味深い内容が次々と語られていく。
金、女性、家族と自らの関わりがそれらの事象を綾なすかのように綴られ、人間「田中角栄」を陰影豊かに浮き上がらせていく。
天才
石原 慎太郎
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