話の話
「ノルシュテインの作品はすべて、いわば夢のフィルターをとおして世界をみているような気分にぼくらを誘い込む魔力をもっている。」
1982年1月23日、日仏会館で「セロ弾きのゴーシュ」の完成試写会が行われた折りに、高畑勲監督、美術担当の椋尾篁氏などから挨拶があった。仕事の合間に、コツコツと作ってきたアニメーションへの思いが語られた。
その試写会で併映された「霧につつまれたはりねずみ」は、「ゴーシュ」の高畑勲監督にとっても、ノルシュテイン作品との最初の出会いだった。
ノルシュテインの作品である「話の話」は、古今のアニメーションの中でも抜きん出て芸術性が高く、難解な作品。赤ん坊を見つめる狼、ミノタウルスと少女の縄跳び、もの悲しいタンゴの調べで踊る男女から、ひと組ひと組パートナーが消え残される女性たち。繰返し現れるリンゴ。それらのシークエンスから、作者は何を語ろうとしているのか。
高畑勲氏は、アニメージュ文庫「話の話」の中で、この作品を詳細に解説している。その文学的香気に満ちた解説から、「話の話」の意味と価値が見事に浮き上がる。
「話の話」をさらに鑑賞したいと思うと同時に、一つの映像から、これだけ多くのことを読み取り、思索し、語ることができるのかと、アニメーション作家の想像力と表現力に脱帽した。
話の話 (アニメージュ文庫 (F‐006))
高畑 勲 アニメージュ編集部
コメント