ドイツとEU
2020年1月31日、イギリスは正式にEUを離脱した。
池上彰の「ドイツとEU」は、EU成立の経緯と、抱える問題点を分かりやすく解説している。転機を迎えたEUの今後を見る上でも、基本的な視座を与えてくれる良書。
2020年1月31日、イギリスは正式にEUを離脱した。
池上彰の「ドイツとEU」は、EU成立の経緯と、抱える問題点を分かりやすく解説している。転機を迎えたEUの今後を見る上でも、基本的な視座を与えてくれる良書。
ヒトやモノの移動をスムーズにし、ユーロ導入など一大経済圏を構築したEU。ヨーロッパ統合の理念を形にした壮大な社会実験である。しかし、大量の移民流入やイギリスの離脱決定など、多くの試練に直面している。この先、EUはどうなっていくのか。
EUの直面する課題を、豊富な知見と政治学的な視点で明らかにする書。EUの歴史的経緯や度重なる危機も詳らかに記されている。
理念を形にすることの難しさをまざまざと感じさせてくれる。それでも、EUを世界的規模の一大組織に発展させた人々の並々ならぬ労苦と意志が行間から伝わってくる。
本書では触れられていないが、EUは広域な文化活動を支援し人類への貢献を志向する組織でもあり、その価値は決して小さくない。
EUの実相を提示し、現在の社会を俯瞰する上でも多くの示唆に富む良書。
「世界の中心で愛をさけぶ」の著者、片山恭一が、アメリカ西海岸を旅しながら綴ったエッセイ「世界の中心でAIをさけぶ」。
人工知能などのデジタルテクノロジーが支配する人間社会は、どこに向かうのか。テクノロジーの中心であるシアトルを出発し、マウント・レーニアなどの自然豊かな地をめぐり、人類の未来に思いをはせる。そこでは、現在広がりつつあるテクノロジー中心社会の様相と、人々の営みに対する考察が該博な知識をもとに展開される。
テクノロジー論と気楽な旅が織りなす、奥行きのあるエッセイ。
世界各地の紛争地域をめぐり、兵士の武装解除に携わってきた瀬谷ルミ子氏の体験記「職業は武装解除」。
高校3年生の時にルワンダ難民の写真を見た著者は、その状況を変えようと紛争解決の道に進むことを決意する。手段として英語を勉強し、アルバイトをして紛争解決学の課程をもつイギリスの大学に留学する。
その後、シエラレオネ、アフガニスタン、コートジボワール、ソマリアなど紛争地域を渡り歩き、体験を積んでいく。
自らの上位目標に向けて突き進んでいく前向きな姿勢にはいたく感銘を受けた。紛争地の現実や、なかなか思う通りにいかないことへの葛藤も綴られている。それでも、ぶれずにスキルを高めていく姿に、読んでいてたいへん鼓舞された。
危険が伴う任務についても書かれているが、著者の温かみと独特なユーモアが読み手の心を潤してくれる。
キャリアを高めたい全ての人に読んでほしい、鮮烈な半生の書。
「国境なき医師団」に参加し、イラク、シリア、パレスチナなど紛争地に8年間で17回派遣された看護師の手記。
紛争地では、罪のない一般市民が次々と病院に搬送され、少ない物資の中で工夫をして措置を施していく。セキュリティが幾分配慮されているとはいえ、戦場であり不測の事態が常に起こりえる。文字通り、死と隣り合わせの場所で、患者を懸命に治療する姿にはひたすら頭が下がる。
「国境なき医師団」を知り、看護師を目指す部分もたいへん興味深く、励まされる。内部から見た紛争地の状況からも様々なことを教えられた。
子どもたちが犠牲になる姿の記述からは、静かな怒りが伝わる。
極限状況の中で医療を施す看護師が綴る、心ゆさぶられる書。
池井戸潤の小説「民王」が、ドラマ化される。内閣総理大臣とその息子の体が入れ替わる。天然の息子は、総理大臣をやむを得ず務めるが、そのひたむさと熱い思いが人々の共感を呼ぶ。一方、息子の替わりに就職面接を受けるが…。
菅田将暉、遠藤憲一、草刈正雄など芸達者な俳優が思いっきり演じており、楽しめる。特に、菅田将暉の熱演が物語を盛りあげる。
気軽に見られる政治エンターテイメント。
銀行の横領、恐喝で財をなし銀座のクラブを経営する主人公元子は、次なる標的を定める。
女性の野望をサスペンスフルに描いたピカレスク・ロマンの傑作。
物騒なタイトルであるが、実際はマイケル・ムーアがアメリカ以外の国をめぐるドキュメンタリーである。ユーモラスかつ大胆に各国の特色を探り出す。
イタリアの休暇制度、フランスの食文化育成、フィンランドの教育、ドイツの過去と向き合う姿勢など、国を支える営みが独自の切り口で映像化され、示唆に富む点が多い映画。
池袋にある受験世界史専門の「ゆげ塾」講師が著した世界史の書。
歴史的事象が横断的に漫画で表現され、たいへん分かりやすい。短い時間で読めるが、内容は濃い。
受験世界史に俯瞰する視点を与えてくれる良書。
著者は、2011年より人工知能が大学入試問題に挑戦するプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を立ち上げる。通称「東ロボ」君は、膨大なデータと自然言語処理のプロセスを駆使して、偏差値を上げていく。しかし、そこには「読解力」と「常識」の壁がたちはだかった。
人工知能の可能性と限界を、入試問題を解かせる過程で明らかにしていく。その経緯もたいへん興味深いが、プロジェクトが導いた現代の教育への提言は切実である。
AIと共存しなければならない今後の社会における教育に多くの示唆を与える、明快で刺激的な書。
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