バララッシュ 1

 福島聡氏に、取材協力のお礼として「バララッシュ」の第1巻を寄贈いただく。見てまわられた場所が、見事に漫画の背景として表現され、その画力にあらためて感嘆する。
 1987年、アニメをこよなく愛する高校生山口は、抜群の絵の才能をもつ宇部と出会う。「風の谷のナウシカ」「機動戦士ガンダム」「王立宇宙軍オネアミスの翼」「うる星やつら2」など、映画・テレビアニメを共に鑑賞し、やがて二人はアニメ制作のプロの道を歩み始める。
 アニメの傑作が次々と誕生した1980年代を舞台に、夢に向かって進む男たちを描く王道の青春漫画。

バララッシュ 1巻 (ハルタコミックス) [ 福島 聡 ]

未来惑星ザルドス

 2293年の荒廃した世界を舞台にしたSF映画「未来惑星ザルドス」。1974年公開、ジョン・ブアマン監督作品。空飛ぶ石像の存在が圧巻。索漠とした土地で、ショーン・コネリーが体を張って演じる。
 哲学的な趣きをもつ、SF映画の記念碑的作品。

未来惑星ザルドス [DVD]

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

 著者は、2011年より人工知能が大学入試問題に挑戦するプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を立ち上げる。通称「東ロボ」君は、膨大なデータと自然言語処理のプロセスを駆使して、偏差値を上げていく。しかし、そこには「読解力」と「常識」の壁がたちはだかった。
 人工知能の可能性と限界を、入試問題を解かせる過程で明らかにしていく。その経緯もたいへん興味深いが、プロジェクトが導いた現代の教育への提言は切実である。
 AIと共存しなければならない今後の社会における教育に多くの示唆を与える、明快で刺激的な書。

【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち

七つの会議

 会社で働く人々の人間模様を描いた池井戸潤の小説「七つの会議」。各章ではそれぞれの部署で開かれる会議を中心に据えまとまりをもったエピソードになっている。それらが章が進むにつれて束ねられ、会社組織に関わる大きな流れに発展していく。
 銀行を舞台とした連作短編「シャイロックの子供たち」と似た構成であるが、本作は物語としてより練度が増している感がある。
 様々な角度で企業と社員をフレーミングし、そのありようをスリリングに綴る迫真の小説。

七つの会議 (集英社文庫)

政談 (まんが学術文庫)

 近未来の日本、ロックバンドのヴォーカリスト、マコトは、バイトをしながらプロのミュージッシャンを夢見て練習に励んでいた。そんなある日、政府は、すべての政策を人工知能に委ねる決定をした。コンピュータ「SORAI」は、「国民の住居は会社・業種ごとにまとめ国が定める」「他県への引っ越しを禁ずる」など、斬新な政策を次々に実行していく。その結果、フリーターであるマコトから彼女やバンド仲間が離れていくことになる。マコトがとった行動は…。
 江戸時代の学者、荻生徂徠による意見書「政談」を基にしたコミック。教養漫画というと、文字がやたらと多く絵はおまけ的なものが多かったが、この作品はストーリーで名著の内容を体現しており、自然に読める点が素晴らしい。古典の思想とSF的な設定が見事なまでにかみ合っている。
 名著へと誘う画期的なコミック。中高生にも一読を勧めたい。

政談 (まんが学術文庫)

恋愛と贅沢と資本主義 (まんが学術文庫)

ゾンバルトの「恋愛と贅沢と資本主義」を、漫画で示した書。フランス革命前後の人々の暮らしから、資本主義発展の源泉を極めて分かりやすく表現している。
 漫画の表現力を如実に伝える啓蒙文庫。

恋愛と贅沢と資本主義 (まんが学術文庫)

歎異抄 (まんが学術文庫)

 「善人なおもて往生をとぐ。いわんや悪人をや」
 親鸞の弟子、唯円を主人公にすえ、「歎異抄」の教えを具体的にストーリーで伝えるまんが学術文庫の一冊。
 いわゆる悪人正機を主軸に、親鸞の教えを漫画で分かりやすく表現している。当時の人々の暮らしに密着した絵は、説得力をもって迫ってくる。

歎異抄 (まんが学術文庫)

アウトブレイク

 ウィルスの感染に立ち向かう人々を描いた映画「アウトブレイク」。「U・ボート」「ネバーエンディング・ストーリー」のウォルフガング・ペーターゼン監督による1995年公開作品。
 ザイールで謎の出血熱により村が全滅する。アメリカ軍部と医学研究所の医師たちは、感染拡大防止に向けて動き出すが、爆発的な感染、アウトブレイクが始まってしまう。
 邦画「感染列島」より、はるかに緻密な脚本とダイナミズムで見る者を惹き付ける。公開同時期にエボラ出血熱が流行した。設定の妙をもったディザスタームービー。

アウトブレイク [DVD]

感染列島

 「感染列島」は、新型インフルエンザに襲われた日本の姿を、病院内の医師の奮闘を中心に描いた映画。妻夫木聡主演、瀬々敬久監督・脚本による2009年公開作品。
 前半の緊迫した展開はなかなかがんばっている。しかし、後半、やや間延びをした印象を受ける。医師が感染源をさぐりに他国に出国し、帰国するなどありえず、説得力を欠いている部分が見受けられる。日本映画の情緒に流れすぎる部分が、緊迫感をそいでおり残念。

感染列島 [DVD]

復讐するは我にあり

 連続殺人犯、榎津巌を描いた映画「復讐するは我にあり」。1979年公開、今村昌平監督作品。
 キリスト教信者である殺人鬼を緒形拳が演じ、どろどろとした情念が放たれる。

復讐するは我にあり

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