ブルックナー カラー版作曲家の生涯
新潮文庫「カラー版作曲家の生涯」は、その作曲家の生き様が写真や絵とともに語られ、たいへん気に入っているシリーズだ。その生涯を読むと、音楽の味わいがよりいっそう増してくる。
シリーズの中でも、一番地味な生涯と思われるのが、ブルックナーである。本人の写真は、どこにでもいそうなおっさんに見える。女の人が好きで、ミーハーなところもあったようだ。しかし、それとは裏腹に、作曲された音楽は巨大な伽藍のように壮麗である。アンバランスの理由について、やはり人生をたどることで浮きあがってくるものがある。
挿入されている現在活躍している指揮者や演奏家たちのエッセイも、その音楽への共感にあふれ、どれも味わいがあり曲の持つ魅力を教えてくれる。
しかし、このシリーズは絶版となっているものが多い。ブルックナーもそのひとつである。クラシックを楽しむのに好適なシリーズと思っているので、たいへん残念である。自分自身、ブルックナーの長大な交響曲はあまり聴く機会がなかったが、この本で関心がわき、何度か聴くうちに徐々に受け入れられるようになった。
百年を超えてなお多くの人々に愛される音楽を作曲した人の生涯は、それぞれがシンフォニーのような豊かさをたたえている。
ブルックナー
土田 英三郎
コメント