大いなる遺産
デビッド・リーン監督の映画は、「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」などの大作も良いが、初期の作品も味わい深い。
チャールズ・ディケンズ原作の「大いなる遺産」(1946年)は、モノクロの映像が名画のように美しい。冒頭の雲のシーンから引込まれる。「ライアンの娘」に通じるオープニング。
ストーリーも素晴らしく、良き映画をじっくり鑑賞したいときにお薦め。
大いなる遺産
ジョン・ミルズ バレリー・ホブスン アレック・ギネス
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デビッド・リーン監督の映画は、「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」などの大作も良いが、初期の作品も味わい深い。
チャールズ・ディケンズ原作の「大いなる遺産」(1946年)は、モノクロの映像が名画のように美しい。冒頭の雲のシーンから引込まれる。「ライアンの娘」に通じるオープニング。
ストーリーも素晴らしく、良き映画をじっくり鑑賞したいときにお薦め。
大いなる遺産
ジョン・ミルズ バレリー・ホブスン アレック・ギネス
財界総理と呼ばれ、日本の高度経済成長期に経団連会長をつとめた石坂泰三の生涯を描く小説。石坂泰三は、第一生命、東芝などの社長を歴任し、経済界に多大な影響を与えた。現職の大蔵大臣や総理にすら、「もう、きみには頼まない」と啖呵を切るほどの気骨を持っていた。
最も感銘を受けたのは、80歳近くなってから大阪万博の会長を引きうけるエピソードだ。
「万博は深い意味を持っている。見本市とか何とかとちがって、人類が文化に貢献したものを、一堂に展示するのだから」-即興で英国の詩を原文で諳んじるほど、深い教養をもった人物であったからこそ、「人類の進歩と調和」というテーマが生まれたのであろう。
万博について、四つの方針「予定の開催日に間に合わせること。事故防止。汚職の根絶。赤字を出さぬ。」を定めた。言うは易く、これだけの国家事業を進めるには相当苦労があったろうが、方針を貫き見事に成功に導いたことは凄いと思った。
多くの経済人を描いてきた城山三郎が、石坂泰三を描く小説を持ち込まれてから、二十余年もの歳月を経てようやく執筆にいたる経緯を描く「あとがき」にも感動した。
数多くの重責を担った人物の生涯であるが、読後には清々しさをおぼえた。真に志のある生き方だったからであろうか。
ピエール・ブーレーズの演奏するマーラー交響曲第1番は、一音一音が研ぎ澄まされ、明晰で美しい。悠揚とした流れの第1楽章は芳醇さを感じる。第2楽章は速度の変化があまりに見事。第3楽章は、繊細な表現で美質が際だっている。第4楽章は、的確にコントロールされながらも、自然と高揚する演奏。
親しみやすいが、理知的で奥深い。
マーラー:交響曲第1番「巨人」
シカゴ交響楽団 ブーレーズ(ピエール)
桃太郎電鉄は、すごろくと経営を合わせたようなパーティ・ゲーム。まずゴールとなる駅が示され、そこに向かってサイコロを振りながら各自の電車を移動させ、一番先に到着させると億単位の資金が得られる。止まった各駅で物件を購入することができる。物件からは、収益率に応じて年度末に利益が得られる。決まった年限の中で、いかに資産を増やすかを競うゲーム。途中、スリにあったり、貧乏神がとりついたりと、様々なイベントがあり、飽きない。
教育的な要素も侮れないものがある。日本全国の地名が自然と覚えられるし、松山ならば、物件が「夏目漱石グッズ屋」「正岡子規グッズ屋」「道後温泉」、青森ならば「太宰治グッズ屋」「リンゴ農園」など、地理の基礎事項がさりげなく押さえられる。
また、物件は数千万円単位や数億円単位であり、イベントがあれば持ち金の額が百万円単位で変動するので、大きな数の勉強にもなる。貧乏神にとりつかれるとすぐに赤字になるので、マイナスの計算が実感できる。物件の収益率から、割合の概念を把握させることもできる。
アクションゲームに熱中させるよりもよいと思い、子どもたちとたまにプレイする。地理に関心を抱き、「北海道と本州を結ぶトンネルは青函トンネルって言うんだよね」などと、子どもが口にすると、「よく知っているね、どうやってトンネルを掘ったのだろうね」など、その後、いろいろな話題に広げるきっかけもできる。
もっとも、ゲームをやりはじめると、子どもたちより熱中していることもしばしばあるほど、大人でも楽しめる。
ムラヴィンスキー指揮・レニングラードフィルハーモニー管弦楽団演奏の、1972年にモスクワ音楽院大ホールで行われたライブ録音のCDを聴く。
ベートーヴェン交響曲第4番は、比較的優美な交響曲という印象があった。しかし、最初帰宅途中の車の中でこのCDを聴き、あまりの峻烈さに驚いた。特に、第1楽章のダイナミックな推進力がすごい。
家に帰って2度目にじっくり聴くと、最初は力で押している風に感じた演奏が、たいへん芳醇な音楽であることに気づかされた。
また、激しさゆえに、静かな部分がより際だつ。第2楽章は、ことに美しい響きを持っている。
ベートーヴェン第5番は、他の指揮者による演奏を聞き慣れてしまったせいか、正直新たな感動はなかったが、奏者も観客も音楽にどんどん引込まれていく様が伝わってくる演奏であった。
他に、ワーグナーの歌劇「タンホイザー」よりヴェーヌスベルクの音楽が併緑されている。
ベートーヴェン : 交響曲第4番&第5番 「運命」
レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 ムラビンスキー(エフゲニ)
昨日記した、リヒテルが弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のCDには、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番が併緑されている。ピアノ協奏曲の名演が2つも入っている、この上なく密度の濃いCDだ。
しかも、チャイコフスキーのピアノ協奏曲は、カラヤン指揮、ウィーン交響楽団演奏。
このリヒテル-カラヤンの共演は、スリリングですらある。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ハ短調、この甘美な旋律に彩られた名曲を、自由闊達に弾くリヒテルの演奏には心底魅了される。1959年の演奏だが、古めかしさはいささかもなく、美しい響きに満ちあふれている。第2楽章などは、鳥肌が立つほど繊細で心ふるわせる叙情がある。
チャイコフスキー&ラフマニノフ:ピアノ協奏曲、他
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
リヒテル(スヴャトスラフ) カラヤン(ヘルベルト・フォン)
クラシックは、生以外は、CDで演奏に集中して聴くのがよいと思っていたので、DVDでクラシックのコンサートを見る機会はほとんどなかった。しかし、小澤征爾指揮・バイエルン放送交響楽団演奏の「春の祭典」を見て、DVDもなかなか良いものだと実感した。
明瞭でエネルギッシュな小澤の指揮が、オーケストラを盛り上げる様を見るのは、なかなか爽快だった。
定価が1995円と、DVDも随分値段が下がってきた。以前買ったリッカルド・シャイーの「春の祭典」のCDはもっと高かった。(今は少し安くなっている。)
シャイーの演奏も、躍動感に溢れ、何回聴いても味わえる。
春の祭典
小澤征爾 バイエルン放送交響楽団
ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」
シャイー(リッカルド) クリーヴランド管弦楽団
ブラームスの音楽といえば、「渋い」、「枯れた」とよく形容される。しかし、小澤征爾指揮、サイトウ・キネン・オーケストラのブラームス交響曲第4番は、むしろ、みずみずしい音楽という印象を受けた。
第1楽章も、情緒よりもダイナミズムが勝っているように思えた。第2楽章の精妙なアンサンブルに裏打ちされた優美さもよい。第3楽章は、なぜか聴いていて妙にワクワクした。第4楽章は、冒頭から、ボワっと炎がわき上がるようで、枯淡の境地ではなく、内面の熱さを感じる演奏であった。
楽しめるブラームスといったら、言い過ぎであろうか。
併録されているハンガリー舞曲第5・6番が、おまけではなく、交響曲と同じような密度で演奏されていることに驚く。
ブラームス:交響曲第4番
小澤征爾 サイトウ・キネン・オーケストラ
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