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THE 有頂天ホテル

 三谷幸喜の3作目の映画「THE 有頂天ホテル」。大晦日のホテルを舞台に、主役級の多数の人物それぞれがオンタイムで動く、緻密な脚本によるノンストップ・コメディ。
 俳優23名がそれぞれ役どころを得て、個性を発揮している。三谷幸喜は制作発表の場で、「何でこんなに皆さん集まって下さったんだろうと思うと、多分、それはもう、僕の人望以外にない訳ですよ。」と言って笑いをとっていた。
 時間の省略という映画の武器を捨てて、あえてオンタイムな進行という手法をとった。ワンシーンワンカットにより、緊密なドラマが展開されている。

THE 有頂天ホテル
役所広司 三谷幸喜 松たか子
B000FFK08W

ソイレント・グリーン

 ベートーヴェンの交響曲第6番を聴くと、SF映画「ソイレント・グリーン」を思い出す。「田園」があれほど効果的に使われた例はないのでは。

ソイレント・グリーン  (字幕版)

ワルター ベートーヴェン交響曲第6番

 ブルーノ・ワルター指揮、コロンビア交響楽団によるベートーヴェンの交響曲第6番を聴く。温かさとみずみずしさに溢れた演奏。

ベートーヴェン:交響曲第6番
コロンビア交響楽団 ワルター(ブルーノ)
B00005G83D

呪われた町

 スティーヴン・キングの長編ホラー「呪われた町」。何の変哲もない町が、徐々に恐怖に襲われていく様が、見事な筆致で描かれる。そのリアリティと緊迫した展開に、自然と物語にのめり込んだ。

呪われた町 (上)
スティーヴン・キング
4087600866
呪われた町 (下)
スティーヴン・キング
4087600874

モンスターズ・インク

 「鬼太郎」や「どろろ」では、「物の怪」の想像力が作品の魅力のひとつである。「モンスターズ・インク」でも、多彩なキャラクターが登場して楽しませてくれるが、それに加え、モンスターの社会が人間と同じ会社組織で成り立っている点が面白い。
 子供を怖がらせた悲鳴がモンスター社会のエネルギーになっているという設定が秀逸で、最近の子供がモンスターを怖がらなくなってエネルギー危機を迎えるのではという着想がユニークだ。
 練り込まれた脚本により、最後まで飽きさせないハート・ウォーミングな良作。

モンスターズ・インク
アンドリュー・スタントン ピート・ドクター リー・アンクリッチ
B0007VZBME

どろろ

 肉体を48匹の魔物に奪われた百鬼丸と、コソ泥の子供どろろ。百鬼丸が妖怪を退治する度に肉体の一部が取り戻される。その着想と巧みなプロットが光る手塚治虫の長編漫画「どろろ」。
 妖怪退治という内容なので、子供の頃に何回分かは読んだが、あまり興味を持たなかった。しかし、最近全編を読んでみて、あらためてそのアイディアの豊かさと物語に惹かれた。何より、手塚自身が百鬼丸やどろろのキャラクターに愛着をいだき、ノリにノって描いていることが伝わってくる。
 戦争の悲惨さや人権問題を根底に持ちつつ、見事なシナリオと躍動感のある表現で読み手を飽きさせない。
 肉体や感覚を極限まで失いながら、医師によって助けられ、自ら生きる力を身につけていく主人公。過去を背負った孤独な百鬼丸とどろろの姿は、退治する対象を妖怪から病気に変えて、ブラック・ジャックとピノコに受け継がれていく。「ブラック・ジャック」の源流と言える傑作。

どろろ (1)
手塚 治虫
4061087479

どろろ (2)
手塚 治虫
4061087487
どろろ (3)
手塚 治虫
4061087495
どろろ (4)
手塚 治虫
4061087509

THE BEST OF KAMON TATSUO

 名作「替え唄メドレー」「ハンバーガーショップ」を含む、嘉門達夫の初期作品ベストアルバム。とにかく笑える。解説不要。聴いてみそこし。

THE BEST OF KAMON TATSUO
嘉門達夫
B00005GWTH

冬の旅

 泉に添いて 茂る菩提樹 
 したいゆきては うまし夢見つ  

 「菩提樹」を小学校で聴いたときには、その美しい旋律から、自然を讃える歌だと思った。高校の音楽の授業で「おやすみ」という曲を習い、ドイツ語で初めて歌った。成人になり、「冬の旅」のCDを買い求めて全曲を聴いたとき、第5曲「菩提樹」の歌詞の意味が、小学生の頃思い描いたものと俄然違う意味を持って迫ってきた。

 菩提樹の陰でたくさんの甘い夢を見て、愛の言葉を彫りつけた。町を去るとき、菩提樹が「ここへおいで、若者よ、ここなら憩いが得られる」と呼びかける。
 この後、曲は短調に変わり、冷たい風が吹きつけ帽子をとばす。しかし、若者は振り向きもしない。
 今、そこから遠く離れた場所にいるが、「あそこなら憩いが得られる」というざわめきが聞こえ続ける。

 穏やかで優しい旋律が一転暗鬱な曲調になる対比により、懐かしい思い出と、現在の孤独、うら悲しさとの間を行きつ戻りつする心のうつろいを見事に表現している。
 連作歌曲集「冬の旅」は、ヴィルヘルム・ミュラーの詩に、シューベルトが作曲をしたものである。失恋により町を去り、さすらいの旅に出る若者の心象が24曲にわたって奏でられる。
 「冬の旅」は、独身時代に何度も聴いた。曲と詩に共感と慰めを得ていたのかもしれない。ここまで絶望や後悔の念を聴かされると、かえって前向きな気持ちが芽生えることもあるだろう。

 ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウのバリトン、ダニエル・バレンボイムのピアノによる「冬の旅」は、フィッシャー=ディースカウの暖かみのある歌唱が素晴らしい。落ち込んだときに聴くと胸に響く。終曲「ライアー回し」に描かれる、氷の上を裸足で歩みながら凍える指で演奏をする辻音楽師のように、ありのままで心に寄り添う安らぎがある。

シューベルト:冬の旅
バレンボイム(ダニエル) フィッシャー=ディースカウ(ディートリッヒ)
B00005FJCR

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