教員改革
「指導力不足教員」とは、どのような人々なのか。
平成13年度から、東京都教育委員会が他の自治体に先駆けて指導力不足教員を対象とした研修を実施した。「教員改革」は、その企画・運営・指導にあたった著者が、指導力不足教員の実態と対応を記した書である。
最初の章で、指導力不足教員の様々な実例が挙げられ、その異なった課題に対応して行われる研修内容が、詳細に記されている。また、体罰、セクハラ、交通事故などの服務事故を起こした教員に対する研修も触れられている。
本書では、指導力不足教員研修の実際を通して、よい授業を行うための観点が明確に示されている。特に、小学校における授業の奥深さが伝わってくる。小学校の教科内容は大人にとってみれば簡単に見えるため、授業もやさしいと思われるかもしれない。しかし、小学校の授業こそ、多様な児童に複数のアプローチで活動をさせ、学ばせるという点で極めて専門性が高く、職人的な技術を要する。
児童生徒一人一人を高められる授業が成立していれば、自然、その学級は落ち着きを見せ、問題も少なくなる。授業の充実こそが、学校教育のすべてにつながる。「指導力不足」の問題を通して、授業文化の重要性をあぶり出し、教科研修が相対的に軽視されかねない改革の方向に警鐘を鳴らす書である。
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