ジャイロオートバイ、二足歩行おもちゃ、水飲みおしっこ鳥など、簡単な構造で意外な動きをするおもちゃについて、物理の簡単な数式を交えて説明した本。著者は東北大学工学部教授であった酒井高男氏で、1977年に講談社ブルーバックスとして出版された。本当に楽しい本で、おもちゃの仕組みに魅せられながら、科学への興味が自然とわいてくる。
OECDによる国際的な生徒の学習到達度調査、PISA2006では、56ヵ国が参加し、日本の高校1年生にあたる生徒の学力が調査された。その結果、数学、読解力、科学のすべての分野で、日本の国際順位が低下したことが話題になっている。また、科学に対する生徒の関心の低さも問題視されている。
最近、歯車を見かけることが少なくなった。おもちゃも、電子化されたものが増えた。以前のように歯車が見えたり、機械的な構造であれば、その動きを追って仕組みを捉えることができた。その過程で、こちらの歯車が1回転するとあちらの歯車が5回転するなど、その動きから比の感覚も得ることができた。しかし、電子化されたおもちゃは、ほとんどブラックボックスとなってしまい、その仕組みに関心が向かない。こういったブラックボックス化は、科学への関心が低下する一因となっているのではないか。
子どもの頃に、おもちゃの仕組みを知る楽しさ、作ることの喜びを様々な場面で体験させていくことが、技術立国日本の復権にとって案外重要なのかも知れない。
酒井教授があとがきに記した言葉は、30年たち科学が進歩した今、その重みを増していると感じる。
「おもちゃは決してばかにはできない。ちっぽけなおもちゃが全力をあげて、自然の法則のもとに精いっぱい動いている姿に、わたしは感動し、深く頭をたれたくなる。」
おもちゃの科学―手作りで知る新しい世界
酒井 高男
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