« 2008年3月 | メイン | 2008年5月 »

孟嘗君 5

 中国戦国時代、民から慕われた宰相として名高い孟嘗君を描く宮城谷昌光の小説は、文庫本5巻で完結する。
 この長大な小説で、孟嘗君が宰相として活躍する部分は意外に短い。しかし、その前の分量の多さが、この小説の真価でもある。名宰相が生まれるまでの、人々との出会い、様々な人物の生き様が、変化に富んだストーリーの中で見事に編み上げられているからである。
 特に、孟嘗君の育ての親、白圭の行動は、「義人」という現代では忘れ去られた感のある生き方を示している。それも、爽やかな風にふれるような心持ちで読ませてくれる。
 国同士が互いに知力と武力を駆使してせめぎ合う戦乱の世に、凛とした生き方を貫いた孟嘗君の生涯は、一つの理想像と言える。
 国を統べる人格を、波瀾に満ちた物語の中に練達の筆で活写した歴史ロマン。

孟嘗君(5) (講談社文庫)
宮城谷 昌光

小澤征爾 ブルックナー交響曲第7番

 小澤征爾指揮、サイトウ・キネン・オーケストラによるブルックナー交響曲第7番のCDを聴く。2003年9月、松本文化会館でのライヴ録音。
 各パートが明瞭な音色で響き合う。伝統的なドイツ音楽の重厚な表現とは対極をなすが、しなやかで流麗、精緻なアンサンブルにより、ブルックナーの音楽に異なる角度から光をあて美質を際だたせているように感じる。清冽な気に溢れたブルックナー。

ブルックナー:交響曲第7番
小澤征爾 ブルックナー サイトウ・キネン・オーケストラ
B0002J53O2

オペラ座の怪人

 ガストン・ルルー原作の「オペラ座の怪人」は、何度か映画化されたが、ジョエル・シュマッカー 監督による2004年公開の映画は、アンドルー・ロイド・ウェバーによるミュージカルをベースにしている。
 オープニングの、寂れ果てたオペラ座のロウソクに次々灯がともり、華やかなオペラ座が現出するシーンは圧巻。
 絢爛豪華な舞台と衣装、ジェラルド・バトラー演じるファントムの妖しい美しさ、 エミー・ロッサムの澄んだ歌唱などが印象に残る。
 アンドルー・ロイド・ウェバーによる数々の名曲がフル・オーケストラで奏でられ、映像と音楽が華麗に響き合う。

オペラ座の怪人
ジェラルド・バトラー エミー・ロッサム パトリック・ウィルソン
B0009PIVR0

「オペラ座の怪人」 オリジナル・サウンドトラック
サントラ エミー・ロッサム ミニー・ドライバー
B0006TPEHY

篤姫 17

 NHK大河ドラマ「篤姫」第17回は、江戸に赴く肝付尚五郎と、それを迎える運命を描く。節目節目で、囲碁を介して篤姫と尚五郎の交流を描くシーンが現れるが、二人の距離感を適度に設けるなかなかうまい演出だと感じた。
 堺雅人演じる将軍・徳川家定は、常に素っ頓狂な振る舞いをする。今回は家定自ら作ったカステラを島津斉彬と共にほおばる。それぞれのキャラクターが徹底して類型化されて描かれているので、水戸黄門のように安心して見られるのかもしれない。

NHK大河ドラマ「篤姫」

ノックの音が

 「ノックの音がした」 
 15編全てが、ノックの音から始まる星新一の短編集。扉の内側、あるいは外側には、それぞれの人生模様、世界が待ち受けている。シャープな文体と意表をつく展開、ミステリアスな雰囲気とトリッキーなアイディア、星新一の魅力がつまった秀逸なショート・ショート集。

ノックの音が (新潮文庫)
星 新一
4101098336

進化の迷路

 香川元太郎氏による絵本シリーズを子どもたちが店頭で見つけ、兄は「時の迷路」を、弟は「進化の迷路」を買った。
 「進化の迷路」は、アノマロカリス、オパビニアなど奇妙な形の生物が海を席巻するオルドビス紀、恐竜が闊歩するジュラ紀など、太古の時代がイラストになっており、迷路として楽しむだけではなく、各時代の雰囲気を味わうこともできる。緻密なイラストのなかに、だまし絵などの趣向もこらされ、何度もページをめくって楽しめ、学びのきっかけとなる絵本。

進化の迷路 原始の海から人類誕生まで
香川 元太郎 冨田 幸光
4569687288

時の迷路

 歴史考証イラストの専門家、香川元太郎氏による迷路の絵本。恐竜時代、古墳時代、平安時代、江戸時代などの風景が迷路になっている。緻密なイラストで、各時代の雰囲気が伝わってくる。隠れアイテムや、だまし絵などがあり、楽しみながら時代の流れを感じることができる。

時の迷路―恐竜時代から江戸時代まで
香川 元太郎
4569685323

チェリビダッケ 展覧会の絵 ボレロ 

 ゆったりとした歩みで奏でられる、チェリビダッケ指揮、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の「展覧会の絵」。ひとつひとつの曲想が、ひたひたと迫ってくる。最後のキエフの大門は、圧巻。いままでの歩みが、この到達点に繋がっていることをひしひしと感じさせられた。
 「ボレロ」もゆったりと曲の高まりを味わえる名演。

ムソルグスキー/ラヴェル編:「展覧会の絵」&ラヴェル:「ボレロ」
チェリビダッケ(セルジュ) ラヴェル ムソルグスキー
B00005HWWP

プロジェクトX 挑戦者たち 料理人たち 炎の東京オリンピック

 東京オリンピックの開催に伴い、海外からの選手のために延べ60万食もの料理を作るべく、プロジェクトが組まれた。帝国ホテルの村上信夫を中心とし、オリンピックを陰で支えた料理人たちを描く。
 村上信夫の料理に対する熱い思いが伝わる感動のドキュメンタリー。

プロジェクトX 挑戦者たち 第5期 料理人たち 炎の東京オリンピック
ドキュメンタリー
B00007DXX8

桂枝雀 夏の医者

 「夏の医者」は、マクラで独自の世界に引きずり込んでしまい、聴く者を、ユニークな発想の落語で枝雀ワールドに飲み込んでしまう。
 八五郎坊主では、枝雀が大トチリをするが、その狼狽ぶりで会場のエネルギーが逆に増幅する。非日常に連れて行ってくれる落語。

枝雀落語らいぶ(3)夏の医者・八五郎坊主
桂枝雀
B000064UK7

アクセスランキング

Ajax Amazon

  • Amazon.co.jpアソシエイト
  • UserLocal
  • Ajax Amazon
    with Ajax Amazon