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孟嘗君 5

 中国戦国時代、民から慕われた宰相として名高い孟嘗君を描く宮城谷昌光の小説は、文庫本5巻で完結する。
 この長大な小説で、孟嘗君が宰相として活躍する部分は意外に短い。しかし、その前の分量の多さが、この小説の真価でもある。名宰相が生まれるまでの、人々との出会い、様々な人物の生き様が、変化に富んだストーリーの中で見事に編み上げられているからである。
 特に、孟嘗君の育ての親、白圭の行動は、「義人」という現代では忘れ去られた感のある生き方を示している。それも、爽やかな風にふれるような心持ちで読ませてくれる。
 国同士が互いに知力と武力を駆使してせめぎ合う戦乱の世に、凛とした生き方を貫いた孟嘗君の生涯は、一つの理想像と言える。
 国を統べる人格を、波瀾に満ちた物語の中に練達の筆で活写した歴史ロマン。

孟嘗君(5) (講談社文庫)
宮城谷 昌光

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