パストラーレのひととき

　志の輔の「宿屋の仇討」は、テンポのよさが実に心地よい。静けさを求める侍と、隣の部屋でどんちゃん騒ぎをする三人組の対比が見事。掛け合いの妙に時を忘れて聴き入る。
　「千両みかん」は、志の輔が番頭のキャラクターを、この上なく楽しそうに演じている。場面が次々と移る、変化のあるストーリーがまたよい。
　志の輔の落語は、つらいときでも、なんとかなるさと前向きな気持ちにさせてくれる寛やかさを持っている。

志の輔らくご 両耳のやけど2
立川志の輔

　「目線を低くしてということを教えられました。」

　勝ち負けのハッキリとした企業相手の世界から一転、教育の世界に身を置いた弁護士を通し、客観的に問題を見据える役を配したアイディアは秀逸であった。米倉涼子演じる弁護士が徐々に変化していく様が、見どころのひとつであった。役を通して教育問題に向き合う中で、内面に生じた変化も影響しているのだろうか。役者の凄さでもあるのだろうが、自然な変化に感じられた。
　過度な演出もあったが、総じて問題にしっかり向き合おうとするスタッフの姿勢が感じられる作品であった。

「モンスターペアレント」

　桂文珍による、ポピュラーな古典落語「宿替え」「饅頭こわい」のCDを聴く。
　「見えていないことを逆手にとって、笑いの世界に落とし込んでゆく落語の楽しさ」がたっぷり味わえる。

桂文珍(15)「宿替え」/「饅頭こわい」-「朝日名人会」ライヴシリーズ28
桂文珍

　NHK大河ドラマ「篤姫」第36回は、「薩摩か徳川か」。薩摩の京への進出によって窮地に立たされる篤姫を描く。
　寺田屋事件で命を落とす有馬新七を演じた的場浩司の存在感が光る。目の凄みが、ただものではないと感じさせる。

NHK大河ドラマ「篤姫」

　ブルーノ・ワルター指揮、コロンビア交響楽団のベートーヴェン交響曲第１番・第２番のＣＤを聴く。ハイドン・モーツァルトの形式を色濃く残しながらも意志の力を感じる第１番、流麗さと明るさが際だつ第２番、いずれもワルターの明快な演奏が魅力を引き出している。

ベートーヴェン : 交響曲第1番&第2番
コロンビア交響楽団 ベートーヴェン ワルター(ブルーノ)

　昭和の人情を、じっくりと描いた「三丁目の夕日」。懐かしい風景、心の通い合い、気持ちを潤してくれる映像がここにある。特に、薬師丸ひろ子演じるお母さんは素晴しい。
　こうあってほしいというシーンが次々と目の前に現れ、自然に泣いてしまう。この素直さ、実直さが、現代にとっていかに貴重かを示している。なかなかありそうでない映画。

ALWAYS 続・三丁目の夕日
吉岡秀隆, 堤真一, 小雪, 堀北真希, 山崎貴

　福田進一のギター曲集を聴く。技巧を駆使して列車の進む様子を描くドメニコーニの「オリエント急行」に始まり、「アルハンブラの想い出」「カヴァティーナ」など17曲が収められている。多彩な表現でギターの魅力を伝えてくれるアルバム。

ハイパー・アンコール
福田進一 レノン バリオス

　藤沢周平、晩年の傑作短編を六代目柳家小さんが朗読したＣＤ。淡々とした語り口だが、登場人物の感情がじっくりと伝わってくる。繊細な情景描写に心洗われ、老骨にむち打って息子のために行動する主人公の気迫に静かな感動を覚える。

静かな木 (新潮CD 山田洋次が選ぶ藤沢周平傑作選)
藤沢 周平

　ドラマ「モンスターペアレント」も、残すところ後２回となった。法律事務所のトップ城山が、同級生の田川教育長を訪ね、「ここにはいったい何があるんだ。」と問いかける場面など、印象に残るシーンが多かった。シナリオもまとめに入る雰囲気を感じる。
　しかし、ちょっとしたことで刺してしまうなど、安っぽい刑事ドラマのような展開が残念。

「モンスターペアレント」

　小澤征爾指揮、サイトウ・キネン・オーケストラによるショスタコーヴィチ交響曲第５番の演奏を聴く。2006年松本文化会館でのライヴ録音。
　洗練された美しさで、各パートの旋律が明瞭に表出されている。第３楽章の繊細さが特に印象に残る。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
ショスタコーヴィチ 小澤征爾 サイトウ・キネン・オーケストラ