マークスの山
「山々に感応する者の心身は、……大なり小なり傍目には分からない隠微な暗い底を持っているのだろうか。それとも、圧倒的な自然と対峙したとき、脆弱な人間の心身は避けがたく危機に瀕するのだろうか…」
山で起きた殺人を発端に、捜査に関わる人々を実に緻密に描いている。犯人側と追う側が交互に描かれ、そのサスペンスフルな展開に心底引き込まれる。圧倒的にリアルな警察の描写と、画然とした心象や情景の表現が相まって独特の緊張感をつくりあげている。
様々な魅力に満ちた重層的ミステリー。第109回直木賞受賞作品。
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