カラマーゾフの兄弟 (まんが学術文庫)
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を漫画化した作品。1860年代、農奴解放令が出されて間もないロシアを舞台に、地主フョードルの家族をめぐる物語。純真な心根をもち、神に仕える三男アリョーシャ、冷徹なインテリの次男イワン、奔放で一本気な元軍人の長男ミーチャの三兄弟を軸に、様々な人物がからむ群像劇。その言動の内に、人々の生きる意味や神の存在が問いかけられる。
長大な原作は、大学のときに読みかなりの期間、おそらく2ヶ月以上がかかった。しかし、漫画ではほんのわずかな時間で読めてしまう。しかし、読後感はそれほど変わらないように感じた。エッセンスがうまく詰め込まれているからであろう。
新進気鋭の漫画家、岩下博美が、原作をじっくりと読み込み、物語を焦点化し、見事な画力で絵にしている。怒濤の展開が当時の空気感を伴って劇画化され、極めて密度の濃い作品となっている。
カラマーゾフの世界を圧巻の迫力で活写する力作。
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