上松美香がアルパによって自らが好きなアニメーション音楽を演奏したCD「アニパ」。
とにかく音色と旋律が素晴らしい。特に、「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」などの久石譲の音楽は、ストリングスの調べにより旋律美がいっそう引き立つ。
「フランダースの犬」「キャンディ・キャンディ」「キューティーハニー」などの渡辺岳夫の音楽も、そのたおやかで叙情豊かな特質をよく伝えている。
変化に富んだ薫風に身をゆだねているような、ひたすらに心地よいアルバム。
清水ミチコの10枚目CD。ウサギとカメをモチーフに三人のシンガー・ソングライターが作曲するなど、趣向を凝らしたモノマネが展開される。ピアノも見事で、芸達者ぶりに感心する。
趣味の演芸
清水 ミチコ
アニメ「無職転生」第23話は「目覚め、一歩、」。第1期の最終話。
ルーデウスは失意の底に沈み、前世と同じく引きこもる。同時に、ルーデウスに関わった人々はそれぞれの歩みを始める。ルーデウスもやがて一歩を踏み出す。
アニメーション技法と書法を駆使し、見る者をその世界に引きずり込む。転生ものの先駆的作品にして、動き、背景、音楽、声優陣の演技、すべてが一体となり職人芸的なこだわりが横溢し見事な世界を作り上げた名編。
アニメ「無職転生」第22話は「現実(ユメ)」。ルーデウスとエリスはようやく住んでいた土地に戻ってくるが…。
アニメーションの書法を駆使して、心の交流を細やかに描写する。物語のトーンが今までと対照的に落ち着いた雰囲気になる。音楽が寄り添うように奏でられ、静かに心にしみる。
主人公の胸中のゆれを繊細に描く秀逸な回。
ヴェデルニコフのピアノによるリストの「ローレライ」「メフィスト・ワルツ第1幕」「エステ荘の噴水」、ラヴェルの「水の戯れ」「クープランの墓」、フランクの「前奏曲、フーガと変奏曲 ロ短調」が収められたCDを聴く。
水面に無数の水滴が落ち、波紋が広がり重なり合うような、自然な響き。完璧なタッチできらめきに溢れた音楽が広がる。
リストは歯切れのよさが光る。ラヴェルの「水の戯れ」は、ピアノが奏でられていることすら忘れさせてくれた。「クープランの墓」は輝きに満ちた絶品。フランクは、惻々と胸に迫る名演。
ロシア・ピアニズム名盤選26 ヴェデルニコフ/リスト、ラヴェル&フランク
ベデルニコフ ベデルニコフ(アナトリー) フランク
ヴェデルニコフの弾く、ベートーヴェンの「自作の主題による32の変奏曲 ハ短調」は、そのピアノの素晴らしさがストレートに伝わってくる。どんなに速くとも乱れることなく、完璧なコントロールと多彩な技巧で自在に音楽を紡いでゆく。推進力と強固な意志、内なる情熱、ベートーヴェンの魅力があますところなく表現されている。
「月光」の透徹した深み、「テンペスト」のスケールの大きさ、真の芸術に触れたと実感できるアルバムであった。
ロシア・ピアニズム名盤選-3 ベートーヴェン:月光/テンペスト、他
ヴェデルニコフ(アナトリー) ベートーヴェン
1993年、日本での公演が予定されていながら、その直前に亡くなったロシアのピアニスト、アナトリー・ヴェデルニコフ。政府により永らく旧ソ連以外での活動が認められていなかったが、ゴルバチョフのペレストロイカにより、他国での活動が許され、広く知られるようになった。
しかし、ヴェデルニコフは1935年、若干15歳のとき、東京に来てコンサートを行っている。その後、ロシアに戻ったときから悲劇が始まった。両親はスパイ容疑を受けて逮捕され、父親は銃殺される。母親は強制収容所に送られる。ヴェデルニコフ自身も活動を制限され、抑圧の中で自己を磨いていく。
ヴェデルニコフの弾くベートーヴェンの真摯な演奏は、技巧を越えて訴える力を持っている。
ロシア・ピアニズム名盤選-2 ベートーヴェン:ハンマークラヴィーア/ピアノ・ソナタ第1番
ヴェデルニコフ(アナトリー) ベートーヴェン
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