J-PARC

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 J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex:大強度陽子加速器施設)の公開日に見学に行く。J-PARCは、素粒子物理学等の最先端研究を行う、茨城県東海村にある実験施設。
 高速の99.95%まで陽子を加速する世界最強クラスのハイパーマシンの心臓部、メインリングを見学する。一周1570mのシンクロトロンで、陽子のビームがこの中で約30万周する。それを実現する巨大な電磁石群はゆるやかなカーブを描き、技術の粋を感じさせる。

Jparc02

 加速された陽子ビームは標的に衝突し、多数の素粒子を生成する。それを約300km先にある岐阜県飛騨市神岡町の地下1000mに位置するスーパーカミオカンデに発射し観測を行うT2K実験が行われている。ニュートリノ振動などの素粒子の振る舞いや、反物質の性質を調べ基礎科学に大きな貢献を成し遂げている。
 地下に鎮座した観測機器は圧巻の存在感を放っていた。

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 多くの企業等と共同で最先端実験を行っている物質・生命科学実験施設を見学する。放射状に伸びた陽子ビーム施設群は、カラフルに塗り分けられ多様な実験が進められる様子を示していた。
 日本の産業を支える施設であることが実感された。

 年に1回の公開日には、職員の方々も来場者への解説にあたられていた。実験を止めることは大きな影響があろうし、見学の準備をすることにも多大な労力が必要であったことと思う。しかし、それでもこの施設の役割や日本の技術水準の高さ、将来へのビジョンを示すためにも、公開日の役割は極めて大きいと感じる。生き生きと見学をしていた子どもたちの姿が印象的であった。

 J-PARC(大強度陽子加速器施設)

遠い空の向こうに

 1957年10月5日、ソ連の人工衛星スプートニクを夜空に見て触発された高校生が、ロケットの打ち上げに挑む映画「遠い空の向こうに」。炭坑夫の父親に反対されながらも、仲間と共にひたむきにロケットの制作に取り組む姿が清々しい。
 山火事がロケットのせいだと警察から濡衣を着せられ、数学を用いてロケットの軌跡を導きだし汚名を挽回する場面がことに良かった。生きた理数にふれる実体験が、その後の人生に与える影響の大きさを示していた。
 ウェスト・ヴァージニア州の小さな炭鉱町で繰り広げられる人間模様から、大きな感動を得た。高校生や教育に携わる人々に是非見てほしい、素晴しい青春映画。

遠い空の向こうに [DVD]
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イミテーション・ゲーム

 「イミテーション・ゲーム」は、第2次世界大戦でドイツ軍が用いたエニグマ暗号の解読に挑む人々との関わりを中心に、数学者アラン・チューリングの生涯を描いた映画。
 主役は、ベネディクト・カンバーバッチ。卓抜の演技でコミュニケーションに難のあるチューリングを表現する。
 脚本も緻密に構成され、伝記映画としても見事な出来映え。
 暗号解読という地味な作業をじっくりと、なおかつスリリングに映像化し、功績の大きさもしっかりと示されている点が素晴らしい。
 2014年アカデミー脚色賞受賞作品。

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 [DVD]
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人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの

 対話型ロボット、自動運転、医療診断など、人工知能のトピックスが随分とニュース等を賑わせている。囲碁や将棋で人間に勝つなど、フレームの決まった問題に対して、人工知能は人間の能力を超える力を発揮している。
 ネット上の情報を収集・分析するビッグ・データ解析の性能も恐るべき勢いで向上している。人工知能は今後、産業・社会に大きな影響を与えていくことは間違いない。発展する人工知能はどこに向かおうとしているのか。人類に脅威を与える存在になりうるのだろうか。
 本書は、人工知能研究の歴史と今を語り、今後の方向と可能性を記している。人工知能研究者によって著された本であり、特徴表現学習、ディープラーニングについては詳細に書かれている。
 人工知能研究の「知の格闘」の軌跡が興味深い。冬の時代を生き抜いた研究者の不屈の精神も感じられる。また、人工知能の方向についても冷静に分析され、見通しを持つことができる。丁寧な記述からは、人工知能について分かりやすく伝えたいという思いがひしひしと感じられる。
 人工知能の過去・現在とこれからの展望を示した良書。 

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)
松尾 豊

中島さち子TRIO REJOICE

 「私はいま,宇宙の最も原始的な姿,人間の最も素朴な強さを,より鮮明に捉えられないかと,ぼんやりと考えています.人間の持つ醍醐味は,その個性や自我,喜怒哀楽,その限界……から離れたところにも広々と存在すると思う.-その,言葉にならない魅力を,ゆっくりと知ってはいけないものでしょうか.」

 日本評論社の雑誌「数学セミナー」の別冊創刊号「ζの世界」は、1997年6月に刊行された。ζ(ゼータ)関数についての文章がまとめられた、極めて密度の濃い冊子である。
 執筆者として、数学者に交じって、フェリス女学院高校3年の中島さち子の文章が収められている。「ゼータの世界を眺めて」というタイトルで、数論のいくつかのトピックスをちりばめ、自らの抱負を語っている。知的好奇心に満ちた、きらきらと輝く少女の姿が眼にうかぶ、生き生きとした文である。内容については、高校生がここまでレベルの高い数学を理解し感銘を受けているのかと、圧巻の思いであった。まさしく、真の才媛である。

 中島さちこTRIOの音楽は、前向きな明るさに満ちている。それは、学問の深さとその豊かさを充分に知り、人生の素晴らしさを実感しているからこそ生まれる音楽なのであろう。

REJOICE
中島さち子TRIO

ゼータの世界
梅田 亨 若山 正人 黒川 信重 中島 さち子

8(エイト)

 謎のチェス・セット「モングラン・サービス」をめぐって、現代とフランス革命直後の世界を舞台に繰り広げられる冒険小説。
 18世紀末から19世紀初頭にかけての有名人が多く登場し、興味深い。ナポレオン、ルソーなどから、数学者オイラー、フーリエまで登場する。極上のエンターテイメント小説。

ホーキング

 車椅子の物理学者、ホーキング博士の若き日を描いたテレビ映画「ホーキング」。ベネディクト・カンバーバッチが、筋肉が弱まっていく病を宣告されたホーキングの姿を見事に演じる。
 物理学者ロジャー・ペンローズとの出会い、伴侶となるジェーンとの交流などをからめ、ホーキングの苦悩と研究への情熱を描く、学問への敬意を感じる作品。

ベネディクト・カンバーバッチ ホーキング [DVD]

人間の建設

 評論家、小林秀雄と数学者、岡潔の対談「人間の建設」。芸術や文学、数学と幅広い分野に話は及ぶ。知性と知性の出会いが、雑談に普遍的な精神のダイナミズムを与える。
 「素読教育の必要性」の中で、丸暗記の重要性、「すがた」に親しませることが必要と語っているが、この部分は現在の教育にとって重要な提言と感じられた。
 知的なことにふれる醍醐味を与えてくれる希有の対談。

人間の建設 (新潮文庫)
小林 秀雄 岡 潔

小学生からはじめるわくわくプログラミング

 マウスで命令を組み合わせるだけで、様々なプログラミングができる言語「スクラッチ」。子どもたちが自分の書いた絵を動かすこともできる。
 LOGOの流れをくむ言語であり、子どもたちの創造性を伸ばす可能性をもったソフトウェアである。
 本書は、スクラッチの基礎から、小学校の各教科への応用も含めて書かれ、スクラッチの楽しさと広がりを伝えてくれる。
 情報化社会を支えるプログラミングを、教育の場にいかにおろしていくか、数十年前からの課題であるが、本書はそのひとつの方向を具体的に示している。

Scratch 公式サイト

小学生からはじめるわくわくプログラミング
阿部 和広
4822285154

レオナルド・ダ・ヴィンチ もう一つの遺産

Davinci01 高崎市美術館の企画展「レオナルド・ダ・ヴィンチ もう一つの遺産」を見る。ダ・ヴィンチの手稿や素描、それに基づいて制作された模型が展示されていた。
 物理、医学、建築、数学、天文学、彫刻など、多くの分野に挑み、数々の発明を残した巨人の業績の一端を見ることができる。その旺盛な好奇心と膨大な研究の跡には、ただただ圧倒される。

Davinci02 戦車、自動車、ロケット、飛行機など、機械模型がたいへん興味深い。また、人体解剖の稠密なスケッチが、絵画に生かされている様が実感できた。
 万能の天才が生み出したアイディアやテクノロジーの数々は、発想や創造の素晴らしさを時を超えて伝えてくれる。

高崎市美術館企画展「レオナルド・ダ・ヴィンチ もう一つの遺産」

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