ロゴ、スクイーク

 授業におけるICT活用の研修を教員に対して行う。導入として、ヘレン・ケラーと電話の発明者ベルとの交流を話し、およそ偉大な発明は人に対する関わりから生まれることを提示する。”IT”が"ICT"になったことに象徴されるように、コミュニケーションの重要性は、電話によって肉声による即時性が実現されたときより増大している。特別支援教育では、とりわけ子どもたちの表現を広げる実践が重要であることを話す。

 授業において活用できる様々なサイトを紹介した後、これだけ多様に情報がある時代だからこそ、何のためにICTを活用するのかをしっかり見据えないといけないことを伝える。

 そして、1980年代、コンピュータが教育に応用されはじめた時代にさかのぼり、MITのパパート教授の”LOGO"の話をし、実際にLOGOを「ロゴ坊」で体験してもらう。戸塚滝登氏の富山での実践を紹介し、コンピュータに触れさせる前に、目的を見定めることを確認する。

 その後、LOGOの思想的流れをくむ「スクイーク」を紹介し、演習をする。自分たちの書いた絵が動く様に、教員も集中して取り組んでいた。この研修が思考力・表現力を高める実践に繋がることを願っている。

マインドストーム―子供、コンピューター、そして強力なアイデア
シーモア パパート Seymour Papert
4624400437

スクイークであそぼう【CD-ROM付】
Thoru Yamamoto 阿部 和広
4798104809

スクイークであそぼう

 自分で描いた絵を動かすなど、楽しみながらプログラミングが学べる「スクイーク」の書籍。
 ねずみが魔法使いの弟子になり、学んでいくという設定。
 オブジェクト指向プログラミング環境を、ビジュアルに体験できるソフトウェア「スクイーク」の入門として好適な一冊。

スクイークであそぼう【CD-ROM付】
Thoru Yamamoto 阿部 和広
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すくすくスクイーク

 スクイークの教材が収録されているサイト「すくすくスクイーク」。
 京都市の小学校で実際に使われているスクイークワークショップのためのテキストがPDFで掲載されている。
 「車の運転」と「おたまじゃくし」のテキストを見ながらやってみると、スクイークの感覚がだいぶ分かる。
 ワークショップの教材は、総合的な学習の時間や校内研修でも活用する価値がある。
 スクイークを通して、子どもの創造力や科学的思考力が養われることを切に願っている。

すくすくスクイーク

スクイーク

 コンピュータ上で、自分で書いた絵を動かしながら、楽しくプログラミングが学べる言語「スクイーク」。子どもの自由な発想を生かし、体験的に科学的な概念を学ぶことができる。
 ”LOGO”のシーモア・パパート教授の思想を継承する、学習用ソフトウェアで、思考力、表現力を高めるために、その実践が発展することを期待している。

ようこそ、スクイークランドへ!

愛される学校づくりフォーラム2012

Aigf12_01  「愛される学校づくりフォーラム2012」が、2月25日に、東京コンファレンスセンター・品川で行われる。そうそうたる授業名人や、多彩なパネラーの出演とあって、300名の定員はいっぱいとなり、参加を随分断ったとのこと。コンファレンスセンターの広い会議室は熱心な参加者でびっしりと埋まった。

 午前中は、「愛される学校づくり研究会」会長の玉置崇氏をコーディネーターとするパネルディスカッション。学校のお荷物と言われる学校ホームーページや学校評価に対し、10名のパネラーから実践紹介や方策について熱く討論された。打ち合わせをせず、玉置氏が次々とポイントをとらえてパネラーに話題をふり、鋭い突っ込みなどがあり、2時間のパネルディスカッションがあっという間であった。

 午後は、「授業名人が語る!斬る!ICT活用」として、若手教師の実践をビデオで視聴し、授業名人がコメントをする形で行われた。

Aigf12_03  算数では、小学校3年の「三角形」において、ICTと復唱法を併用した授業について、志水廣氏がコメント。前時に児童がたけひごで三角形を分けた体験を踏まえ、電子黒板で三角形を児童の意見をもとに移動して分類を進める活用法が示された。ソフトが工夫されており、三角形が自由に回転や反転ができ、分類のために三角形を移動した後にも影が残る点が評価された。

Aigf12_04  社会では、小学校3年でコンビニの物や人に着目させる授業であった。生徒がノリにノッている熱い授業であったが、ICTの活用では、コンビニ内部を自由に見せるソフトを使ったことが、逆に視点を動かしてしまうことに課題が残った。有田和正氏からは、「これだけは追求したいというものを鮮明に持つ」ことの重要さが指摘された。

 国語では、小学校6年生を対象に、谷川俊太郎の「うとてとこ」を教材とした授業が紹介された。ICTは鵜などの映像資料の提示や、基礎事項の確認に用いられた。
 野口芳宏氏からは、ICTで鵜を提示した時に、大きさ、鵜の性質、鵜飼いなどについて話をしたかという指摘があった。児童に豊かなイメージを与えるのであれば、写真でもできるという言葉には、ごもっともと思った。ICTで提示したことによって分からせた気に教師がなってしまう点は、充分に注意しなければならないと実感した。

 最後に、「授業名人と語るこれからの授業づくりとICT活用」と題し、堀田龍也氏をコーディネータとしてパネルディスカッションが行われた。授業名人3氏による含蓄のある話に、たいへん引き込まれた。授業に対する飽くなき探究があって初めてICTも生きてくることを実感させられた。
 授業名人の「じっと見て吟味」「たくさん見せてはダメ」「出し惜しみをする」という言葉、堀田氏の「ICTの万能感で見えなくするものがある」というまとめには、授業におけるICT活用の留意点が見事に集約されている。

愛される学校づくりフォーラム2012

愛される学校づくり研究会

時代を変えた科学者の名言

 東京理科大学学長、藤嶋昭氏編著による、「時代を変えた科学者の名言」。
 108人の科学者の名言が、歴史順に記されている。それぞれの言葉は、時代を経て生きてきたものであり、たいへん味わいがある。
 各科学者の略歴もあり、科学史をざっと概観するのにも良い。紙面にスペースがあり、たいへん読みやすい。
 挿入されている藤嶋学長のエッセイからは、学長のお人柄と教育に対する熱意が伝わってくる。
 中高生が科学史を学ぶ端緒としても好適な1冊。

時代を変えた科学者の名言
藤嶋 昭
4487805317

天地明察

 江戸時代初期、暦の作成に精魂を傾けた渋川春海の生き様を描いた冲方丁の小説「天地明察」。江戸城で囲碁を指南する渋川春海は、神社の絵馬に数学の問題を掲げた「算額」から、和算に惹かれていく。
 関孝和、保科正之など魅力的な人物を配しながら、江戸初期の天文学、和算の動きをからめて和暦の成立をダイナミックに描く。時代小説であるが、ライトノベルのようにスラスラ読める。爽やかな歴史エンターテイメント。
 第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞受賞作品。

天地明察
冲方 丁

繊維の数学

 一本の繊維が集まることで、布になったり、服になったりする。では、繊維は何次元なのだろうか?
 「繊維の数学」は、繊維の歴史から始まり、数学との関わりが様々な観点から述べられた書。繊維は、単に服の原料ではなく、極細電線、カーボン・ナノチューブ、DNA解析など、様々な分野に応用される対象である。また、繊維に関する考察は、数学に関してもフラクタル幾何学やコンピュータ・アルゴリズム、グラフ理論、ひも理論など、多くの分野に発展する素地を持っている。
 繊維が宇宙や生命をひもとく鍵になっていることを示した、興味尽きない本。

繊維の数学―未来科学の扉を開く
井上 清博 相宅 省吾
4484022060

魔性の難問 ~リーマン予想・天才たちの闘い~

 NHKスペシャル「魔性の難問」は、ゼータ関数の自明でない零点に関わる「リーマン予想」を、素数の謎を全面に出して映像化した番組。自然数の列で、素数が現れると階段が1段上がることで表現するなど、工夫をこらしている。暗号化や物理法則との関連などにも触れられていたが、もう少しつっこんだ説明が欲しかった。しかし、数学の解説番組は少ないだけに、制作に踏み切った姿勢は評価したい。小学生の子どもたちは興味を持って見ていた。今後も、良質な数学の番組が放送されることを期待したい。

NHKスペシャル 魔性の難問

実社会で活用される数学

 今年も高校10年目の教員に対して、銀行員の方から「実社会で活用される数学」の講義をしていただく。講義の1年前にはリーマン・ブラザーズの破綻があり、金融機関のリスク管理が一層求められている現状を分かりやすくお話いただいた。高度な数学手法を用いて、リスクの度合いを測る様子を具体的に示していただいた。
 理数系人材の必要性を訴え、数学科教員の使命感を高めていただいたことには、たいへん感謝している。

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